湯の澤鉱泉を深掘りレビュー! 二枚の温泉分析書からたどる冷鉱泉の奥深さ(茨城県常陸大宮市)

湯め活びより湯の澤鉱泉考察編アイキャッチ画像

茨城の静かな里山に佇む、江戸時代から続く湯の澤鉱泉。
冷たい鉱泉を温めて迎えてくれる湯宿には、長い年月をかけて受け継がれてきた物語があります。
湯に浸かり、二枚の分析書を見比べるうちに、泉質や地質、湯治場としての歴史に次々と疑問が浮かびました。
この土地で育まれてきた湯の個性には、どんな理由があるのでしょうか。
現地で感じた興味を手がかりに、資料をたどりながら、その魅力をもう少し深く探してみました。

湯の澤鉱泉で興味深かったこと
  • 泉質名がない冷鉱泉
    18.4℃の冷たい源泉なのに、温泉として認められている。その要因が気になりました。
  • 二枚の分析書に刻まれた9年の違い
    泉温も湧き方も成分も違う。二枚の数字を並べると、いくつもの疑問が浮かびました。
  • 里山の地層と重曹型の湯の関係
    ナトリウムが多く、カルシウムが少ない。その特徴は、足元の地質と関係するのでしょうか。
  • 江戸時代から続く鉱泉の物語
    櫓からの転落と夢のお告げ。少し不思議な開湯伝説の先に、どんな歴史があるのでしょう。
  • 奥久慈の味覚と大地のつながり
    なぜ湯宿の名物がこんにゃくなのか。湯上がりに見つけた疑問から、土地の歴史をたどりました。
目次

湯の澤鉱泉ってどんなところ? | 4コマ漫画で体験してみる

ゆめにゃん

猫は入れないからフィクションにゃ…

湯の澤鉱泉の魅力を詰め込んだ4コマ漫画。冷鉱泉や奥久慈の味覚、周辺の自然を紹介。

湯の澤鉱泉レビューと注目ポイント考察

この記事は、筆者が実際に温泉を訪れた際に感じた「なぜ?」をきっかけに、温泉分析書や公開資料などを調べ、自分なりに考察した内容です。資料から確認できる事実と筆者個人の考察を分けて記載するよう努めていますが、専門家による学術的な見解や結論を示すものではありません。直接的な裏付けを確認できていない仮説や想像については、その旨を明記しています。一人の温泉好きが、分析書や資料を眺めながら考えた「温泉の自由研究」としてお楽しみください。

「泉質名なし」の分析書に見た温泉と療養泉の境界線

8月上旬。湯の澤鉱泉さんで脱衣所の分析書を読み進めて、最後の判定欄で手が止まりました。温泉法の別表にある炭酸水素ナトリウムの項目で温泉に適合する、ただし療養泉には該当しないので泉質名は無い、と書かれていました。

湯船に浸かりながら考えました。成分総計が0.496g/kgなので、濃さの話なのだろうと予想はつきます。ただ、温泉の世界には25℃以上あれば、成分が控えめでも「単純温泉」になることがあります。この湯はそのどちらにも当たらない、ということなのかなと考えました。

帰宅後、環境省の鉱泉分析法指針で療養泉の定義を確かめました。療養泉の条件は、泉温が25℃以上であること、あるいは溶存物質(ガス性のものを除く)が1kg中1,000mg以上、もしくは遊離二酸化炭素や総鉄イオンなど、特定の6成分のいずれかが規定量に達すること。成分が控えめでも、泉温が25℃以上なら単純温泉に分類される場合があります。

湯の澤鉱泉さんの溶存物質は0.490g/kg、つまり490mg。基準の半分ほどです。泉温は18.4℃で、25℃にも届いていません。特定成分も規定量に足りず、予想どおり「温泉だけれど療養泉ではない」という位置にあることがわかりました。

ここで面白いのは、「温泉」と「療養泉」が二重構造になっている点です。温泉法上の温泉は、25℃以上という温度条件のほか、19項目の物質のうち一つでも基準を満たせば該当します。その中から、さらに療養泉の条件を満たしたものに泉質名が付く仕組みです。

泉質名がないことは、温泉として劣るという意味ではありません。どの成分で温泉の扉をくぐったのかを分析書から読み解けるのが、むしろ「泉質名なし」の湯を読む楽しさだと感じました。宿の公式サイトにある「重炭酸ソーダ泉」という呼び名は、まさにその扉の名前を表しているように思えました。

