西那須野温泉で出会ったのは、想像以上にとろりとした湯ざわりと、どこか不思議な香りを持つ源泉でした。
分析書を眺めるうちに、地下深くから届く湯の成り立ちや、近隣の源泉との違いが気になり始めました。
さらに調べてみると、水を求めた開拓の歴史や、温泉と牧場の意外なつながりも見えてきました。
この土地で大切に受け継がれてきた湯には、どんな物語が隠れているのでしょうか。
現地で感じた小さな疑問を手がかりに、その理由を一つずつたどってみました。
- pH8.4なのに強いヌルヌル感
源泉の数字を見て意外に感じた、独特のとろみ。その湯ざわりの理由が気になりました。 - 湯口に漂う不思議な香りの正体
ほんのり油を思わせる香りと、こげ茶色の湯の花。分析書には何と書かれているのでしょうか。 - 近くの源泉で異なる泉質の不思議
大鷹の湯、千本松温泉、乃木温泉など。同じ地域の源泉を比べると、どんな違いが見えてくるのでしょうか。 - 水を求めた開拓史と豊かな温泉
かつて水の確保に苦労した那須野が原。いま湧き出す温泉との対比に心を引かれました。 - 源泉バンズと牧場の意外なつながり
温泉を使ったハンバーガーのバンズにびっくり。牧場の歴史にも興味が広がりました。

西那須野温泉ってどんなところ? | 4コマ漫画で体験してみる
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西那須野温泉レビューと注目ポイント考察
深さで泉質が変わる?地下1200mから届く大鷹源泉
古代ソマチッド温泉「大鷹の湯」さんの駐車場の奥には、源泉を汲み上げる小屋があり、ポンプの音が響いていました。那須と聞くと火山のそばの硫黄泉を思い浮かべますが、ここの湯は褐色がかっていて、硫黄の香りもほんのわずか。「これは火山の湯というより、深い地層の中で長い時間をかけて育った湯なのかもしれない」と想像しながら浸かっていました。
大鷹の湯さんの源泉紹介ページを読むと、大鷹源泉は地下700~1200mの地層から汲み上げているとのこと。さらに、地下600mより浅い層の源泉は弱アルカリ性の単純泉で、大鷹源泉はそれとは異なるナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉だと説明されています。温泉の歴史を紹介する資料には、1983年に温泉の掘削に成功したという記述もあり、那須塩原の歴史ある温泉地と比べると新しい温泉のようです。
同じ地域でも、掘る深さによって泉質が変わる。そんな地下の構造を具体的に説明していることに、興味をそそられました。浅い層と深い層では、地下水が通ってきた地層や、そこで触れた岩石も違うのでしょうか。見えない地下の重なりを思い浮かべると、湯船の中で感じたあのトロトロ感にも、地下深くを旅してきたお湯ならではの物語が隠れているように思えてきました。
pH8.4でも強烈なヌルヌル感、その正体をイオン組成で追う
湯船に入ってすぐ、腕をなでると指が止まらずに滑っていきました。トロトロというかヌルヌルというか、温泉好きなら思わずニヤけてしまう浴感です。事前にpHを確認していなければ、「これだけヌルヌルなら、pHは9を超えるアルカリ性」と感じてしまいそうでした。
分析書で確認した数値は、pHは8.4。環境省の鉱泉分析法指針では、pH7.5以上8.5未満を「弱アルカリ性」、8.5以上を「アルカリ性」に分類しています。大鷹の湯さんは、アルカリ性まであとわずか。数字から想像した以上の浴感に、少し意外な気持ちになりました。
そこで陽イオンの欄を見直すと、ナトリウムイオンが297.3mg/kgで、ミリバル%は98%を超えていました。カルシウムやマグネシウムはごくわずかです。陰イオンでは、炭酸水素イオンと炭酸イオンが合わせて3割以上。岐阜県温泉協会の解説によると、重曹などのアルカリ成分が皮脂と反応し、石けんに似た成分が生じることが、滑らかな浴感につながると考えられているそうです。
