十和田湖と深い森に囲まれた、十和田湖畔温泉。
実際に湯に浸かってみると、穏やかな印象のお湯の向こうに、三つの主要陰イオンや34.8℃という源泉温度、地下936mという気になる数字が並んでいました。
しかも、ここは巨大なカルデラ湖のほとり。では、この湯はどこから来て、地下にはどんな世界が広がっているのでしょう。
分析書や地質資料を眺めながら、気になったことを一つずつ掘り下げてみました。
- 三つの陰イオンが並ぶ泉質
硫酸・塩化物・炭酸水素の三者が並ぶ構成に目が留まりました。 - 34.8℃という絶妙な源泉温度
泉温区分の境界近くにある、この細かな数字が気になりました。 - 地下936mから届く温泉
深く掘削して見つかった湯は、地下のどこを通ってきたのでしょう。 - カルデラと温泉の地下世界
火山のカルデラにある温泉。その地下との関係に興味が湧きました。 - 県境を越えて届けられる湯
ひとつの源泉が青森と秋田をまたいで使われる仕組みに注目しました。


十和田湖畔温泉ってどんなところ? | 4コマ漫画で体験してみる
ゆめにゃん猫は入れないからフィクションにゃ…


十和田湖畔温泉レビューと注目ポイント考察
SO₄²⁻・Cl⁻・HCO₃⁻の三つ巴が面白い
十和田湖畔温泉第1号の分析書を見ていて、最初に気になったのが陰イオン欄でした。SO₄²⁻が487.3mg/kg、Cl⁻が301.8mg/kg、HCO₃⁻が341.1mg/kg。どれか一つだけが圧倒的に多いというより、三種類がそろって存在しています。「これ、ミリバル比にしたらかなりきれいな三つ巴になるんじゃないか?」と、勝手に正三角形を思い浮かべました。平成14年の分析書でも、この三成分を含むナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物・炭酸水素塩泉として確認できます。
そこで当量換算してみると、陰イオン中ではSO₄²⁻がおよそ42%、Cl⁻が約35%、HCO₃⁻が約23%。さすがに「ほぼ正三角形」とまではいきませんでしたが、三者がしっかり存在感を持つ構成です。泉質名に三種類の陰イオンがずらりと並ぶ理由が、数字からも見えてきました。
私は最初、完全な三つ巴を期待していました。でも実際はSO₄²⁻が一歩リードし、その後ろをCl⁻とHCO₃⁻が追う形。それでも十分面白い。泉質名を見て「長いな」で終わらず、分析書まで開くと、その長さにもちゃんと理由がありました。
34.8℃という泉温区分の境界に注目してみた
第1号源泉の分析書で目に留まったのが、源泉温度34.8℃という数字でした。温泉としてはぬるめの温度ですが、さらに気になったのは「34℃」という境目です。温泉法上の温泉に該当するかどうかとは別に、泉温による分類ではちょうど区分が変わるあたり。わずか0.8℃という位置が妙に気になり、改めて基準を確認してみることにしました。
環境省の「鉱泉分析法指針」では、泉温を25℃未満の「冷鉱泉」、25℃以上34℃未満の「低温泉」、34℃以上42℃未満の「温泉」、42℃以上の「高温泉」に分類しています。つまり34.8℃の第1号源泉は、この分類では低温泉との境界を0.8℃上回った「温泉」に当たります。詳しい区分は、環境省「鉱泉分析法指針」で確認できます。
ここで改めて整理しておきたいのが、普段何気なく使っている「温泉」という言葉には、別の基準もあることです。環境省「温泉の定義」によると、温泉法では、地中から湧出する水などが25℃以上、または定められた物質を一定量以上含む場合に温泉とされます。そのため第1号源泉は34℃の境界とは関係なく、温度だけでも温泉法上の条件を満たしています。
34.8℃という数字そのものは、温泉か否かの瀬戸際ではありませんでした。それでも「なぜ34℃で区切られているんだろう」と数字に目を留めたことで、温泉法上の定義と泉温による分類は同じものではない、と改めて整理するきっかけになりました。分析書の小数点以下まで眺めていると、こんなところから興味が広がるのも面白いところです。
1.737g/kgという成分量から泉質名を読み解いてみた
十和田湖畔温泉第1号の溶存物質量は1.737g/kg。単純温泉の基準である1,000mg/kgをしっかり超えています。「低張性なのに1.7gもあるのか。成分多いのか少ないのか、結局どっちなんだっけ?」と少し混乱しました。温泉分析書では、単純温泉かどうかと低張性かどうかが別々に書かれているからです。