重曹に換算すると約396mg、温泉法の基準340mgとの距離

判定欄の「炭酸水素ナトリウムの項により温泉に適合」という一文が、上がってからも気になっていました。分析書の成分表には、ナトリウムイオンと炭酸水素イオンが別々に書かれています。炭酸水素ナトリウム、いわゆる重曹の量そのものは載っていません。

では、この二つを組み合わせると重曹何mg分になるのか。基準ぎりぎりなのか、それとも余裕があるのか。休憩しながら、自分なりに計算してみることにしました。

温泉法の別表では、重炭酸ソーダ(炭酸水素ナトリウム)が1kg中340mg以上あれば温泉に該当すると定められています。分析書のナトリウムイオンは108.4mg、炭酸水素イオンは307.1mgです。

ナトリウムの原子量は約23、重曹の式量は約84です。ナトリウムをすべて重曹に換算すると、108.4mg÷23×84で約396mgになります。炭酸水素イオンのほうは、重曹に換算すると400mgを超える計算です。少ないほうのナトリウムで頭打ちになるので、目安は約396mgとしました。

基準の340mgに対して、およそ1.16倍。しっかり基準を上回っています。帰宅後、環境省の鉱泉分析法指針を確認すると、二つのイオンをそれぞれ換算し、少ないほうを採用するという計算方法まで一致していました。

しかも、分析書に記載されたほかの成分には、温泉法の基準に達するものが見当たりません。この湯は、ほぼ重曹一本で温泉の資格を得ている、と言えそうです。

もちろん、実際の判定は分析機関が細かな計算をして行うもので、私の計算は素人の概算です。それでも、分析書のイオン量から重曹の量を逆算してみると、「重炭酸ソーダ泉」という公式の呼び名が数字の上でもすっと腑に落ちました。基準との距離感がわかると、湯船の中で感じたやわらかな肌ざわりにも、なんだか親しみが湧いてきました。

Na⁺ 108.4mg/kg約396mg/kg
HCO₃⁻ 307.1mg/kg約423mg/kg
採用する値約396mg/kg
温泉法の基準340mg/kg

ナトリウム92%・炭酸水素92%、重曹型の成分構成と浴感

岩風呂に肩まで沈めたとき、腕をなでると、ほんのりとした、やわらかい抵抗がありました。強烈なヌルヌルではないものの、湯が肌に寄り添ってくるような感触です。成分総計が0.5g/kg弱と控えめなのに、この感触はどこから来るのだろうと気になりました。

成分の量よりも、その「顔ぶれ」が関係しているのかなと考えました。いろいろな成分が少しずつ混ざっているより、重曹の性格がはっきりした湯なら、成分が控えめでも特徴を感じやすいのではないでしょうか。

改めて分析書のミリバル%(当量%。イオンの量を電荷に基づいて比べた割合)の欄を見直すと、予想を超える数字が並んでいました。陽イオンではナトリウムイオンが92.37%、陰イオンでは炭酸水素イオンが91.62%を占めています。カルシウムやマグネシウムはごくわずかで、塩化物イオンや硫酸イオンも脇役です。

湯の澤鉱泉さんの公式サイトでも、ぬるりとした肌触りと、湯上がりのツルツル感が紹介されています。私が岩風呂で感じたやわらかな抵抗も、どこか通じるものがありました。

濃さではなく、成分構成の明瞭さに個性がある湯。今回の湯は、そう表現するのがしっくりきました。重曹を主体とする成分構成が、あの肌ざわりにも関係しているのだろうか。個人的な印象ですが、湯上がりは腕の表面がさらりと軽く感じられました。数字と体感が結びついたようで、なんだかうれしくなりました。

二枚の分析書を並べて見えた、泉温15.5℃と18.4℃の「測られ方」

帰宅してから、湯の澤鉱泉さんの以前の分析書(平成21年)の写真をネット上で見つけました。脱衣所で読んだ平成30年のものと並べると、まず調査の条件が違うことに気づきました。平成21年は5月28日の調査で、泉温15.5℃、気温21.0℃、湧出量24L/分、自然湧出。平成30年は11月1日の調査で、泉温18.4℃、気温18.1℃、利用量13L/分、掘削・動力揚湯。採水場所も、平成30年は「本館裏の蛇口」と書かれていました。

調査年泉温気温泉温-気温
2009年5月15.5℃21.0℃−5.5℃
2018年11月18.4℃18.1℃+0.3℃

面白いのは、気温との関係です。5月の調査では、泉温が気温より5℃以上低い。外の暖かさとは対照的な、冷たい地下水を思わせる数字です。ところが11月の調査では、泉温と気温がほぼ同じでした。蛇口に届くまでの配管で、外の空気の影響を受けたのかもしれない、と想像が膨らみました。

