杖立温泉をもっと深掘り!約100℃の源泉、その熱の背景を追いかけて(熊本県小国町)

湯め活びより杖立温泉考察編のアイキャッチ画像

湯けむりの町で出会った一湯が、温泉から上がったあとも妙に頭から離れませんでした。
では、この湯の面白さはどこから生まれているのでしょう。
約100℃の高温源泉、分析書に並ぶ成分、町を包む湯けむり――気になったことを一つずつ資料で追いかけてみました。
ここからは、実際に入った一つの温泉を入口に、地下の熱から温泉街の風景まで、私なりに考えてみます。

杖立温泉で興味深かったこと
  • 約100℃の湯はどこから来る?
    沸点に迫るほどの高温泉。その熱源と地下の通り道が気になりました。
  • 高温泉なのに穏やかな泉質?
    高い源泉温度と、分析書に並ぶ成分やpH。その組み合わせに注目しました。
  • 湯口に残る析出物の正体は?
    メタケイ酸の数値を眺めながら、配管や湯口に残る析出物へ興味が広がりました。
  • 蒸気まで使いこなす温泉文化
    入浴だけでなく、むし湯や調理にも使われる蒸気。その利用方法を追いました。
  • 狭い谷に生まれた立体的な町
    川沿いの旅館と入り組んだ背戸屋。独特な町並みが生まれた背景を調べました。
目次

杖立温泉ってどんなところ? | 4コマ漫画で体験してみる

ゆめにゃん

猫は入れないからフィクションにゃ…

杖立温泉の魅力を詰め込んだ4コマ漫画。湯けむりやむし湯、蒸し調理、プリンを紹介するゆめにゃん。

杖立温泉レビューと注目ポイント考察

この記事は、筆者が実際に温泉を訪れた際に感じた「なぜ?」をきっかけに、温泉分析書や公開資料などを調べ、自分なりに考察した内容です。資料から確認できる事実と筆者個人の考察を分けて記載するよう努めていますが、専門家による学術的な見解や結論を示すものではありません。直接的な裏付けを確認できていない仮説や想像については、その旨を明記しています。一人の温泉好きが、分析書や資料を眺めながら考えた「温泉の自由研究」としてお楽しみください。

98℃の湯はどこから来る?断層を追いかける

杖立温泉でまず興味を持ったのが、あちこちから立ち上る湯けむりでした。杖立温泉観光協会では、温水はおよそ98℃で、高温の源泉が自噴し、町に26か所の源泉が点在すると紹介されています。ここまで熱い湯が自然に上がってくるのなら、「地下に割れ目があって、そこが熱水の通り道になっているのでは?」。私は最初、阿蘇カルデラ北側という位置から、阿蘇の火山活動に伴う断層を想像しました。

そこで地質資料を探すと、予想とは少し違う方向から断層が現れました。産業技術総合研究所 地質調査総合センター「熊本県岳の湯および大分県大岳付近地質調査報告」では、岳の湯付近を通る「岳の湯断層」を確認し、その西方延長を杖立温泉付近まで追跡しています。1960年代の調査では、この断層と周辺の地熱現象との関係も考察されていました。つまり、「断層が熱水の上昇に関係しているのでは」という発想そのものには、以前から地質学的な着眼点があったようです。

ただし、現在ある26か所の源泉すべてが一本の断層を通って上昇している、とまで分かったわけではありません。私は最初、地下に一本の“温泉道路”があるような姿を想像していましたが、実際には断層、割れ目、帯水層などが組み合わさった、もっと複雑な地下世界なのかもしれません。それでも、川沿いで噴き上がる98℃の湯の下に大きな地質構造を想像できるだけで、湯けむりの見え方が少し変わってきました。

メタケイ酸138mg/L、その先の析出物を追う

杖立温泉の成分を眺めていて、私が次に興味深かったのがメタケイ酸でした。つえたて温泉ひぜんや「温泉」では、杖立温泉についてメタケイ酸138mg/Lと案内されています。かなりの高温泉で、この数字を見ると、「地下では溶けていたケイ素成分が、湯が冷える途中で白い析出物になって出てくるのでは?」と想像したくなりました。湯口や配管に付く白っぽいものを見ると、つい「これは珪華では?」と言いたくなってしまいます。

調べてみると、その発想につながる一般的な仕組みはありました。熊本大学「肥後の温泉科学」では、ケイ素は高温の水ほど溶け込みやすく、高温泉が冷却される過程でシリカが過飽和となり析出する場合があることが紹介されています。また、群馬県による全国の温泉文化調査では、杖立の98℃の掘削自噴泉について、ケーシングにスケールがたまるため年4回清掃している例も報告されています。