そこで環境省の「鉱泉分析法指針」を確認すると、塩類泉は溶存物質が1,000mg/kg以上。一方、低張性・等張性・高張性という分類では、8,000mg/kg未満が低張性です。つまり1.737g/kgなら、塩類泉でありながら低張性という組み合わせはまったく不思議ではありません。第1号源泉の分析値としても、成分総計1.737g/kgが確認できます。
私は最初、「低張性=成分控えめな湯」と一括りにしていました。でも分類を追ってみると、1,000mgと8,000mgという別々の境界線が使われていました。同じ1.737g/kgという数字でも、見る物差しによって意味が変わる。分析書は成分だけでなく、分類ルールまで知ると急に立体的になります。
Ca²⁺とSO₄²⁻を見て「石膏じゃね?」と考えた
分析書にはCa²⁺が114.7mg/kg、SO₄²⁻が487.3mg/kg含まれています。この二つを見た瞬間、「カルシウム+硫酸……石膏じゃね?」と連想しました。石膏は硫酸カルシウムを主体とする鉱物です。浴槽まわりに白っぽい付着物でもあれば、なおさら「これも石膏成分が析出しているのでは」と考えたくなりました。
ただし、水の中にCa²⁺とSO₄²⁻があることと、「水中に石膏という物質がそのまま浮いている」ことは同じではありません。天然水では、それぞれイオンとして溶けています。また、白い付着物が実際に硫酸カルシウムなのか、炭酸塩なのか、別のものなのかは、付着物そのものを調べなければ分かりません。米国地質調査所(USGS)でも、SO₄²⁻は石膏などを含む岩石や土壌から水へ供給される場合があると説明されています(米国地質調査所による水中の溶存成分の解説)。
「CaとSO₄がある=石膏」と一直線につなげるほど簡単な話ではなさそうです。それでも、分析書を見て鉱物まで連想したことで、「この二つは地下で何と接してきたのだろう」という新しい興味が増えました。
HCO₃⁻341mg/kgとpH7.1の組み合わせが気になった
十和田湖畔温泉第1号の分析書では、HCO₃⁻が341.1mg/kg。そして平成14年の分析書を確認した記録ではpH7.1、中性です。酸性でも高アルカリ性でもなく、かなり真ん中寄り。「これだけHCO₃⁻があるなら、炭酸系の緩衝作用がpH7.1の安定感にも関係しているのかな」と考えました。
調べてみると、方向性としては面白いところを突いていました。米国地質調査所(USGS)のアルカリ度に関する解説では、HCO₃⁻やCO₃²⁻などは、水が酸を中和しpH変化を抑える「アルカリ度」に関わる主要成分として説明されています。ただし、HCO₃⁻341mg/kgという数字だけから「浴槽でもpHがほとんど変化しない」とまでは言えません。温度変化やCO₂の出入りなどでも水の状態は変わるためです。
それでも、pH7.1とHCO₃⁻という二つの数字が無関係に並んでいるわけではないことは分かりました。分析書で「中性」と読んで終わっていた数字が、今度は炭酸系の化学へつながっていきました。
同じ第1号源泉が宿ごとにどう使われるのか気になった
十和田湖畔温泉を調べていると、複数の宿で「十和田湖畔温泉第1号」という同じ源泉名を目にします。それなら当然、「同じ源泉を使っているのに、宿が違えば浴槽ではどれくらい印象が変わるんだろう?」と気になりました。源泉が同じなら全部同じ湯――とは、たぶん単純にはいかないはずです。
十和田湖畔温泉は2000年代初めに開発され、源泉から休屋・休平地区の宿泊施設へ供給されるようになりました。秋田県側については、現在も小坂町の十和田湖畔温泉案内で、とわだこ遊月、とわだこ賑山亭、民宿和みの3施設に温泉が供給されていることが確認できます。一方、34.8℃という源泉温度なので、実際の浴用では各施設が浴槽条件に合わせて温度管理などを行います。
そこで面白くなるのが「源泉」と「浴槽の湯」は観察ポイントが違うことです。配湯された後、どのくらいの浴槽へどう投入され、どう温度管理されているのか。それぞれの施設の掲示を見比べれば、同じ第1号源泉が浴槽へ届くまでの違いも楽しめそうです。源泉調査の次は、配湯調査が始まりそうです。
カルデラの温泉なのに硫黄泉ではないのが気になった
十和田湖は巨大なカルデラ湖です。気象庁の十和田火山解説によれば、約20万年前から火山活動が始まり、大規模な火砕流噴火やカルデラ形成を繰り返してきました。それなのに、十和田湖畔温泉第1号はpH7.1の中性で、泉質はNa・Ca-硫酸塩・塩化物・炭酸水素塩泉。「カルデラの中なら、もっと硫黄臭ぷんぷんの火山性温泉が出るんじゃないの?」と私は思いました。
