明礬温泉を深掘りレビュー! みょうばん湯の里の分析書からたどる乳白色の湯の秘密(大分県別府市)

湯め活びより明礬温泉考察編アイキャッチ画像

乳白色の湯に浸かり、湯けむりが立ちのぼる明礬温泉の風景を眺めていると、次々に小さな疑問が浮かんできました。独特の泉質や湯の色、わら葺きの湯の花小屋、そして噴気を生かした地獄蒸し料理。
この土地ならではの自然の恵みと、それを大切に受け継いできた人々の工夫には、どんな背景があるのでしょうか。
現地で感じた不思議を出発点に、温泉分析書や公開資料をたどりながら、自分なりに考えてみました。

明礬温泉で興味深かったこと
  • pH2.4なのに単純温泉という不思議
    強い酸性を示すお湯なのに、泉質名には「単純」の文字。その組み合わせが気になりました。
  • 乳白色の湯はどこで生まれるのか
    分析書には「淡白色微濁」とあるのに、浴槽は乳白色。その違いに興味を持ちました。
  • 湯けむりの並びに隠れた地質の謎
    斜面に立ちのぼる湯けむりを眺めていると、噴気が集まる場所に何か理由があるように感じました。
  • 湯の花小屋で育つ白い結晶の正体
    わら葺きの小屋で生まれる湯の花。乳白色のお湯との違いや、昔ながらの製法が気になりました。
  • 温泉の噴気がプリンになる面白さ
    お湯や湯の花だけでなく、地獄蒸しプリンにも使われる噴気。その多彩な使い道に驚きました。
目次

明礬温泉ってどんなところ? | 4コマ漫画で体験してみる

ゆめにゃん

猫は入れないからフィクションにゃ…

明礬温泉の魅力を詰め込んだ4コマ漫画。湯けむり、湯の花小屋、乳白色の湯、地獄蒸しプリンを紹介。

明礬温泉レビューと注目ポイント考察

この記事は、筆者が実際に温泉を訪れた際に感じた「なぜ?」をきっかけに、温泉分析書や公開資料などを調べ、自分なりに考察した内容です。資料から確認できる事実と筆者個人の考察を分けて記載するよう努めていますが、専門家による学術的な見解や結論を示すものではありません。直接的な裏付けを確認できていない仮説や想像については、その旨を明記しています。一人の温泉好きが、分析書や資料を眺めながら考えた「温泉の自由研究」としてお楽しみください。

pH2.4なのに「単純温泉」?湯の里さんの泉質名を分解してみた

みょうばん湯の里さんに掲示されていた2025年4月10日付の温泉分析書。まず目が止まったのは泉質名でした。「酸性・含硫黄-単純温泉」。白く濁って硫黄が香り、肌にピリッとくるお湯なのに、最後は「単純温泉」です。そこに意外さを感じました。

湯船で考えたのは、「単純」は成分が穏やかという意味ではなく、何かの総量が基準に届いていないだけではないか、ということでした。頭に付く「酸性」「含硫黄」は、少量でも存在感のある成分に与えられる“称号”のようなものではないか、とも想像しました。

湯上がりに環境省の鉱泉分析法指針を確認すると、溶存物質(ガス性のものを除く)が1kgあたり1,000mg未満で、泉温25℃以上のものは「単純温泉」に分類されると書かれていました。湯の里さんの源泉は0.6179g/kg、つまり約618mg/kgなので、この条件に当てはまります。

一方で、指針には特殊成分の基準もあります。水素イオンが1mg/kg以上なら「酸性」、総硫黄が2mg/kg以上なら「含硫黄」です。分析書の水素イオンは4.0mg/kg。総硫黄は、遊離硫化水素2.8mg/kgとチオ硫酸イオン1.3mg/kgをそれぞれ硫黄の重さに換算して足すと、約3.4mg/kgになりました。

予想はおおむね当たっていたようです。「単純」は溶存物質の総量による分類で、そこに酸と硫黄という強い個性が重なっています。後ろの(低張性・酸性・高温泉)も、浸透圧、pH、泉温という別々の物差しで測った結果です。名前を一語ずつ分解するだけで、お湯の性格がぐっと立体的に見えてきました。