なるほど、ヌルヌル感を考えるにはpHだけでなく、成分の組み合わせにも目を向ける必要がありそうです。ナトリウムが陽イオンの大部分を占め、炭酸水素イオンや炭酸イオンも含まれること。そして、カルシウムやマグネシウムが少ないこと。この組成が、予想以上の湯ざわりに関係しているのかもしれません。湯上がりにはサラサラとした感触もあり、数字だけでは分からない温泉の面白さを、改めて感じました。
| 注目する項目 | 大鷹源泉の数値・特徴 | 湯ざわりを考えるヒント |
|---|---|---|
| pH | 8.4(弱アルカリ性) | アルカリ性に近いものの、pHだけでは強いヌルヌル感を説明しきれない |
| ナトリウムイオン | 297.3mg/kg | 陽イオンの大部分を占める、ナトリウム主体の温泉 |
| ナトリウムの割合 | 98%超(ミリバル%) | カルシウムやマグネシウムの割合が非常に小さい |
| 炭酸水素イオン | 237.5mg/kg | 重曹系の成分で、滑らかな浴感を考える手がかりになる |
| 炭酸イオン | 15.8mg/kg | アルカリ性の性質に関わる成分として注目したい |
| カルシウム・マグネシウム | いずれも少量 | 石けん成分と反応するイオンが少ない点も興味深い |
※数値は手元の大鷹源泉の温泉分析書に基づく。ナトリウムの98%超は陽イオン中のミリバル%であり、温泉成分全体の割合ではない。
湯口に漂う油の香り、分析書の「特異臭」とは?
湯口に顔を近づけると、ふわっと機械油のような香りがしました。硫黄のタマゴ臭とは違う、「アブラ臭」と呼ばれるような香りです。湯の中には、こげ茶色の小さな湯の花も舞っていました。新潟や秋田でアブラ臭の湯に入った記憶がよみがえり、「栃木の内陸で、なぜこの香りがするんだろう?」と妄想が膨らみました。
館内掲示の分析書(2022年)の知覚試験欄には、「微硫化水素臭」と「弱い特異臭」とあります。成分表でも硫化水素イオンが0.2mg/kgと、わずかに検出されていました。環境省の鉱泉分析法指針を見ると、臭いの種類には硫化水素臭や石油臭なども挙げられています。気になって口コミを調べると、鉱物油のような香りや、こげ茶色の湯の花、ヌルヌル感を印象に挙げる声も見られました。
アブラ臭の温泉といえば、油田やガス田のある地域が思い浮かびます。実際に、新潟地域の温泉水と付随ガスを調べた研究では、温泉に伴うガスと周辺の地層との関係が調べられていました。大鷹源泉の香りにも、地下深くの地層や古い有機物が何か関係しているのだろうか。そう想像すると、湯口の香りまで地層の記録のように思えてきます。分析書では「特異臭」という短い言葉ですが、実際に嗅いでみると、その数文字の奥行きの深さに気づかされました。
メタけい酸160.8mg、温泉の条件をいくつ満たしているか数えてみた
分析書の後半、非解離成分の欄で目が止まりました。メタけい酸が160.8mg、メタほう酸が30.7mg。陰イオンの欄には、ふっ化物イオン9.9mgという数字もあります。あの厚みのある湯ざわりを思い出しながら、「この湯は、泉温が低かったとしても温泉と呼べるくらい成分がそろっていそうだ」と考えました。
確かめるために、環境省が示す温泉の定義を調べて改めて整理してみました。温泉法では、源泉温度が25℃以上か、定められた19種類の物質のうち、いずれかが基準量を満たせば「温泉」に該当します。メタけい酸は50mg/kg以上、メタほう酸は5mg/kg以上、ふっ化物イオンは2mg/kg以上、溶存物質の総量は1000mg/kg以上が基準です。
大鷹源泉の数字と並べると、メタけい酸は基準の約3倍、メタほう酸は約6倍、ふっ化物イオンは約5倍。溶存物質も1.061g/kgで、1000mgのラインをわずかに超えていました。源泉温度58.3℃だけで温泉の条件を満たしているのに、成分の面でも4つの基準をクリアしていることになります。