ここで一つだけ注意したいのは、杖立で見かける析出物をすべて「シリカスケール」と決めることはできない点です。実際の析出物には複数の成分が関わる可能性があり、成分分析をしなければ正体までは分かりません。それでも、「98℃の湯」「メタケイ酸」「実際に生じるスケール」を並べると、地中では溶けていたものが地上で姿を変えていく様子を想像できます。次に訪れたら、湯口だけでなく配管までじっと見てしまいそうです。

98℃なのに酸性ではない?杖立の湯を追う

98℃近い湯が噴き上がり、町中が湯けむりに包まれている。そんな風景を見ると、私は最初、硫黄臭の強い酸性泉のような「火山のすぐそばの湯」を勝手に想像しました。ところが実際に杖立の湯に入ると、そのイメージとはかなり違います。「こんなに熱い源泉なのに、なぜ強い酸性ではないのだろう」。そこから泉質の成り立ちが気になりました。

資料をたどると、この特徴はかなり以前から研究対象になっていました。産業技術総合研究所 地質調査総合センター「別府-九重-阿蘇-熊本-雲仙地域の熱水系」では、1975年の杖立温泉の地球化学研究を引用し、杖立を泉温99℃の「中性Na-Cl型」と整理しています。一方、現在のひぜんやでは、利用している湯を単純温泉、低張性・弱アルカリ性・高温泉、温度44~98℃と案内しています。対象となる源泉や分析時期が異なるため、同じ数値として比較するものではありませんが、「高温=強酸性」とは限らないことはよく分かります。

私は最初、「高温高圧の地下で長く熟成したから穏やかな湯になったのでは」などと想像しました。しかし、泉質を“熟成”という一言で説明できる根拠は見つかりませんでした。むしろ面白いのは、同じ高温の地熱地帯でも、熱源、水の由来、通過する岩石、火山ガスとの関わりなどによって温泉の化学組成が変わることです。98℃という派手な数字の横に、比較的穏やかな湯の性格が並んでいる。この組み合わせこそ、杖立の地下をもっと知りたくなる入口になりました。

98℃の源泉を支える「湯の裏側」を覗いてみる

98℃の源泉を見ていると、「これをそのまま旅館へ送るわけにはいかないだろうな」と、今度は温泉そのものより設備が気になりました。私は最初、熱水と蒸気が一緒に噴き上がり、それをセパレーターのような装置で分け、お湯は浴槽へ、蒸気はむし湯や蒸し場へ送る――そんな壮大な地下インフラを想像していました。

ところが、群馬県「日本の温泉文化とその担い手」調査報告を読むと、杖立で確認されている仕組みはもっと具体的でした。調査対象となった98℃の掘削自噴泉では、ケーシングにたまるスケールを年4回清掃。配湯前の貯湯槽には、内部の圧力が高くなりすぎないよう蒸気を抜く鉄管が設けられ、その鉄管にも定期的な交換が必要だと報告されています。また、杖立では自家源泉が多く、源泉管理を地元の小規模事業者が担っている例も紹介されています。

つまり、私が想像した「町全体を制御する巨大セパレーター網」とは少し違いました。しかし、98℃の湯を日常的に使うため、圧力を逃がし、スケールを掃除し、配管を維持する技術が積み重ねられていることが見えてきました。一方、町では高温の蒸気そのものも「蒸し場」として生活に利用されています。ASOおぐに観光協会「杖立温泉の地獄蒸し」によれば、現在も温泉蒸気で食材を蒸す場所が一般に開放されています。湯船へ届く前にも、杖立の温泉はずいぶん忙しく働いているようです。

川のすぐそばから98℃、地下はどうなっている?

杖立川沿いを歩いていて不思議だったのが、冷たい川が流れるすぐ横から湯けむりが立ち上っている光景でした。「川底のほんの少し下には、もう90℃を超える熱水層があるのでは?」。そんな地下断面を勝手に想像してしまいました。もしそうなら、深さに対して温度が急激に変化する、とんでもない地温勾配ではないか――とまで妄想は膨らみました。

実際、群馬県の温泉文化調査報告には、杖立川岸の源泉から蒸気が噴き出す写真が掲載され、「源泉は杖立川沿いに多数湧出している」と記録されています。杖立温泉観光協会も、町に26か所の源泉が点在し、温水がおよそ98℃であると案内しています。川と高温泉が非常に近い場所に共存している、という現地で感じた不思議そのものは資料からも確認できました。