陽イオンの半分以上が水素イオン!“酸が主役”のお湯を数字で確かめる

肩まで浸かると、肌の表面がピリッとする感覚がありました。強い刺激ではありませんが、いつもの単純温泉とは明らかに違います。入浴前に分析書を見たとき、陽イオン欄の水素イオンが53.29%という数字に驚いていました。そのため、「この感覚には酸性の強さも関係しているのかな」と考えながら湯に浸かっていました。

陽イオンの主役といえば、ナトリウムやカルシウムであることが多い印象です。ところがここでは、電気的な量を基準にした割合で、水素イオンが半分以上を占めています。もう一つ気になったのは、pH2.4という値と、水素イオン4.0mg/kgという値の関係です。この二つはどこかでつながっているのではないかと予想しました。

ミリバルの考え方は、別府温泉地球博物館が公開している温泉分析書の見本を見ながら整理しました。ミリバルは、成分の量を「電気的な働きの大きさ」にそろえて比べる単位です。水素イオンは一つひとつがとても軽いので、4.0mg/kgでも3.97ミリバルになります。ナトリウムは17.3mg/kgあっても0.75ミリバルです。重さだけでは見えない存在感がよく分かります。

pHとの関係も、湯上がりに計算してみました。環境省の鉱泉分析法指針では、水素イオン濃度をpHから計算する方法が示されています。pH2.4から計算すると、1リットルあたり約0.004モル。水素イオン1モルはおよそ1gなので、量にすると約4mgです。分析書の4.0mg/kgともほぼ一致します。なるほど、この二つの数字は計算上もつながっていたのか、と小さくうなずいてしまいました。

泉質名の「酸性」の後ろに、陽イオンの当量比で半分以上を占める水素イオンがはっきり見えてきました。湯船で感じたチリッとした感覚と、分析書に表れた酸性の特徴。その両方を振り返ることで、お湯の個性が少し具体的になった気がしました。

硫酸イオン92%とアルミニウム19%、お湯の中に“明礬”を見つけた

湯上がりに分析書を読み返していて、陰イオン欄の硫酸イオン91.75%という数字が目に入りました。陽イオン欄に戻ると、水素イオンの次に多いのはアルミニウムイオンの19.19%で、カリウムイオンも少し含まれています。いずれも電気的な量を基準にした割合ですが、硫酸イオン、アルミニウム、カリウム。どこかで聞いた組み合わせだと考えて、ようやく「ミョウバンの材料だ」と気づきました。

明礬温泉の地名は、この地で明礬をつくっていたことに由来すると知っていました。それなら、お湯そのものにもミョウバンの材料が溶け込んでいるのではないか、と思ったのです。さらに、アルミニウムは酸性の水が岩石に作用したときに溶け出すのではないか、と想像が膨らみました。

ミョウバンの代表は、硫酸カリウムアルミニウム(KAl(SO₄)₂・12H₂O)という結晶です。酸性の温泉水と岩石の反応を調べた研究を読むと、硫酸を含む酸性の水が岩石と反応し、アルミニウムが溶け出す仕組みについて考察されていました。こうした反応が、明礬温泉でも起きているのかもしれません。

湯の里さんの分析書をこの見方で読み直してみました。陽イオンの割合は、アルミニウムが約19%、鉄(Ⅱ)イオンが約2%、カルシウムとマグネシウムを合わせて約13%、ナトリウムとカリウムを合わせて約12%です。水素イオンを除けば、アルミニウムがいちばん目立つ構成でした。

もちろん、成分の割合だけで地下での反応の様子まで分かるわけではありません。それでも、地名の由来になったミョウバンと、いま浸かっているお湯の成分が、同じ大地の仕組みでつながっているように感じられました。

分析書は「淡白色微濁」、湯船は乳白色。白い濁りはどこで生まれる?