| 判定項目 | 温泉法の基準 | 大鷹源泉 | 基準との比較 |
|---|---|---|---|
| 源泉温度 | 25℃以上 | 58.3℃ | 適合 |
| メタけい酸 | 50mg/kg | 160.8mg/kg | 約3.2倍 |
| メタほう酸 | 5mg/kg | 30.7mg/kg | 約6.1倍 |
| ふっ化物イオン | 2mg/kg | 9.9mg/kg | 約5.0倍 |
| 溶存物質(ガス性を除く) | 1,000mg/kg | 1,061mg/kg | 約1.06倍 |
予想どおりではありましたが、数えてみると思った以上に条件を「重ね着」している湯でした。特にメタけい酸は、湯ざわりのまろやかさを語るときによく話題になる成分です。ナトリウムや重曹系の成分に加え、メタけい酸も豊富なことが、あの「トロトロ」と表現したくなる湯ざわりに関係しているのだろうか。分析書は、湯の印象を言葉にするための手がかりの宝庫だと改めて感じました。
内湯の掲示が語る「五ツ星源泉」の条件と、湯の鮮度へのこだわり
大浴場の湯口からは湯が惜しげもなく注がれ、浴槽の縁からどんどんオーバーフローしていました。湯温は体感で41℃前後。源泉は58℃を超えるのに、加水しないでどうやってこの温度にしているのだろう? そう考えながら壁の掲示を読むと、宿の湯づかいに対する考え方が書かれていました。
掲示には、源泉は湧き出してから時間がたつにつれて本来の力を失い、加水によってもその良さが損なわれるという、宿の考え方が記されています。さらに「五ツ星源泉」の条件として、自家源泉を持つこと、すべての浴槽に源泉100%をかけ流すこと、一年を通じて適温(40℃前後)であること、循環・加水をしないこと、毎日清掃し、源泉に精通した管理人がいることが挙げられていました。
帰宅後に大鷹の湯さんの温泉案内を読むと、一人あたり毎分1L以上の湯量を確保することも条件として紹介され、源泉を常に40℃前後で提供していると説明されています。館内の「温泉の成分等掲示届(浴用)」でも、加水・加温・循環ろ過・入浴剤・消毒はいずれも「なし」となっていました。
源泉の温度をどう調整しているのか、具体的な仕組みまでは分かりませんでした。それでも、掲示と資料を重ねると、「湯をできるだけ新しいうちに届けたい」という宿のこだわりが伝わってきました。印象的だったのは、五ツ星の条件に毎日の清掃や管理人という「人」の要素まで含まれていること。かけ流しは設備だけでなく、日々の手入れによって支えられている。そう知ってから湯口を眺めると、注がれる湯の勢いまで違って見えました。
湯量と泉温の数字を年代順に並べると、源泉の「履歴書」が見えてきた
館内の掲示板には「毎分350L・60.4℃・pH8.3」と書かれていました。一方、掲示されている2022年の分析書は「毎分216.7L・58.3℃・pH8.4」。どちらも大鷹源泉の数字です。「測った時期が違うのかな」と思い、ほかの資料に残る数字も集めてみることにしました。
古い資料をたどると、2010年に紹介された情報では、泉温59.2℃、pH8.24、湯量は毎分450L。2012年の分析記録では59.1℃、pH8.4、毎分300Lです。そして2022年の分析書では58.3℃、pH8.4、毎分216.7Lとなっています。もっとも、資料が公開された年と実際に測定された年は、必ずしも一致するわけではなさそうです。
東京都保健医療局の温泉に関する解説によると、2007年の温泉法改正に伴い、温泉成分を10年以内ごとに再分析することが義務づけられました。2012年と2022年の分析書も、そうした定期的な確認の記録なのでしょう。