ただ、「川底から数cmで90℃」というところまで示す地下温度データは見つかりませんでした。地温勾配を論じるには、源泉の深度や地下の温度分布なども必要です。私の頭の中では、川底直下が巨大な温泉鍋のようになっていましたが、そこはまだ想像の世界。それでも、狭い谷の一本の川を挟んで、冷たい河川水と98℃級の熱水がこれほど近接しているのは十分面白いところです。今度は湯けむりを見るたび、「この真下の断面図が見たい」と思ってしまいそうです。

雨水は地下何kmへ?杖立の熱源を追いかける

98℃もの温泉がどこで熱せられているのかを考えているうちに、私は「雨や雪が地下深くまで潜り込み、数千mの深部で地熱によって温められ、再び上がってくるのかな」と想像しました。いわゆる深部循環水のイメージです。そして阿蘇に近いのだから、熱源は阿蘇山のマグマなのだろう――最初はそんな単純な地図を頭に描いていました。

ところが、古い地熱研究を読むと別の名前が出てきました。産業技術総合研究所 地質調査総合センター「別府-九重-阿蘇-熊本-雲仙地域の熱水系」では、1986年当時のモデルとして、杖立温泉と天ヶ瀬温泉の高温の中性Na-Cl型熱水について、近くにある万年・亀石火山を形成した地下のマグマ、またはそれが固結した高温火成岩体からの熱伝導によって熱水系が生じている可能性を考察しています。阿蘇から直接熱が届く、という私の最初の想像よりずっと複雑でした。

もちろん、これは1986年に提示された熱水系モデルであり、現在の個々の源泉について水が地下何kmまで潜ったかを示すものではありません。温度だけからは循環深度もわかりません。それでも面白いのは、杖立の98℃を追いかけたら、阿蘇だけではなく万年山や亀石山、九重周辺まで地図を広げることになったことです。一杯の温泉水をたどっているはずなのに、いつの間にか九州中部の火山と地下熱の話になってしまう。これぞ「カルデラの沼」なのかもしれません。

川と斜面に挟まれた温泉街はなぜ立体的なのか

杖立温泉を歩いていると、川沿いの建物が横だけでなく上へ上へと伸びているように見えます。斜面に貼り付く建物、川側へ張り出したように見える部屋、階段の先にまた別の通路。「平地が少ないから、梁を川側へ伸ばしたキャンチレバー建築が発達したのでは?」と、私は勝手に建築構造まで想像していました。

地形を調べてみると、平地が少ないという出発点は確かにありそうです。1958年に杖立川のダム予定地点を調査した地質調査所「大山川谷山・杖立川杖立発電用ダム地点地質概査報告」では、杖立付近について「急峻な傾斜の山腹」が「狭い河床」を隔てて向かい合う地形として記載されています。また、群馬県の温泉文化調査でも、杖立の温泉街は川沿いの狭隘な土地に発達してきたことが紹介されています。

ただし、外から見える張り出し部分をすべて「片持ち梁構造」と呼べるわけではありません。個々の建物の構造図までは確認できないため、そこは建築的な断定を避けたほうがよさそうです。それでも、狭い谷底に道路、旅館、家屋、路地を収めようとすれば、町が立体的になっていくのは実感できます。私は「キャンチレバーを探す」つもりで調べ始めましたが、むしろ面白くなったのは、地形そのものが温泉街の形を決めていったように見えることでした。

背戸屋は避難路?迷路が生まれた理由を追う

杖立温泉でぜひ歩きたくなるのが「背戸屋」です。建物の間をすり抜ける細い路地、突然現れる階段、頭上を横切る建物や通路。しかも杖立川のすぐそばです。「これだけ立体的なのだから、水害のときに高い場所へ移動するための避難路として発達したのでは?」。現地の景色を見ながら、私はそんな歴史まで想像していました。

ところが調べてみると、背戸屋について公的資料が教えてくれたのは別の姿でした。小国町観光公式「背戸屋めぐり」では、背戸屋を「家々の勝手口を結ぶ地元の人たちの生活道路」と説明しています。また、群馬県「日本の温泉文化とその担い手」調査報告では、杖立の背戸屋は「高度経済成長期に川沿いの狭隘な土地に温泉街が発達していく中で作られていった」と紹介されています。少なくとも、今回確認した資料から「水害避難のために造られた路地」とする根拠は見つかりませんでした。

予想は外れましたが、こちらのほうが私は好きかもしれません。最初から都市計画で設計された迷路ではなく、限られた土地で暮らし、旅館を営み、隣の家へ行き来するうちに生活道路が重なっていった。その結果として、現在の「迷い込みたくなる路地」が生まれたと考えると、背戸屋そのものが温泉街の暮らしの記録に見えてきます。観光名所になる前から、ここは誰かの日常の道だったということでした。

首だけ外へ出す箱むし風呂、この形はなぜ?