露天風呂のお湯は、手のひらを沈めると指先がぼんやりかすむほどの白さでした。施設の紹介でも、白濁の湯として紹介されています。ところが、分析書の知覚的試験の欄は「淡白色微濁」。“わずかに濁る”という控えめな表現に、あれ?と思いました。

そこで、源泉から出た直後は透明に近く、空気に触れて時間がたつほど白くなるのかなと予想しました。香りは硫化水素臭なので、白さにも硫化水素が関わっているはずです。湯口の近くと浴槽の端で色を見比べると、湯口側のほうが少し透明感があるように見えました。

鹿児島県新湯温泉の化学的研究(鹿児島大学リポジトリ)には、水に溶けた硫化水素が空気中の酸素によって少しずつ酸化され、コロイド状の硫黄が生まれる様子が書かれていました。コロイドとは、目に見えないほど細かい粒が水の中に散らばった状態のことです。光を散らすため、白く見えます。

もう一つ、高校化学で習う反応も思い出しました。チオ硫酸イオンは酸性の水の中で分解し、硫黄を生じることがあります。湯の里さんの源泉には、遊離硫化水素が2.8mg/kg、チオ硫酸イオンが1.3mg/kg含まれています。pH2.4という酸性の条件も考えると、こうした成分が白い濁りに関係しているのかもしれません。

湯口から注がれたお湯は、空気と触れ合いながら浴槽を巡ります。そのあいだに硫黄の微粒子が増え、白さが深まる可能性もありそうです。ただし、環境省の鉱泉分析法指針を読むと、知覚的試験は採取した試料を使って行うもので、浴槽とは観察条件も異なります。時間による変化だけとは限りませんが、分析書の「淡白色微濁」と湯船の乳白色は、どちらも同じお湯の姿なのでしょう。採水したときの顔と、浴槽で育った顔。湯口とオーバーフローを見比べる楽しみが一つ増えました。

湧出量は「-」で自然湧出。噴気地帯のお湯はどう生まれる?

分析書で意外だったのが湧出量の欄です。数字の代わりに「-」とあり、括弧の中に「自然湧出」と書かれていました。動力で汲み上げる源泉も多い別府で、自然に湧いているお湯に浸かれるのはうれしいことです。ただ、なぜ量が書かれていないのかが気になりました。

私の予想は、一本のパイプから勢いよく湧くタイプではなく、地面のあちこちから湯気とお湯がにじみ出るような源泉ではないか、というものです。湯の花小屋の周りでは、地面から直接湯けむりが上がっています。地下から上がってくる蒸気が、地表に近い地下水を温めてお湯をつくっているのではないか。湯船の中で、そんな妄想が膨らみました。

環境省の温泉分析書の様式を見ると、湧出量の欄には自然湧出・掘削自噴・動力揚湯の区分を書くことになっています。湯の里さんの「-」は、湧出の形態は自然湧出で、量の数値は記載されていない、と読めそうです。ただし、数字がない理由までは分かりません。

お湯の成り立ちについて調べると、別府温泉地球博物館の解説に興味深い記述がありました。地下の熱水が上昇する途中で沸騰して蒸気が生まれ、その蒸気に含まれる硫化水素が硫酸塩泉の形成に関わるというものです。さらに、大分県が公開している別府・恵下地獄の研究では、硫化水素を含む蒸気が地下水に入り込んで生じた温泉が報告されていました。

明礬でも似たしくみが起きていると考えると、湯の里さんのデータがつながって見えてきます。蒸気が運ぶ熱や硫化水素によって地下水が変化し、硫化水素の酸化で生じる硫酸が酸性を強める。そう考えれば、溶存物質が1g/kg未満でありながら、pH2.4、硫酸イオン約92%という組み合わせにも納得がいきます。

もちろん、この源泉が実際にどのような経路で生まれたのかは、分析書だけでは分かりません。それでも、地面のあちこちから立ち上る湯けむりを思い出すと、地下で蒸気と水が出会い、少しずつお湯になっていく様子を想像してしまいます。湧出量の「-」という小さな記号から、思いがけず地下の世界まで旅をしてしまいました。