数字を並べて眺めると、源泉にも「履歴書」があるように感じます。動力で汲み上げる源泉では、ポンプの運転条件や測定時の状況によっても湯量は変わるはずです。数字の違いから何かを断定するより、それぞれの時期に残された記録として味わうのが楽しいと思いました。分析書を見比べると、同じ源泉の別の表情が見えてきます。次の再分析では、どんな数字が並ぶのでしょうか。また新しいページが加わると思うと、楽しみになりました。
数百m先にもう一つの源泉、杜の湯のモール泉はなぜ単純温泉なのか
大鷹の湯さんの帰りに地図を眺めていると、すぐ近くに那須マロニエホテルさんがあり、自家源泉「杜の湯」を持っていることを知りました。住所はどちらも那須塩原市井口です。これだけ近い源泉なら、同じような褐色のトロトロ湯なのではないかな、と思いました。
那須マロニエホテルさんの温泉紹介によると、杜の湯は全国でも数少ないモール泉で、淡黄土色のお湯なのだそうです。泉質は単純温泉(低張性・弱アルカリ性・高温泉)で、浴槽温度は41~41.5℃。那須塩原市観光局の施設紹介を読むと、ホテルは2018年11月に開業した比較的新しい施設でした。
モール泉についても整理しておきます。十勝川温泉観光協会の解説によると、植物が長い年月をかけて堆積した地層に由来する有機物を含む温泉で、名前はドイツ語の「Moor」に由来するそうです。モール泉は温泉法上の泉質名ではないため、単純温泉とも両立します。なるほど、同じ温泉に2つの呼び名があるわけです。
気になったのは、すぐ近くなのに大鷹源泉とは泉質名が違うこと。ここで思い出したのが、先に紹介した大鷹の湯さんの説明です。地下600mより浅い層には、弱アルカリ性の単純泉があるという話でした。杜の湯の掘削深度までは確認できませんでしたが、汲み上げている地層や深さが違えば、これほど個性が分かれるのでしょうか。数百m離れた2つの湯を入り比べる「井口はしご湯」が、次の旅の目標になりました。
| 源泉名/施設名 | 大鷹源泉/大鷹の湯 | 杜の湯/那須マロニエホテル |
|---|---|---|
| 泉質名 | Na-塩化物・炭酸水素塩泉 | 単純温泉 |
| 液性 | 弱アルカリ性 | 弱アルカリ性 |
| 湯の色 | 褐色がかった湯(体験) | 淡黄土色(公式説明) |
| モール泉という案内 | 特になし | あり |
| 掘削深度 | 地下700~1200m | 未確認 |
千本松源泉は「単純温泉」、でも中身は重曹泉そっくりだった
西那須野温泉の源泉を調べるうちに、千本松牧場の中にある千本松温泉さんの分析書の写真を見かけました。源泉名の欄には「西那須野温泉(源泉名:千本松源泉)」とあります。牧場の温泉も同じ温泉地の仲間だったことに、まず驚きました。泉質名は「アルカリ性単純温泉」。単純温泉と聞くと、クセの少ない穏やかな湯を想像します。
ところが成分表を読み進めると、印象が変わりました。陽イオンはナトリウムが98%以上、陰イオンは炭酸水素イオン310.3mg/kgと炭酸イオン52.9mg/kgで、合わせて約8割を占めています。pHは9.0、源泉温度は64℃。成分総計は0.7167g/kgでした。
環境省の鉱泉分析法指針によると、泉温25℃以上で、ガス性成分を除く溶存物質が1000mg/kg未満のものは、基本的に「単純温泉」に分類されます。1000mg/kg以上の塩類泉では、陰イオンの主成分などによって「炭酸水素塩泉」といった名前がつきます。つまり千本松源泉は、重曹泉に似た成分バランスを持ちながら、成分量の関係で「単純温泉」と呼ばれているわけです。千本松牧場の公式サイトでも、植物由来のモール成分を含むアルカリ性の温泉として紹介されていました。
泉質名だけを見ていたら、この個性には気づけなかったと思います。「単純」という言葉は、成分の種類が少ないという意味ではありません。湯の性格は、成分の組み合わせまで見てはじめてわかるのだと実感しました。大鷹源泉と比べると塩化物イオンが少なく、pHは高め。入り比べたとき、ヌルヌル感の質がどう違うのか確かめるのが楽しみになりました。