環境省の鉱泉分析法指針を読むと、測定方法について少しわかってきました。泉温は湧出地点か、それに最も近い場所で測定するのが原則です。また、配管経路や揚湯時間によって泉温が変動する場合もあるとされています。湧出する全量を測るのが難しい場合は、測定場所とともに「利用量」として記載することも定められています。

つまり平成30年の分析書は、本館裏の蛇口で採水した記録であり、13L/分も「利用量」として示された数字です。湧出量24L/分と利用量13L/分では測定条件が同じとは限らず、単純に比べて「減った」とは言えません。泉温の差にも、採水場所や設備、測定条件の違いが関係しているのかもしれません。

どちらの数字も、同じ鉱泉を異なる時期に切り取った記録。そう考えると、15.5℃という数字には、里山の地中をめぐってきた水の素顔が、18.4℃という数字には、宿の暮らしの中でくみ上げられる鉱泉の姿が表れているように思えてきました。自然湧出から動力揚湯へ切り替わった経緯は、まだわかりません。二枚の分析書には、数字だけでは読み切れない物語がありそうだと思いました。

9年で成分はどう動いた?ナトリウム140mgから108.4mgへ

二枚の成分表を一行ずつ見比べていくと、いちばん目立つのはナトリウムイオンでした。平成21年は140mg、平成30年は108.4mgで、およそ2割少なくなっています。反対に、カルシウムやマグネシウム、カリウムは増えていました。

成分(1kg中)平成21年平成30年
ナトリウムイオン140mg(97.60mval%)108.4mg(92.37mval%)
カルシウムイオン1.8mg3.9mg
マグネシウムイオン0.3mg0.8mg
カリウムイオン1.0mg5.0mg
炭酸水素イオン330mg(88.40mval%)307.1mg(91.62mval%)
硫酸イオン19mg15.0mg
塩化物イオン8.0mg4.8mg
溶存物質(ガス性を除く)0.54g0.490g

湯船の中で「重曹一本の湯」と感じた、その成分構成。平成21年は陽イオンの97.6%がナトリウムで、さらに際立っていました。ところが、炭酸水素イオンの割合は平成30年のほうが高くなっています。前の項目で見たように、自然湧出と動力揚湯という記載の違いもあるので、湯の通り道や、くみ上げる深さが変わった影響もあるのかな、と考えました。

重曹の量も計算し直してみました。環境省の鉱泉分析法指針には、ナトリウムイオンと炭酸水素イオンの当量(ミリバル)を比べ、少ないほうに炭酸水素ナトリウムの式量84.01を掛ける計算方法が示されています。これに当てはめると、平成21年は炭酸水素イオン5.41mvalから約454mg、平成30年はナトリウムイオン4.72mvalから約396mgです。どちらも温泉法の基準340mgを超えていて、重曹の項目で温泉に該当するという点は変わりません。

二度の分析で数値が異なる理由は、採水条件の違いも含めて気になるところです。それでも、ナトリウムの割合が少し下がり、炭酸水素イオンの割合が上がっても、重曹型という成分構成は共通しています。二枚を並べてみると、数字の違いよりも、むしろ変わらないこの湯の個性が印象に残りました。

pH8.2と7.9、炭酸イオンが映す「温めた湯」の表情

岩風呂の湯は、光の加減でほんのり白っぽく見え、湯口のまわりの岩は黒っぽく色づいているように見えました。ところが二枚の分析書の知覚的試験(色や匂いを人の感覚で確かめる項目)は、どちらも無色透明です。さらに見比べると、pHは平成21年が8.2、平成30年が7.9。炭酸イオンも、平成21年は2.2mg/kg、平成30年は0.1mg/kg未満でした。

pHと炭酸イオンには、何か関係がありそうです。調べてみると、国土交通省の水質調査方法の解説には、水中の炭酸の存在形態は主にpHによって変わり、温度にも影響されるとありました。また、湯を温めて二酸化炭素が抜けると、pHが上がる場合もあります。分析書の冷たい源泉と、加温された浴槽の湯とでは、炭酸の姿が少し違っているのではないか。そこに湯の白っぽさの秘密があるのでは、と妄想が膨らみました。