鉄輪は透明、明礬は白濁。別府の地下で起きている“蒸気と熱水の分離”

同じ旅で、鉄輪温泉や市街地の共同湯にも入りました。私が浸かったのは透明でほんのり塩味のあるお湯が多く、明礬の白い酸性のお湯とはまるで別物です。鉄輪から明礬まではバスで10分ほど。それほど近いのに、なぜここまで違うのでしょうか。

私は、地下の同じ熱源から生まれた熱水が、上がってくる途中で蒸気とお湯に分かれているのではないかと考えました。蒸気は山側の地表へ、熱水は海側へ。そんな地下の“仕分け”を想像したのです。

調べてみると、大分県と別府市の温泉資源量調査に、別府地域の地熱系の概念モデルが載っていました。地下深部から流れ込む熱水が雨水と混ざり、蒸気と熱水に分かれます。蒸気は伽藍岳・鍋山・明礬などで噴気となり、熱水は一部が鉄輪で噴き出し、残りは海岸付近まで流れていく、という整理です。

成分の行き先については、別府市の温泉・湯けむりに関する自然科学的な解説が参考になりました。熱水が沸騰すると、硫化水素や炭酸ガスは蒸気側へ移ります。一方、食塩などの成分は主に液体側に残ります。さらに、蒸気に含まれる硫化水素が浅い地下水に溶け込み、酸化されて硫酸になることで、明礬のような酸性のお湯が生まれるそうです。

予想は大筋で合っていたようです。明礬は“蒸気の受け取り手”で、鉄輪や海側は“熱水の受け取り手”。もちろん実際の地下はもっと複雑でしょうが、湯の里さんの塩化物イオンが4.1mg/kgとごくわずかなのも、塩分が液体側に残るしくみを考えると納得できます。

別府八湯を巡るのは、一つの大きな地下のしくみの、別々の出口を訪ね歩くことなのかもしれません。そう思うと、八湯のなかで最も高い場所にある明礬が、別府の“上流”に見えてきました。

メタけい酸165.8mgと“微収斂味”。湯の中で腕をなでて考えたこと

湯船の中で腕をなでると、キュッと引っかかるような感触がありました。分析書の知覚的試験には「微収斂味」とあります。“収斂(しゅうれん)”は、引き締まるという意味です。味の表現ではありますが、肌で感じるこの感触とも何か関係があるのではないか、と思いました。一方で、湯上がりの肌は思ったほどつっぱらず、さらっとしていたのも印象的でした。

私は、キュッとする感じには酸やアルミニウムが、さらっとした感じにはメタけい酸が関わっているのではないかと予想しました。分析書のメタけい酸は165.8mg/kg。非解離成分(イオンにならずに溶けている成分)の合計167.2mg/kgのほとんどを占めています。

大分県の温泉に関する資料によると、温泉法ではメタけい酸が50mg/kg以上あれば温泉の条件を満たします。湯の里さんの源泉は、その3倍以上です。ただし、含有量が多いことと、私が感じた浴感が結びつくかどうかは別の話。では、なぜ酸性のお湯にこれだけのメタけい酸が溶けているのでしょうか。

手がかりを探すうちに、伽藍岳に関する大分県の資料に「別府白土」の鉱山跡があると書かれているのを見つけました。別府白土は、火山活動に伴う岩石の変質と関わりのある、けい酸質の白い土です。地中の岩石と酸性の水との反応が、気になってきました。

項目3で触れたように、酸性の水は岩石からアルミニウムや鉄を溶かし出すことがあります。一方、岩石が変質する過程では、けい酸に富む部分が残ることもあるそうです。酸性の水による岩石の変質について調べた研究を読みながら、地中ではこうした変化が起きているのかもしれないと考えました。

もちろん、湯の里さんのメタけい酸がどこから溶け出し、浴感にどこまで関係しているのかは分かりません。それでも、キュッとした感触と、湯上がりのさらっとした感触。二つの個性を思い出しながら岩石と温泉水の関係をたどると、浴感の観察がぐっと面白くなりました。