ところが、ここで話が一気に面白くなります。2026年に示された文部科学省・火山調査委員会の十和田火山地下構造資料では、中湖の地下に深部へ伸びる低比抵抗域が確認され、マグマからの脱ガス成分を含む高温の火山性流体が上昇している可能性が示されています。さらに中湖湖底では、熱水湧出を示唆する音響異常も報告されています。
となると、「硫黄臭がないから非火山性の温泉」という私の単純な想像も成立しません。地下には火山性流体らしき世界がある。しかし、それが休屋の第1号源泉へ直接つながっているかは別問題。むしろ答えが遠のいたことで、十和田湖の地下がさらに気になってきました。
地下936mと聞いて水脈の深さだと思ってしまった
十和田湖畔温泉第1号について調べると、「地下936mまで掘削」という数字が出てきます。ほぼ1km。「つまり936m地下に温泉の水脈があるのか!」と、私はすぐに地下断面図を想像しました。カルデラの割れ目を通ってきた熱水を、936m地点でズバリ捕まえた――そんな絵を描きたくなります。
開発当時の資料を引用した記録では、2001年に掘削を開始し、2002年4月に湧出、掘削深度936m、湧出量160L/分とされています(十和田湖畔温泉開発当時の記録を引用した資料)。 ただし「井戸を936m掘った」と「936m地点だけから温泉水が入っている」は同じ意味ではありません。どの深さから井戸へ地下水が流入しているかを知るには、ボーリング柱状図や井戸構造などが必要になります。
さらに2026年の十和田火山3次元比抵抗構造調査を見ると、十和田湖地下には深さによって異なる構造が広がり、中湖付近には複雑な低比抵抗域まで確認されています。 936mという数字は「答え」ではなく、「この井戸のどこから湯が入っているの?」という次の疑問になりました。
936mの井戸はどんな地層を貫いているのか
地下936mまで掘ったと知ると、今度は「その936m、いったい何を突き抜けたんだ?」と気になります。十和田湖は大規模噴火を繰り返してきたカルデラです。それなら地表近くには軽石や火山灰、火砕流堆積物が重なり、その下にはもっと古い地層があるのではないか。私は「火砕流堆積物を全部突き抜け、古い基盤岩まで掘ったのでは」と想像しました。
十和田火山については、産業技術総合研究所 地質調査総合センター「十和田湖地域の地質」で、カルデラ形成に伴う多数の火砕流・降下火砕物と、それより古い新第三紀~第四紀の地層や火山岩類が複雑に分布することが整理されています。また2026年の地下構造調査では、中湖周辺の浅部低比抵抗域について、カルデラ陥没地形を埋めた未固結火砕物である可能性が示されています。
ただし、休屋の第1号井そのものの柱状図を確認できなければ、「936mで○○層へ到達した」かは分かりません。私が期待した壮大な地層貫通物語は、今回は保留です。でも次に欲しい資料がはっきりしました。第1号源泉のボーリング柱状図。そんなものまで欲しくなった時点で、だいぶ深いところまで来ています。
一つの源泉が青森と秋田をまたいでいた
十和田湖畔の休屋・休平地区を歩いていると、県境がかなり身近です。小坂町の十和田湖案内によれば、神田川が青森県と秋田県の境になり、青森側が休屋、秋田側が休平です。「では十和田湖畔温泉の配湯はどうなっているんだ? もしかして温泉そのものが県境を越えているのでは?」と気になりました。
開発当時の記録では、十和田湖畔温泉第1号の湧出地は旧十和田湖町、現在の青森県十和田市側です(十和田湖畔温泉開発当時の源泉情報)。一方、現在の小坂町公式案内では、秋田県側の休平にある「とわだこ遊月」「とわだこ賑山亭」「民宿和み」にも十和田湖畔温泉が供給されています。つまり配管の詳しいルートまでは確認できなくても、配湯という仕組みそのものが県境を越えていることになります。
人間は神田川を境に「ここから青森」「ここから秋田」と線を引きますが、温泉に県境は関係ありません。一つの源泉から送られた湯が二県の宿で使われる。分析書や地質を追いかけていた最後に、まさか行政境界まで温泉ネタになるとは思いませんでした。県境をまたぐ湯めぐり――これはかなり十和田湖畔らしい楽しみ方だと思いました。



湖を眺め、湯に浸かり、その源を想う。
次の休みは、十和田湖畔温泉で「大地と水の物語」に思いを馳せる旅に出かけませんか?