環境省の鉱泉分析法指針を読むと、二枚とも弱アルカリ性(pH7.5以上8.5未満)の範囲に入っています。また、低濃度のアルカリ性の温泉などは、現地と試験室でpHが変化しやすい場合があると書かれていました。実際、二枚とも試験室のpH(8.13と7.78)は、現地より少し低い値です。

さらに、宿のご主人は観光経済新聞のインタビューで、白っぽい湯だと語っています。私が岩風呂で見た色合いとも重なりました。

分析書が示すのは、採取された冷たい鉱泉の姿。私が見たのは、温められ、浴槽に注がれた湯の姿です。加温や空気との接触によって、何かが変化しているのだろうか。湯口の黒い色づきも気になります。結局、その正体まではわかりませんでしたが、無色透明と記された分析書の向こうに、温められた湯のもう一つの表情があるように感じました。

変わらないメタケイ酸と少ないカルシウム、棚倉堆積盆の地質から妄想する

二枚の分析書でナトリウムが2割ほど動いた一方、ほとんど変わらなかった成分があります。メタケイ酸です。平成21年が42mg/kg、平成30年が44.2mg/kg。温泉法でメタケイ酸が温泉の条件になる50mg/kgに、どちらもあと少しで届く数字です。そしてもう一つ、カルシウムは1.8mg/kgと3.9mg/kgで、ナトリウムに比べればごくわずかでした。

メタケイ酸は岩石と地下水の接触によって供給される成分の一つです。カルシウムが少なく、ナトリウムが多いのは、地下で岩石との成分のやり取りが起きたからではないか。湯の正体を、足元の地層から考えてみたくなりました。

まず地質を調べました。茨城大学による山方地域の地質研究によると、この地域には中新世の地層が広がり、かつて河川や湖、海だった時代の堆積物が重なっています。さらに産業技術総合研究所の研究では、近隣の大子町周辺に広がる棚倉堆積盆が、棚倉断層帯の運動によって形成されたことも紹介されていました。

次に、重曹型の地下水のでき方です。温泉研究家やませみさんの炭酸水素塩泉の成因についての解説によると、地下水に炭酸カルシウムが溶け込み、さらに粘土鉱物やゼオライト(沸石)と接触すると、カルシウムとナトリウムが入れ替わる「陽イオン交換」が起こる場合があります。この反応を通じて、ナトリウムと炭酸水素イオンが主体の地下水ができるというものでした。

堆積層と断層帯、そしてカルシウムの少ない重曹型の組成。湯の澤鉱泉さんの湯にも、この仕組みが関係しているのではないかと想像しました。平成30年にナトリウムの割合が下がり、カルシウムが増えたのも、地下水が触れる岩石や通り道に違いがあったからだろうか。もちろん、実際にどんな経路で湧いているのかはわかりません。

それでも、ほとんど変わらないメタケイ酸と、動きのあるナトリウム。二枚を並べたことで、足元の地層と湯のつながりが、一枚のときより立体的に見えてきました。

天保13年の開湯伝説、櫓と夢のお告げをたどる

玄関まわりで、湯業の始まりを伝える碑が目に入りました。温泉の開湯伝説には、傷ついた鹿や鶴が湯を見つけたという動物型や、高僧が発見したという型がよく見られます。湯の澤鉱泉さんの伝説は、どんな型なのだろうと気になりました。

古くから「医者いらずの湯」と呼ばれてきたことを思うと、けがや病にまつわる体験が出発点なのかもしれません。そんな予想をしながら、資料を探しました。

宿のご主人が観光経済新聞のインタビューで語られた内容によると、天保13年、ご先祖が櫓から落ちてけがを負ったそうです。そして夢のお告げに従って、この地の湯に浸かったところ、全快したと伝えられています。その後、嘉永7年に湯業を始め、現在のご主人は5代目にあたるとのことでした。

予想どおり、伝説の主役は「人」でした。しかも、櫓からの転落と夢のお告げという、思いがけない展開です。湯の存在を知ったことが、やがて湯治場の始まりにつながっていく。伝承の中では、信仰と温泉の歴史がひとつながりの物語になっていました。

天保13年は西暦1842年、嘉永7年は1854年です。伝承に残る出来事から湯業を始めるまで、およそ12年。その間に、この湯の評判が少しずつ地域へ広がり、湯治場としての形が整っていったのだろうか。実際の経緯はわかりませんが、年号を西暦に直してみたことで、玄関脇の碑に刻まれた物語の行間にまで想像が広がりました。