※浴感はあくまで筆者個人の感じ方です。

成分量は城崎温泉の約6分の1なのに?電気伝導率0.2280S/mの謎

分析書の現地試験の欄に、ふだんはあまり気にしない「電気伝導率 0.2280S/m(25℃)」という項目がありました。電気伝導率は、お湯がどれだけ電気を通しやすいかを示す値です。一般に、溶けているイオンが多いほど高くなります。湯の里さんの溶存物質は0.6g/kgほどと控えめなのに、この値は意外と高いのではないか、と気になりました。

私の予想は、水素イオンが関係しているのではないか、というものです。水素イオンは、ほかのイオンより電気を運ぶのが得意なはずです。成分の総量が少なくても、酸の多いお湯は電気をよく通すのではないかと考えました。

比べる相手として、豊岡市が公開している城崎温泉の分析書を読んでみました。こちらは3源泉を混合したお湯で、ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉。溶存物質は3.85g/kg、電気伝導率は0.666S/m(25℃)です。成分量は湯の里さんの約6倍あるのに、電気伝導率は約3倍にとどまっています。試しに電気伝導率を溶存物質量で割ってみると、城崎温泉が約0.17、湯の里さんが約0.37でした。今回の計算では、湯の里さんのほうが成分量に対して約2倍の値になりました。

水素イオンが水の中でとても動きやすく、ナトリウムイオンなどに比べて何倍も電気を運びやすいことは、電解質中のイオンの移動を扱った解説からも分かります。湯の里さんでは、陽イオンの電気的な量の半分以上を水素イオンが占めています。電気伝導率が成分量の割に高く見えるのも、その影響があるのではないかと考えました。ただし、電気の通りやすさはほかのイオンの種類や量にも左右されるため、水素イオンだけが理由とは言い切れません。

普段は読み飛ばしがちな数字ですが、「酸性」という個性がここにも表れているのかもしれません。次に別の酸性泉の分析書を読むときは、電気伝導率を溶存物質量で割ってみて、イオンの内訳と見比べるのが楽しみです。

1日わずか1mm。青粘土と噴気が育てる湯の花を“分析書の目”で見る

湯上がりに、敷地内の湯の花小屋の見学スペースをのぞきました。わら葺き屋根の下は湯気でむっとした暑さで、地面に敷かれた粘土の上に白い結晶が育っています。最初は「白いから硫黄かな」と思いました。

けれど分析書を読んだあとなので、別の想像も浮かびました。お湯の成分には、硫酸イオン、アルミニウム、鉄が含まれています。湯の花も同じ組み合わせでできていて、お湯と湯の花は兄弟のような関係なのではないか、と考えたのです。

みょうばん湯の里さんが公開している湯の花の解説によると、湯の花の主成分はハロトリカイトという、鉄とアルミニウムの硫酸塩だそうです。地下30cmほどに温泉脈があるとされる場所に小屋を掛け、栗石(くりいし)を敷き、その上に青粘土を敷き詰めます。噴気が石のすき間から粘土に入り、硫黄分が酸化してできた硫酸が、粘土から鉄やアルミニウムを溶かし出します。やがて結晶が育ち、成長は1日約1mm。施設の説明では、40〜60日かけて採取・精製・乾燥し、製品になると紹介されていました。

さらに、文化庁の文化財データベースを確認すると、この湯の花製造技術は2006年に国の重要無形民俗文化財に指定されています。江戸時代から受け継がれてきた技術なのだそうです。

湯の花の正体は、単なる硫黄の結晶ではなく、鉄とアルミニウムを含む硫酸塩でした。噴気から生まれた硫酸が、青粘土から成分を溶かし出す。これは、項目3で考えた「酸性の水が岩石からアルミニウムや鉄を溶かし出す」流れとよく似ています。

お湯の中ではイオンとして溶け、小屋の中では結晶として育つ。生まれる過程は違っても、共通する成分が見せる二つの姿を、同じ敷地で見比べられるのは、湯の里さんならではの楽しみ方だと思いました。