| 源泉名 | 大鷹源泉 | 千本松源泉 |
|---|---|---|
| 泉質名 | Na-塩化物・炭酸水素塩泉 | アルカリ性単純温泉 |
| pH | 8.4 | 9.0 |
| 源泉温度 | 58.3℃ | 64℃ |
| 炭酸水素イオン | 237.5mg/kg | 310.3mg/kg |
| 炭酸イオン | 15.8mg/kg | 52.9mg/kg |
| 塩化物イオン | 252.1mg/kg | 21.9mg/kg |
| 成分総計 | 約1.062g/kg | 0.7167g/kg |
※大鷹源泉は2022年、千本松源泉は2020年の分析書に基づく比較。成分量だけで実際の湯ざわりを決めるものではない。
乃木温泉は大鷹源泉と「同じ泉質名」、それでも無色透明の理由を妄想
西那須野駅の近くを通るたびに、「乃木温泉ホテル」さんの看板が気になっていました。大鷹の湯さんに入ったあと、ウェブ上で乃木温泉の分析書の掲示を見つけ、読んでみて思わず声が出ました。源泉名は「西那須野温泉(源泉名:乃木温泉)」。泉質名はナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉で、大鷹源泉と同じ名前でした。
数字を並べると、似ているのは名前だけではありません。成分総計は乃木温泉が1.060g/kg、大鷹源泉が1.062g/kgと、ほぼ同じ。陽イオンはどちらもナトリウムが97%以上を占めています。乃木温泉は泉温49.3℃、湧出量は毎分141L、pH8.9のアルカリ性。炭酸水素イオンや炭酸イオンも大鷹源泉より多く含まれています。そして2014年の分析書の知覚試験欄には、「ほとんど無色澄明、無味無臭」と記されていました。
乃木温泉ホテルさんの公式サイトでも、泉質名やpH8.9、無色透明・無味無臭という特徴が紹介されています。さらに、源泉の掘削深度は960mとのこと。大鷹源泉と同じように、地下深くから汲み上げられている温泉なのですね。
成分の骨格はよく似ているのに、大鷹源泉では褐色がかった色合いと油のような香りを感じ、乃木温泉の分析書には無色無臭とあります。同じ那須野が原の地下でも、通ってきた地層や含まれる微量な成分の違いが、色や香りに表れているのだろうか。まだ乃木温泉には入ったことがないので、次は二つの湯を同じ日にはしごして、ヌルヌル感と香りの違いを確かめてみたいと思いました。
| 源泉名 | 大鷹源泉 | 乃木温泉 |
|---|---|---|
| 分析年 | 2022年 | 2014年 |
| 泉質名 | Na-塩化物・炭酸水素塩泉 | Na-塩化物・炭酸水素塩泉 |
| pH | 8.4 | 8.9 |
| 源泉温度 | 58.3℃ | 49.3℃ |
| 湧出量 | 216.7L/分 | 141L/分 |
| 成分総計 | 1.062g/kg | 1.060g/kg |
| ナトリウムイオン | 297.3mg/kg | 305.7mg/kg |
| 塩化物イオン | 252.1mg/kg | 211.1mg/kg |
| 炭酸水素イオン | 237.5mg/kg | 284.4mg/kg |
| 炭酸イオン | 15.8mg/kg | 50.2mg/kg |
| メタけい酸 | 160.8mg/kg | 94.7mg/kg |
| 色・香り | 褐色がかった湯、油のような香り(筆者の体験) | ほとんど無色澄明、無味無臭(分析書) |
※大鷹源泉は2022年、乃木温泉は2014年の分析値を使用。乃木温泉の数値は当時の分析書を引用した記録とも照合。色・香りは現地体験と分析書の記載を比較しており、観察条件は異なる。
川の水が消える扇状地の下に、なぜ豊かな温泉があるのか