農閑期の湯治場から秘湯の宿へ、茨城の鉱泉文化を考える

帰り道、田んぼが広がる山方の風景を眺めながら、ふと思いました。茨城県北部には「〇〇鉱泉」と名のつく場所を何か所か見かけた気がします。冷たい鉱泉を温めて入る文化は、この地域の暮らしとどのようにつながってきたのでしょうか。

火山性の高温泉が豊富な地域とは違い、冷たい鉱泉を温めて利用することにも、昔から大切な意味があったのではないか。そんな想像が浮かびました。

まず、地域の資料を探してみました。大子町の町史資料一覧には、昭和56年刊行の『大子町史研究 第9号』に「久慈川流域の鉱泉の研究」という論考が収録されていることが紹介されています。鉱泉そのものが、地域の歴史を調べる対象になっていました。

そして湯の澤鉱泉さんについては、ご主人が観光経済新聞のインタビューで、もとは近くの農家が農閑期に訪れる湯治場だったと語っています。田畑の仕事が一段落したころ、人々がこの山あいの湯に集まっていたのでしょうか。帰り道に眺めた風景が、少し違って見えてきました。

現在、湯の澤鉱泉さんは茨城県で唯一の日本秘湯を守る会の会員宿です。秘湯といえば山奥の熱い温泉を思い浮かべてしまいますが、ここは里山の冷鉱泉。地元の農家が訪れた湯治場が、今では各地の温泉好きに知られる宿になっています。

茨城の鉱泉文化がどのように広がったのか、まだ調べたいことは残っています。それでも、湯の澤鉱泉さんの歴史には、農村の暮らしと鉱泉が結びついていた確かな一場面がありました。湯の熱さや成分だけでは語れない、暮らしとの距離の近さ。そんなところにも、この里山の鉱泉が持つ魅力があるように感じました。

こんにゃく・湯葉・常陸秋そば、奥久慈の大地が育てた湯宿の味

湯上がりに食事処の案内を見ると、「ここならではのこんにゃく料理」という言葉がありました。温泉宿の名物といえば、川魚や山菜を思い浮かべることが多いものです。なぜこんにゃくなのだろう、と気になりました。

奥久慈の山あいは、こんにゃく芋の産地だったのではないか。しかも、温泉の成り立ちと同じように、この土地の地質が作物にも関わっているのではないか。湯の話から広げてきた妄想を、食にもつなげてみたくなりました。

湯の澤鉱泉さんの料理のページには、古くからの名物・こんにゃくに加え、奥久慈の大豆と八溝山系の伏流水でつくる湯葉、秋の手打ち常陸秋そばが紹介されていました。農林水産省のにっぽん伝統食図鑑によると、江戸時代中期、旧久慈郡諸沢村の中島藤右衛門がこんにゃく芋を粉にする方法を考案しました。保存や輸送が容易になり、やがて水戸藩の財政を支える特産品にまで成長したそうです。

さらに広報常陸大宮(平成19年10月号)には、藤右衛門が山方地域の諸沢に生まれたことや、こんにゃく芋は砂礫が多く水はけのよい土地を好み、県北の山間地が栽培に適していたことが紹介されていました。湯の澤鉱泉さんと同じ山方の地が、粉こんにゃく誕生の舞台だったのです。

地下の岩石と触れ合う水が鉱泉となり、山あいの水はけのよい土地ではこんにゃく芋が育つ。八溝山系の伏流水は、湯葉づくりにも生かされています。広報常陸大宮(平成30年7月号)には、そばや鮎、こんにゃくを「美味しいジオ」として紹介する催しも載っていました。湯と食を別々に楽しむのではなく、同じ土地が育んだものとして味わう。湯の澤鉱泉さんでの湯上がりのひと皿には、そんな楽しみ方がよく似合うと感じました。

ゆめにゃん

鉱泉に浸かり、里山の幸を味わい、江戸の昔を想う。
次の休みは、湯の澤鉱泉で「大地と暮らしが育んだぬくもり」に出会う旅に出かけませんか?