江戸時代の明礬は何に使われた?染め物と“国産化”の物語

分析書の申請者欄にある「株式会社みょうばん湯の里」という名前を見て、ふと疑問が湧きました。今では湯の花といえば入浴剤ですが、江戸時代の人たちにとって明礬は何だったのでしょうか。噴気地帯にわざわざ小屋を建ててまで作る価値があったはずです。

入浴用だけでなく、暮らしや産業に関わるものだったのではないかと想像しました。料理の色止めや漬物に使うミョウバンを思い浮かべるうちに、染め物にも関係していそうだと想像が膨らみました。

文化庁の「別府明礬温泉の湯の花製造技術」によると、1664年に渡辺五郎右衛門が明礬製造を始めたと伝わっています。「豊後明礬」と呼ばれ、染色や皮なめし、顔料などに広く利用されていました。湯の花に灰汁を加え、煮て精製したものが、当時の明礬だったそうです。

さらに、みょうばん湯の里さんの公式サイトにある歴史の解説を読むと、1725年に脇儀助が明礬製造を再開したとあります。当時は中国産の唐明礬との競争が厳しく、儀助らは幕府に輸入禁止を願い出ました。そして1730年に唐明礬の輸入が禁止され、1734年には明礬会所の設置が認められたそうです。

湯の里さんのルーツも、この脇儀助にあります。日刊工業新聞の記事では、創業1725年、2020年当時の社長が16代目と紹介されていました。また、明礬製造が森藩領で行われ、藩に運上金が納められていたことも分かりました。

予想どおり、明礬は染め物にも使われる産業の素材でした。中国産との競争を乗り越えて国産の明礬が広まった背景には、この土地の噴気と粘土、そして製造に取り組んだ人々の工夫がありました。項目5・6で見た地下のしくみが、江戸時代の産業にもつながっていたと考えると、地質と歴史が一本の線で結ばれます。

ちなみに、別府温泉保養ランドさんの泥湯は、古くは紺屋地獄とも呼ばれたそうです。名前の由来は湯の色とのことですが、染め物と明礬の関係を知ったあとでは、紺屋(染物屋)という言葉にもぐっと親しみが湧きました。

わら葺き小屋と湯けむりの並び方に“断層”の気配を感じた

湯の里さんを出て、湯の花小屋が並ぶ斜面を歩きました。三角屋根の小屋、別府石の石垣、その間から立ちのぼる白い湯けむり。眺めているうちに、湯けむりが斜面のどこからでも出ているわけではなく、ある範囲に集まっているように見えてきました。

ここまで分析書や地下のしくみを調べてきたので、「この並び方には地質の理由があるのでは」と考えました。蒸気の通り道になる地中の割れ目、つまり断層のような構造に沿って、噴気が集中しているのではないかと予想したのです。

文化庁の「別府の湯けむり・温泉地景観」を読むと、湯けむりは市全体で約400か所あり、その約半数が扇状地の北縁を走る断層上に位置し、鉄輪地区・明礬地区に集中していると書かれていました。この景観は2012年9月19日に国の重要文化的景観に選定されています。同じページには、地下の温泉水は雨水を起源とし、入れ替わりには平均約50年かかるとも紹介されていました。

さらに、大分県の地質資料には、昭和初期には明礬を含む8地区で温泉が自然に湧き出しており、北縁の鉄輪断層などに沿って湧出していたと考えられる、と書かれていました。

湯けむりの並び方に感じた気配は、どうやら的外れではなかったようです。噴気の多い場所を選んで建てられた湯の花小屋は、言いかえれば地下の“通り道”を地上に写した目印のようにも見えます。景観そのものが、断層と蒸気の地図になっている。そう思って眺めると、わら葺き屋根の並びがぐっと意味のあるものに見えてきました。そして、今日浸かったお湯も、何十年も前に山に降った雨が旅をしてきたものかもしれない。そんな想像まで膨らみました。