泉屋の箱むし風呂を見たとき、真っ先に気になったのは入浴法より、その姿でした。木箱の中へ体を入れ、首から上だけが外に出る。「なぜ全部蒸気の中へ入らないのだろう?」。98℃近い源泉を持つ温泉地だけに、私は「高温の蒸気を直接吸い続けないために、呼吸する頭部だけ外へ出す構造なのかな」と考えました。見た目はかなりシュールですが、妙に合理的にも見えます。

純和風旅館 泉屋の公式案内を確認すると、現在も泉屋には座って入る「箱むし風呂」を含む複数の蒸し風呂があり、箱むし風呂が杖立の蒸気利用文化として現役で使われていることは確認できます。箱の内部だけに温泉蒸気を満たし、頭部を外へ出すという構造そのものは、体を蒸気に包みながら顔の周囲を外気側に置ける、非常に単純明快な形です。

一方、「気道を守るためにこの形が考案された」という由来を直接示す歴史資料までは見つけられませんでした。そこは私の予想として一歩手前で止めておきます。それでも、高温の温泉蒸気を食材には蒸し場として、入浴にはむし湯や箱むしとして使ってきた杖立を見ていると、ここでは「湯」だけでなく「蒸気」も立派な温泉資源なのだと分かります。次に箱へ入るときは、首から下だけ別世界になっているあの形を、以前よりじっくり観察してしまいそうです。

館内を歩いて県境越え、ひぜんやの「両国橋」

ひぜんやを知ったとき、「ホテルの中に熊本県と大分県の県境がある」という話にはさすがに反応しました。最初は、実際の県境付近に建っているホテルが、記念撮影用に館内へ線を引いているくらいなのかなと思っていました。温泉では地下の断層ばかり追いかけていますが、今度は人間が地上に引いた境界線です。これはこれで見逃せません。

ところが、つえたて温泉ひぜんや「館内案内」を見ると、渡り廊下「両国橋」そのものに熊本県と大分県の県境が通っており、館内を歩いて両県を行き来できると案内されています。さらにひぜんや「よくあるご質問」によれば、施設は熊本県阿蘇郡と大分県日田市の二つの住所を持ち、両県へ税を納め、消防訓練も双方の消防署と連携しているとのこと。単なる床の演出ではなく、ホテルの運営そのものにも県境が入り込んでいました。

地下では断層を探し、湯口ではスケールを眺め、路地では背戸屋に迷い込み、最後は旅館の廊下で県境をまたぐ。杖立温泉は、どうも境界というものに縁がある場所です。もちろん地質の境界と行政境界はまったく別物ですが、一歩またぐだけで「熊本県→大分県」というのは純粋に面白い。温泉を調べていたはずなのに、最後は住所と税金まで気になってしまいました。杖立、なかなかこちらを帰してくれません。

ゆめにゃん

湯に浸かり、蒸気を追い、その先に眠る地下の世界へ思いを馳せる。
次の休みは、杖立温泉で「大地の熱の物語」をたどる旅に出かけませんか?

約100℃の高温泉

源泉温度が約98~100℃に達する高温泉は、杖立を象徴する特徴のひとつ。温泉街のあちこちから立ち上る豊かな湯けむりが、山あいの町ならではの印象的な風景をつくります。

蒸気を楽しむむし湯

豊富な温泉蒸気を利用した「むし湯」は、杖立ならではの温泉文化。宿ごとに異なる形式があり、共同のむし場では野菜や卵などを蒸して楽しめるのも、この町ならではの魅力です。

路地裏を歩く背戸屋

家々の勝手口を結ぶ細い生活道路「背戸屋」は、昭和の風情を残す杖立温泉街の名物。階段や建物の間を縫うように歩けば、大通りとは違った町の日常や歴史に触れられます。

春を彩る鯉のぼり祭り

春には杖立川の上空を数千匹もの鯉のぼりが泳ぐ「鯉のぼり祭り」が開催されます。川沿いに連なる温泉街と色鮮やかな鯉のぼりが重なる光景は、杖立を代表する春の風物詩です。

湯けむりの温泉街散策

杖立川に沿って旅館や商店が並び、路地や橋、階段が複雑につながる温泉街。湯けむりを眺めながら歩くだけでも、昔ながらの温泉地らしい景観と独特の立体感を楽しめます。

温泉マニアあるある! – 杖立温泉考察編

ゆめにゃん

マニアの人はこうなっちゃう…かも!?