大鷹の湯さんへ向かう途中、橋の下の川に水がほとんど流れていないことに気づきました。石がごろごろした広い河原だけが続いています。「地表は水が乏しそうなのに、地下からは毎分200L以上の湯が汲み上げられている。この土地の地下はいったいどうなっているのだろう」と、湯船の中でも考えていました。
調べてみると、那須野ヶ原土地改良区連合の解説に、この土地の特徴が紹介されていました。那須野ヶ原は約400km²の広大な複合扇状地で、那珂川・箒川・蛇尾川・熊川などが運んだ砂礫によって形成されています。水はけがよく、特に蛇尾川や熊川では、川の水が地下にしみ込む「伏流」が見られるそうです。かつては農業用水や生活用水の確保にも苦労した土地でした。
なるほど、あの川でも水が地下を流れていたのだろうか。扇状地は、地表に水がとどまりにくい場所があるのですね。そして、大鷹源泉が汲み上げているのは地下700~1200mの地層の湯です。地表近くを流れる地下水と、深い地層から届く温泉水。その間には、どんな地層が重なり、水はどのようにつながっているのでしょうか。
乾いた河原の景色と、地下深くから届く豊かな湯。一見すると正反対の水の姿が、同じ土地に重なっているのが不思議です。そう考えると、何気なく渡った橋の景色まで違って見えてきました。次に訪れるときは、川の様子にも目を向けながら、見えない地下の水の流れを想像してみたいと思いました。
水を求めて疏水を引いた原野に、いまは温泉が湧いている
湯上がりに、大鷹の湯さんから車ですぐの那須野が原博物館に立ち寄りました。展示の中心にあるのは、この土地の開拓と水の歴史です。「水の乏しい扇状地」を知ったばかりだったので、「明治の人たちは、この原野でどうやって水を確保したのだろう」と興味がわきました。
栃木県の那須野が原開拓の解説によると、那須野が原は那珂川と箒川に挟まれた、水の乏しい広大な原野でした。明治政府の殖産興業政策のもとで本格的な開拓が始まり、1885年(明治18年)には、日本三大疏水の一つに数えられる那須疏水が開かれました。農林水産省が紹介する開拓の歴史では、全長16.3kmの水路がわずか5か月で完成し、人々が涙を流して喜んだと伝えられています。博物館でも、国の重要文化財となった那須疏水旧取水施設の模型などを通じて、当時の苦労を知ることができます。
水を引くために大変な苦労を重ねた原野で、いまは地下1000m前後から温泉が汲み上げられ、湯船からあふれています。この対比に、なんとも言えない感慨を覚えました。明治の開拓から長い年月が過ぎ、同じ土地で温泉を楽しめるようになったのですね。開拓の歴史を知ってから湯船を思い返すと、惜しげもなくあふれていくオーバーフローの一筋一筋が、とてもぜいたくなものに感じられます。温泉の背景にある土地の物語を知ると、一湯の重みが変わるのだと実感しました。
牧場の湯と源泉バンズ、西那須野温泉は「食」ともつながっていた
大鷹の湯さんの館内掲示板で、思わず二度見した貼り紙があります。併設のバーガーショップ「BOBBY」さんのハンバーガーは、大鷹の湯の源泉で作ったバンズを使っているそうです。温泉で炊いたご飯や温泉卵はよく見かけますが、源泉バンズはこれまでに見た記憶がありません。「重曹系の湯だから、パン生地に何か良い影響があるのかな」と想像しました。
温泉と食のつながりをたどっていくと、千本松牧場に行き着きました。千本松牧場の歴史を紹介する公式サイトによると、明治の政治家・松方正義が1893年に那須開墾社の土地を取得して西洋式の農場を開き、アカマツが多く自生していたことから「千本松」と名付けたそうです。その牧場には、現在、源泉かけ流しの千本松温泉があります。さらに2025年のグランドオープンに関する発表を読むと、天然温泉水を使った「温泉じゃぶじゃぶ池」まで新設されていました。