地獄蒸しプリンをほおばりながら、噴気の“三つの使い道”に気づいた

湯上がりの楽しみは、岡本屋売店さんの地獄蒸しプリンです。カラメルはほろ苦く、卵の味がしっかり感じられました。湯の里さんでも温泉の熱で作った玉子やプリンが売られていて、同じ土地の噴気が食べ物にも使われていることに改めて感心しました。

噴気で蒸すことで熱がじっくり伝わり、なめらかに仕上がるのかなと想像しました。温泉好きとしては、硫黄の香りがほんのり移っているのでは、という期待も少しありました。

岡本屋売店さんの公式サイトによると、地獄蒸しプリンは1988年から続く名物で、温泉の噴気を利用して一つずつ手作りされています。ほろ苦いカラメルと濃厚な味わいが特徴です。また、岡本屋旅館さんの地獄蒸し料理の紹介では、明礬の噴気が食材に独特の風味を添えるとも説明されていました。ただし、プリンのなめらかさが噴気の性質によるものか、蒸し方などの工夫によるものかは分かりませんでした。

湯の里さんにも、温泉蒸しの玉子やトウモロコシなどを味わえる「湯庵」があります。施設の公式案内を読むと、噴気だけで蒸し上げるという調理方法が紹介されていました。

振り返ると、明礬の噴気は地下で地下水を温めて酸性のお湯をつくり、小屋の中では青粘土と出会って湯の花を育て、蒸し釜ではプリンを蒸しています。入浴、湯の花、食。一つの土地から生まれる噴気が、三つの形で暮らしに生かされていることを知りました。

分析書一枚から始まった興味が、最後はスプーン一杯のプリンにまでつながりました。

ゆめにゃん

乳白色の湯に浸かり、湯けむりの里を歩き、ほろ苦いプリンを頬張る。
次の休みは、明礬温泉で「大地が育んだ恵み」を五感で味わう旅に出かけませんか?

乳白色の硫黄泉と湯の色の謎

明礬温泉を象徴する乳白色のにごり湯。硫黄の香りと白く染まった湯面は、この温泉地ならではの印象的な特徴です。源泉では淡く濁っていたお湯が、浴槽で白さを増すこともあり、湯の色が生まれる過程にも興味が広がります。

酸性温泉に秘められた泉質の個性

明礬温泉には、強い酸性を示す源泉があります。なかにはpH2台でありながら「単純温泉」に分類されるお湯もあり、泉質名と成分の関係を知る面白さがあります。水素イオンや硫酸イオンなど、温泉分析書の数字にも独特の個性が表れています。

温泉噴気が生み出す湯けむりの里

山の斜面から白い湯けむりが立ちのぼる明礬温泉。地下から上昇する蒸気は、温泉の成り立ちや周辺の地質と深く関わっています。噴気が集まる場所には地下の割れ目や断層との関係も考えられ、風景そのものに大地の活動が感じられます。

湯の花小屋に受け継がれる伝統技術

三角屋根のわら葺き小屋が並ぶ風景は、明礬温泉を代表する魅力のひとつ。小屋の内部では、温泉の噴気と青粘土を利用して湯の花の結晶が育てられています。江戸時代から続く製造技術には、自然の恵みを生かしてきた人々の知恵が息づいています。

源泉と泉質から見える別府八湯の奥深さ

別府八湯のひとつである明礬温泉は、酸性泉や硫黄泉など、個性的なお湯が集まる地域です。同じ別府でも鉄輪や海沿いの温泉とは泉質や湯の色に違いがあり、その背景には地下を流れる熱水や蒸気のしくみが関係していると考えられています。

温泉マニアあるある! – 明礬温泉考察編

ゆめにゃん

マニアの人はこうなっちゃう…かも!?