98℃を見て温度計が欲しくなる

源泉温度が約98~100℃と知った瞬間、普通の人は「熱っ!」と驚きます。ところがマニアは「ほぼ100℃か……」と妙に静かになり、湯口と分析書を交互に凝視。友達が「入れる温度じゃないじゃん」と言っても、「そこからどう浴槽まで持ってくるかが面白いんだよ」と興味津々。入浴前から完全に観察モードです。

湯けむりを見ると配管を探す

温泉街に立ち上る湯けむりを見れば、普通なら「温泉情緒あるねぇ」で終わるところ。マニアは「あの蒸気、どこから出てるんだ?」と視線が地面へ向かいます。配管やバルブらしきものを見つけると急に歩く速度が落ち、友達から「景色見ようよ」と言われても聞こえません。湯けむりの先に設備を探すのがマニアです。

むし場でも地下を想像する

むし場で卵や野菜を蒸していると、普通なら「おいしそう!」と完成を待ちます。ところがマニアは立ち上る蒸気を見ながら、「この熱も地下から上がってきたんだよな……」と突然壮大な話を始めます。友達が「今は卵の話をしよう」と戻しても、頭の中はすでに地下深くへ。卵一個から地熱へ飛べるのがマニアです。

無色透明ほど分析書を読み込む

見た目は無色透明で穏やかなお湯。それでもマニアは「見た目だけじゃ分からないからね」と分析書の前から動きません。Na⁺、Cl⁻、pH、メタケイ酸……と数字を追い、「なるほどねぇ」と一人で納得。友達が「何がなるほどなの?」と聞くと、「いや、まだ考えてる」と回答。分かってから読むのではなく、読むから疑問が増えます。

98℃なのに湯船では普通に入れることに感動

源泉は約100℃。ところが浴槽では、もちろん入浴できる温度になっています。普通の人ならそのまま気持ちよく浸かりますが、マニアは「この約100℃を、ここまで持ってきてるんだよな……」と湯口を凝視。加水や冷却など施設ごとの湯使いに思いを巡らせ、「湯守さんってすごいよね」としみじみ。熱さより管理に感動します。

背戸屋でも温泉設備を見つけたがる

細い路地や階段が入り組む「背戸屋」は、歩いているだけでも楽しい杖立名物。ところがマニアは古い建物だけでなく、壁際を走る管や湯けむりにも目を奪われます。「この先にも源泉あるのかな」とキョロキョロしているうちに、いつの間にか友達がいません。迷子になったのではありません。本人としては“調査中”なのです。

県境をまたいでなぜかドヤ顔

ひぜんやの館内には熊本県と大分県の県境があります。普通なら記念写真を撮るところ、マニアは片足ずつ両県へ置き、「今、熊本で温泉のこと考えながら大分にもいる」と謎のドヤ顔。友達から「だから何なんだよ」と言われても満足そうです。温泉とは直接関係ない境界線までイベント化できれば、旅の楽しみは無限に増えます。

オーバーフローを見て湯量を推理する

浴槽からお湯があふれていると、マニアは条件反射で排水方向を確認します。「おお、流れてる流れてる」と嬉しそうですが、見ただけで湧出量や湯使いまで分かるわけではありません。それでも湯口の投入量、浴槽の大きさ、あふれ方を眺めながら勝手に観察開始。友達はもう先に体を洗っています。

析出物を見つけると急に近づく

湯口や配管に白っぽい付着物を見つけると、それまで静かだったマニアが突然反応。「ちょっと待って、ここ見て!」と嬉しそうに近づきます。友達にはただの付着物でも、本人には温泉成分や温度変化を想像する最高の観察ポイント。ただし見た目だけでは成分までは分かりません。それが逆にマニアの想像力を刺激します。

「シリカなのかな…」で物思いにふける

分析書のメタケイ酸を思い出しながら、白い析出物の前で立ち止まるマニア。「やっぱりこの白い析出は……“シリカ”なのかな……」とぼそっとつぶやき、一人で物思いにふけります。もちろん外観だけで成分を断定することはできませんが、まわりからは“湯めぐりシリカ”とあだ名されてしまうのです。

管理人

管理人いじりですね…
そう呼ばれるのも悪くない!

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この記事を書いた人

温泉巡り歴15年。
トロトロのお湯と硫黄の香りが大好物。
なのに他の泉質にもすぐハマってしまう。
休日は山奥の秘湯へ直行。
そして、猫が好き。

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