明治の開拓地に誕生した牧場が、いまでは観光客がジンギスカンやソフトクリームとともに温泉を楽しめる場所になり、子どもたちが温泉水に親しめる池まで加わったわけです。予想していた以上に、西那須野温泉は土地の暮らしや食と深く結びついていました。湯上がりに源泉バンズのバーガーを頬張り、牧場のソフトクリームで締める。そんな「温泉×食」のはしごも、この温泉地ならではの楽しみ方だと思いました。
| スポット | 温泉とのつながり | 食の楽しみ |
|---|---|---|
| 大鷹の湯 | 地下深くからの自家源泉かけ流し | 源泉を使ったバンズのハンバーガー |
| 千本松牧場 | 敷地内の千本松温泉 | ジンギスカン・ソフトクリーム |
| 千本松テラス | 温泉水を使った「温泉じゃぶじゃぶ池」 | 牧場内のカフェや乳製品も楽しめる |
「古代ソマチッド温泉」という呼び名から、地下1200mの地層を想像する
大鷹の湯さんの看板やパンフレットには、「古代ソマチッド温泉」という呼び名が添えられています。飲泉所の掲示にも、古代ソマチッドという言葉がありました。分析書をいくら読んでも出てこない言葉なので、「ソマチッドとは何だろう? 古代とつくのは、地層の古さと関係があるのかな」と気になっていました。
大鷹の湯さんの源泉紹介ページを読むと、ソマチッド(ソマチット)は、動物や植物などの生命体に存在するとされる微小生命体として紹介されていました。古い化石の中でも発見されたという説明がありますが、ソマチッドは現在の生物学で存在が確立された生命体ではなく、温泉分析書の分析項目にもありません。調べてみると、フランス出身の研究者ガストン・ネサンが提唱した考え方にさかのぼるようです。
同じページで特に興味を引かれたのは、地下の地層についての説明でした。施設によると、掘削時の地層サンプルには海底堆積物や樹木の埋没層などが含まれ、地下1200mまで複雑な地層が重なっているそうです。井戸の内部をカメラで調べたところ、各層から温泉が湧き出す様子も見られたといいます。また、宿では約20年前から医師とともに源泉と微小生命体の関係を調べているものの、その関係の証明には至っていないと説明されています。
「古代」という言葉をきっかけに調べ始めたら、思いがけず地下深くの地層の話にたどり着きました。海底の堆積物や樹木が埋もれた地層の話を読むと、入浴中に気になった油のような香りや、こげ茶色の湯の花、褐色がかった湯の色にも、地層の歴史が何か関係しているのだろうかと想像が膨らみます。分析書の数字だけでなく、源泉の地下に広がる世界へ思いを巡らせるのも、温泉を訪れる楽しみのひとつだと感じました。



大地から湧く湯に浸かり、開拓の歴史に思いを馳せ、牧場の恵みを味わう。
次の休みは、西那須野温泉で「大地が育んだ時間」に浸る旅に出かけませんか?
- 豊かな源泉かけ流しの湯
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大鷹の湯では、地下深くから汲み上げた源泉をかけ流しで楽しめます。湯口から注がれるお湯と浴槽からのオーバーフローは、源泉の豊かさを感じさせる光景。湯量だけでなく、湯温や日々の管理にも目を向けたくなる温泉です。
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大鷹の湯の泉質は、ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩温泉。pH8.4という数値に加え、炭酸水素イオンやメタけい酸などの成分にも注目したいところです。温泉分析書を読み解くことで、独特の湯ざわりを考える楽しみが広がります。
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温泉マニアあるある! – 西那須野温泉考察編



マニアの人はこうなっちゃう…かも!?