乳白色のお湯を見て色見本を始める

湯船いっぱいに広がる乳白色のお湯を前に、マニアは「これはミルキーホワイト……いや、少し青みがあるな」と真剣な表情。友達が「普通に白でいいじゃん」と言っても、「光の当たり方で表情が変わるんだよ!」と譲りません。気づけば入浴より先に、頭の中で温泉専用の色見本帳を作り始めています。

「単純温泉」の文字に二度見する

温泉分析書に「pH2.4」「酸性・含硫黄-単純温泉」の文字を見つけたマニア。「この酸っぱそうな数字で単純!?」と思わず二度見します。友達が「単純なら分かりやすいね」と笑うと、「いや、そこが単純じゃないんだよ!」と説明開始。お湯に浸かる前から、泉質名だけでひと講義が始まりそうです。

湯口とオーバーフローを交互に観察する

白く濁ったお湯を楽しみながら、マニアの視線は湯口と浴槽の縁を行ったり来たり。「入ってくるお湯はどう見える?」「あふれる湯の色は?」と、静かに観察を続けます。友達が「そんなに見て何が分かるの?」と尋ねると、「分からないから面白いんだよ!」と満面の笑み。湯船がいつの間にか観察教室になっています。

硫黄の香りに到着を実感する

明礬の坂道を進み、ふわりと硫黄の香りが漂ってくると、マニアは思わず「おお、来た来た!」と声を弾ませます。友達が「まだ温泉に入ってないよ?」と言っても、「もう温泉旅は始まってるんだよ!」とドヤ顔。湯けむりを眺めながら深くうなずく姿は、まるで長年の友人との再会を喜んでいるようです。

湯の花小屋を見て収穫を気にする

わら葺きの三角屋根が並ぶ風景を見て、マニアは「この下で湯の花が育ってるのか……」と感慨深げ。友達が「中にお風呂があるの?」と尋ねると、「いや、ここは結晶を育てる小屋なんだよ!」と嬉しそうに説明します。さらに「今日は何日目くらいだろう」と想像を膨らませ、気分はすっかり湯の花農家です。

湯けむりの並びから断層を探す

斜面から立ちのぼる湯けむりを眺めながら、マニアは「あの辺りに地下の通り道があるのかな」と地形を観察。友達が「きれいな景色だね」と写真を撮る横で、「この噴気の並び方、気になるなぁ」と腕組みを始めます。温泉街を散歩しているはずなのに、頭の中ではいつの間にか地質調査が始まっているのです。

白い湯の花と白いにごりを比べたがる

湯の花小屋の白い結晶と、浴槽の乳白色のお湯。どちらも白いと知ったマニアは、「でも同じものとは限らないんだよな……」と考え込みます。友達が「白いものは白いでいいじゃん」と笑っても、「いや、白にもいろいろ事情があるんだよ!」と熱弁。温泉旅行で、まさか白色の奥深さを語ることになるとは思いませんでした。

分析書の数字でアルミ王になりかける

温泉分析書を眺めていたマニアが、アルミニウムイオンの当量比19.19%を発見。「明礬だけにアルミニウムか……これは面白い!」とひとり興奮します。友達が「そんな数字まで見るの?」と驚くと、「名前と成分がつながるなんてロマンだろ!」と力説。本人はすっかりアルミ王の気分ですが、まだ本当の主役には気づいていません。

プリンを食べながら噴気を語り出す

岡本屋売店の地獄蒸しプリンをひと口食べて、「このほろ苦さがたまらない!」とご満悦のマニア。ところが次の瞬間、「そういえば、この噴気は湯の花づくりにも使われてるんだよな」と考察を再開します。友達が「今はプリンを楽しもうよ」と笑っても、「これも温泉文化なんだよ!」と真顔。スプーンを握ったまま、話は再び地下へ潜っていきます。

わずかな鉄も見逃さず鉄人になる

湯船で感じたキュッとした湯ざわりが気になり、湯上がりに再び温泉分析書を眺めるマニア。「アルミニウムにメタけい酸……やはり鉄もいたか」とひとり納得します。わずかな鉄分も見逃さないその姿に、まわりからは”鉄人”とあだ名されてしまうのです。

管理人

管理人いじりですね…
そう呼ばれるのも悪くない!

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この記事を書いた人

温泉巡り歴15年。
トロトロのお湯と硫黄の香りが大好物。
なのに他の泉質にもすぐハマってしまう。
休日は山奥の秘湯へ直行。
そして、猫が好き。

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