- 硫酸塩泉を含む複合泉
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代表源泉では硫酸イオンが主要陰イオンのひとつ。塩化物・炭酸水素とともに泉質名を構成する、分析書好きには注目したくなる組成です。
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温泉マニアあるある! – 十和田湖畔温泉考察編



マニアの人はこうなっちゃう…かも!?
- 三つの陰イオンを見てニヤつく
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分析書に「硫酸塩・塩化物・炭酸水素塩」の文字を見つけると、マニアの視線が止まります。「おお……三つ並んでる」と嬉しそう。さらにSO₄²⁻、Cl⁻、HCO₃⁻の数値まで追い始め、「なるほど、こういうバランスか」と一人で納得。同行者には何が面白いのか伝わっていませんが、本人にとって分析書は立派な読み物です。
- 34.8℃で急に動かなくなる
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源泉温度「34.8℃」を見た瞬間、マニアが静止します。「……34.8℃か」。友達が「だから何?」と聞くと、「34℃が泉温分類の境界なんだよ!」と急に元気になります。たった0.8℃にこれほど興奮できるのは温泉好きならでは。入浴前から小数点以下に心を奪われています。
- 1.737g/kgを見て満足する
-
成分総計約1.7g/kgという数字にもマニアは反応します。「単純温泉じゃないんだよなぁ」と分析書を眺めながらニヤニヤ。しかも低張性という表記を見つけると、「そうそう、分類の物差しが違うんだよ」とさらに楽しそう。友達にはただの数字の羅列でも、マニアには一行ごとに見どころがあります。
- 湯口より先に掲示板を探す
-
浴場に着いたら湯船へ一直線……とは限りません。まず壁を見回し、温泉分析書や湯使いの掲示を探します。「あった!」と喜んだあと、源泉名、泉温、pH、成分を確認してようやく入浴開始。同行者がすでに湯船でくつろいでいても気にしません。マニアにとって分析書チェックまでが入浴準備です。
- 同じ源泉でも観察をやめない
-
複数の施設へ配湯される温泉と聞くと、「じゃあ全部同じだね」とはなりません。湯口を眺め、温度を感じ、湯色や香り、湯ざわり、オーバーフローの様子までじっくり観察。「同じ源泉でも浴槽までの条件はいろいろあるからね」とドヤ顔。比較対象が増えたことを、むしろ喜んでいます。
- 936mと聞いたら地下へ潜り始める
-
「地下936mまで掘削」と聞いた瞬間、マニアの想像力が地下へ向かいます。「でも936mがそのまま採水深度とは限らないよな……」。友達が「温泉入りに来たんだよね?」と確認しても、頭の中ではすでにボーリング柱状図を捜索中。地上では湯に浸かりながら、脳内だけ地下世界を探検しています。
- カルデラ湖を見ても地下を考える
-
目の前には雄大な十和田湖。普通なら景色に見とれるところですが、マニアは「この下って、どうなってるんだろう……」と別方向へ興味が向かいます。カルデラ、火砕物、地下水、熱水――調べた言葉が次々と頭に浮かび、絶景を見ながら脳内では地質断面図を展開。湖の底まで気になるのです。
- 中性なのが逆に気になってくる
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カルデラ火山のそばと聞けば、強烈な個性のお湯を想像したくなるもの。ところが今回確認した資料ではpH7.1の中性域です。マニアはそこで「へぇ……ここで、この泉質なんだ」と再び分析書へ。派手な特徴だけでなく、「なぜこんなお湯なんだろう」と考える余地そのものが楽しくなってきます。
- 県境を越えるお湯にロマンを感じる
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青森県と秋田県にまたがる十和田湖畔で、温泉も両県の施設へ届けられていると知るとマニアは大喜び。「お湯まで県境を越えるのか!」と妙なところに感動します。配管の具体的なルートまでは分からなくても、それで十分。湯船に浸かりながら県境を越えて旅するお湯を想像し、一人でニヤニヤしています。
- カルデラと泉質を結びつけたくなる
-
湖を眺め、分析書を眺め、最後はまた湖を眺めます。そしてマニアが小声でひと言。「なるほど……カルデラ湖の近くで、この泉質か……」。直接の関係まで分かったわけではないのに、地下936m、その先の地質、地下水の流れまで一人で妄想を膨らませます。そんな姿を見たまわりから、“湯めぐりカルデラ”とあだ名されてしまうのです。



管理人いじりですね…
そう呼ばれるのも悪くない!