18.4℃から始まる冷鉱泉

源泉温度は18.4℃で、浴用では加温して利用される冷鉱泉です。高温の源泉とは異なり、分析書の泉温そのものが興味の入口。温度と成分を一緒に眺めると、この湯ならではの個性が見えてきます。

重炭酸ソーダ泉を読み解く

公式で案内される「重炭酸ソーダ泉」は、湯の澤鉱泉を調べるうえで外せない言葉。分析値を見るとNa⁺とHCO₃⁻がそれぞれのイオン群で大きな割合を占め、数字からも成分構成の輪郭を追いたくなる鉱泉です。

温泉分析書から広がる興味

泉温やpHだけでなく、成分総計、メタけい酸、湧出量など、分析書には気になる数字がずらり。さらに「本館裏の蛇口より採水」という採水場所まで眺めれば、数字の向こうにある現地の姿まで想像したくなります。

0.496g/kgから考える湯

2018年分析の成分総計は0.496g/kg。数字だけで湯ざわりを説明することはできませんが、Na⁺やHCO₃⁻、pHなどと組み合わせて眺めれば、「どんな湯なのだろう」と浴感を想像する楽しみが広がります。

一軒宿で向き合う一杯の湯

湯の澤鉱泉は、奥久慈の山あいに佇む客室7室の一軒宿。岩風呂と檜風呂で加温した冷鉱泉を楽しめます。温泉街を巡る旅とはひと味違い、一つの湯とじっくり向き合いたくなる環境も大きな魅力です。

温泉マニアあるある! – 湯の澤鉱泉考察編

ゆめにゃん

マニアの人はこうなっちゃう…かも!?

18.4℃を見た瞬間に反応する

普通の人なら「冷たい源泉なんだね」で終わる18.4℃。マニアは分析書を見た瞬間、「18.4℃……冷鉱泉!」と小さく反応します。実際の浴槽では加温された湯を楽しみながらも、頭の片隅では源泉そのものの温度を想像中。浴槽に浸かっているのに、意識だけは18.4℃へ旅立っています。

mval%の90超えを二度見する

Na⁺92.37%、HCO₃⁻91.62%。マニアはmg/kgより先にmval%へ目が行き、「両方90超えてるじゃん!」と分析書を二度見します。友達に「それ何がすごいの?」と聞かれると、待ってましたとばかりに説明開始。湯へ入る前から、分析書一枚で十分楽しめてしまいます。

「重炭酸ソーダ泉」を声に出したい

公式案内で「重炭酸ソーダ泉」という言葉を見つけると、マニアは妙に嬉しそう。「重炭酸ソーダ……いいねぇ」とつぶやきます。友達が「普通に読めばいいじゃん」と言っても、「いや、この呼び方に味があるんだよ」とドヤ顔。温泉へ来たのに、泉質名の響きまで鑑賞対象になっています。

成分総計0.496g/kgから浴感を想像する

分析書の成分総計0.496g/kgを見て、「なるほど……成分の主張は控えめなタイプかな?」と勝手に浴感を予想するマニア。ただし一つの数字だけでは湯ざわりを決められないことも知っています。それでも分析書から想像して、実際の湯と向き合う。この答え合わせにならない答え合わせが楽しいのです。

「本館裏の蛇口」に妙に食いつく

分析書に「湯の澤鉱泉本館裏の蛇口より採水」の文字を発見。「本館裏……蛇口……」と、成分値でもない場所で動きが止まります。友達が「そこ重要?」と聞いても、頭の中ではすでに本館裏の風景を想像中。数字だけでなく、採水場所の一言まで楽しめるようになったら立派な分析書マニアです。

メタけい酸44.2mg/kgで50を思い出す

メタけい酸44.2mg/kgを見つけると、「おっ、50に近い」と即座に反応。温泉法上、メタけい酸50mg/kg以上という単独基準があるため、マニアには44.2という数字まで妙に印象的に見えます。浴感との関係まで想像し始めますが、そこは一成分だけでは語れない世界。また調べものが増えました。

気温18.1℃と泉温18.4℃を見比べる

分析書に並ぶ気温18.1℃と泉温18.4℃を見つけ、「差は0.3℃か……」と急に考え込みます。もちろん、この数字だけで地下の様子まで分かるわけではありません。それでも井戸の深さや地下水の流れまで気になり始め、気づけば調べる項目が増殖。0.3℃から始まる壮大な寄り道です。

微量成分の鉄まで見逃さない

湯の澤鉱泉の湯ざわりに感動したあと、改めてじっくり分析書を読み込むマニア。微量成分の欄まで目を通していると、「ちょっと待て!マジかよ……鉄もいるじゃん!!」と一人で大興奮。その様子を見ていたまわりからは、“鉄人”とあだ名されてしまうのです。

管理人

管理人いじりですね…
そう呼ばれるのも悪くない!

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この記事を書いた人

温泉巡り歴15年。
トロトロのお湯と硫黄の香りが大好物。
なのに他の泉質にもすぐハマってしまう。
休日は山奥の秘湯へ直行。
そして、猫が好き。

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