- pH8.4を見て首をかしげる
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大鷹の湯に浸かった瞬間、「うわっ、ヌルヌル! トロトロ!」と大興奮するマニア。ところが分析書でpH8.4を確認すると、「あれ? もっと高いと思ったのに」と首をかしげます。友達が「気持ちよければいいじゃん」と言っても、「いや、この数字と湯ざわりのギャップがたまらないんだよ」と嬉しそう。疑問が増えるほど、温泉への愛情も深まります。
- オーバーフローを見て動けなくなる
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浴槽の縁から絶えず流れ出すお湯を見つけると、マニアは思わず足を止めます。「見てよ、このオーバーフロー。 ずっと眺めていられる」と感動しますが、友達は「お湯が流れてるだけじゃん」と不思議そう。「いやいや、源泉かけ流しの醍醐味でしょ」と力説し、湯船に浸かる前からすっかり満足。入浴時間より、お湯を眺めている時間のほうが長くなりそうです。
- メタけい酸の数字でドヤ顔する
-
分析書に書かれた「メタけい酸160.8mg/kg」を見つけると、マニアの目がキラリ。「ふふふ……なかなか立派な数字だね」とドヤ顔を始めます。友達が「それ、多いと何がすごいの?」と聞くと、「温泉法の基準は50mg/kgなんだよ」と即答。「で、何が起こるの?」と重ねて聞かれ、「……まずは数字のロマンを楽しもう」と話をそらすのでした。
- 近隣の分析書を集め始める
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大鷹の湯の分析書を眺めていたマニアが、突然「千本松温泉はpH9.0なんだよな……乃木温泉は8.9か」とつぶやき始めます。友達が「いま入ってる温泉だけで十分じゃない?」と言っても、「近くにあるのに泉質が違うって面白くない?」と興奮気味。温泉旅行のはずが、いつの間にか比較研究会になっています。
- 湯の花を見つけて宝探しを始める
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湯口の周辺に湯の花を見つけると、マニアは「おぉ、ここにもある」と大喜び。友達が「そんな小さなものまで見てるの?」と驚くと、「湯色も香りも、場所によって表情が違うんだよ」と嬉しそうに説明します。浴槽の縁や湯口をじっくり観察し、まるで宝探しの真っ最中。もちろん、見つけた宝物はそっと眺めるだけです。
- 地下1200mを想像して黙り込む
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「この源泉、地下1200mあたりまで掘っているんだって」と聞いた途端、マニアは急に静かになります。友達が「どうしたの?」と尋ねると、「いや……このお湯が地下のどんな地層を通ってきたのか考えてた」と遠い目。「温泉に入りながら地底探検してるの?」と笑われても、「見えないからこそロマンがあるんだよ」と真剣です。頭の中では、すでに地下探検が始まっています。
- 川の水が消えると興奮する
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那須野が原を車で走っていると、石が広がる川床が目に入ります。マニアは「おっ、これが伏流水の世界か!」と突然テンションアップ。友達が「川に水が少ないだけじゃん」と言うと、「この扇状地の地下には、どんな水の世界が広がっているんだろうね」と妄想を開始。さっきまで温泉の話をしていたのに、いつの間にか地形の話に。友達は「今日は地理の授業もあるの?」と苦笑いです。
- 開拓の歴史を知って湯船に感動する
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那須野が原博物館で、明治時代に水を求めて那須疏水を引いた歴史を知ったマニア。温泉に戻ると、浴槽からあふれるお湯を見つめて「昔の人は水を引くのに苦労したんだよなぁ……」としみじみ。友達が「急にどうしたの?」と聞くと、「このオーバーフローが、なんだかぜいたくに見えてきてさ」と一言。ついに温泉で歴史ドラマまで楽しみ始めます。
- 源泉グルメの話が止まらない
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湯上がりにハンバーガーを頬張るマニア。友達が「バンズに源泉を使うのって面白いね」と言うと、「ほんとそれ! 温泉を使ったあんぱん、せんべい、湯豆腐、温泉粥、プリン……あと何があったかなぁ?」と、全国の温泉グルメが止まりません。まわりからは”湯めぐりグルメ王”とあだ名されてしまうのです。



管理人いじりですね…
そう呼ばれるのも悪くない!







