山あいに3軒の宿が並び、それぞれが異なる自家源泉を持つ蓬平温泉。
とろみのある湯、湯口に残る硫黄の香り、アブラ臭、そして肌につく細かな泡。
同じ温泉地をめぐっているのに、湯に入るたびに違う表情が現れるのが印象的でした。
「この違いは、どこから生まれるのだろう?」――そんな興味から、分析書や公開資料を手がかりに一つずつ調べてみました。
- pH9.3ととろみの不思議
低張性の湯なのに、なぜこれほどとろみを感じたのか気になりました。 - 湯口だけに残る硫黄の香り
浴槽では穏やかな香りが、湯口でははっきり感じられた理由を探りました。 - 三軒三様の源泉を読み比べる
同じ温泉地なのに異なる泉質。三軒の分析書の違いに注目しました。 - 肌についた細かな泡の正体
炭酸泉ではないのに現れた細かな泡は何なのか、資料から考えてみました。 - 湯の華と伝説の「白い泉」
湯船で見つけた白い粒から、龍神伝説に残る「白い泉」が気になりました。

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ゆめにゃん猫は入れないからフィクションにゃ…


蓬平温泉レビューと注目ポイント考察
分析書の「pH9.3」と「低張性」から読む、蓬平温泉のとろみ
和泉屋さんの脱衣所で、入浴前にまず分析書の掲示を読みました。源泉名は「和泉屋3号井」、泉質はアルカリ性単純硫黄冷鉱泉、pHは9.3。泉質名のうしろには「低張性」の文字も並んでいます。「単純」で「低張性」なら、肌ざわりも比較的さっぱりしているのかな、と予想して湯船に入りました。
ところが、肩まで沈めた瞬間に予想は崩れました。腕をなでると、湯が肌にまとわりつくようなとろみがあります。湯面を眺めても色はなく、見た目は透明な湯です。
湯上がりに、分析書の用語を一つずつ調べ直しました。日本温泉協会の「温泉分析書の見方」によれば、「低張性」は温泉水1kg中の溶存物質量が8,000mg未満で、体液より濃度が低いことを示す分類です。また、環境省の鉱泉分析法指針を見ると、単純硫黄冷鉱泉は、溶存物質量が1,000mg/kg未満、泉温25℃未満で、総硫黄を一定量以上含む冷鉱泉に分類されます。
一方、日本温泉協会は、pHについて「入浴時の感触や肌触りにも関係する」注目ポイントだと説明しています。和泉屋さんの源泉は、公式サイトにもpH9.3のアルカリ性単純硫黄冷鉱泉と記載されています。
どうやら私は、「溶けている成分の量が少ない=さっぱりした湯ざわり」と単純に想像していたようです。低張性はあくまで浸透圧の分類であって、肌で感じるとろみそのものを表す言葉ではありません。pH9.3というアルカリ性も、あの独特の感触に関係する要素の一つなのかもしれません。
総硫黄の内訳から考える、蓬平温泉で湯口が香った理由
硫黄泉の分析書を見るとき、私が必ず確認するのが総硫黄の内訳です。環境省の鉱泉分析法指針では、総硫黄は硫化水素イオン(HS⁻)、チオ硫酸イオン(S₂O₃²⁻)、遊離硫化水素(H₂S)に含まれる硫黄の合計とされています。硫黄泉に分類されるには、その総量が1kgあたり2mg以上必要です。蓬平温泉はpH9.3。それなら遊離硫化水素よりもイオンの形で存在する割合が大きく、香りはそれほど強くないかも、と予想しました。
浴室に入ると、予想どおり浴槽の上では強い香りはありませんでした。ところが湯口に顔を近づけると、しっかりゆで卵のような香りがします。同じ湯なのに、湯口と浴槽で香りが違うのはなぜなのか。
湯上がりに調べると、Chem-Stationの硫黄泉とpHについての解説では、硫化水素が水素イオンを手放す境目となるpKaは7前後で、pHが高くなるほど硫化水素イオン(HS⁻)の割合が大きくなると説明されていました。pH9.3なら、遊離硫化水素(H₂S)は硫化水素イオンよりかなり少なくなると考えられます。
さらに環境省の硫化水素中毒事故防止ガイドラインにも、アルカリ性や弱アルカリ性の硫黄泉では硫化水素はほとんど含まれず、硫化水素イオンやチオ硫酸イオンが主体になるとあります。一方で、アルカリ性の硫黄泉でも、源泉から浴室までの間に硫化水素が発生し、浴室の温泉注入口などで検出された事例が紹介されていました。
予想は半分当たり、半分は新しい発見でした。湯口から出たばかりの湯では、源泉から浴室までの途中で生じた硫化水素がわずかに放出され、香りを感じた可能性もありそうです。一方、浴槽では湯口から離れ、空気と触れる時間も長くなるため、香りの感じ方が変わったのかもしれません。
湯口と浴槽で感じた香りの差は、同じ温泉でも、湯がたどってきた過程や時間によって表情が変わることを教えてくれたように思いました。
福引屋のしじみ色とアブラ臭|分析書の「知覚的試験」と東山油田を結ぶ
福引屋さんでは、入浴前に分析書の「知覚的試験」の欄を探しました。色や濁り、匂いなどを、試験者が自分の感覚で確かめた記録です。事前に口コミで、濁りがありアブラ臭のする個性的な湯だと読んでいたので、強い個性を想像していました。
浴室では、まず湯口と浴槽の色を見比べました。私の目には、湯口から落ちる湯より、浴槽にたまった湯の方がわずかに濁って見えます。湯面に顔を近づけると、機械油や粘土を思わせるような香りも感じました。
湯上がりに日本温泉協会の「温泉分析書の見方」を読み返すと、知覚的試験は湧出地だけでなく、試験室に持ち帰った温泉水についても行われ、両者を比べることで時間経過による変化を見ることができるとありました。匂いの表現には「石油臭」や「鉱物油臭」という言葉もあります。私が感じた「アブラ臭」のような特徴も、温泉分析では観察対象になるわけです。
そこで気になったのが、長岡の石油の歴史でした。長岡市の資料によると、東山油田では1888年に掘削が始まり、明治後期には長岡の産業を支える油田となりました。さらに新潟県の蓬平地すべりに関する資料を見ると、蓬平は新潟県内でも大規模な地質構造である「東山背斜」の西部に位置するとされています。
それなら、福引屋さんで感じたあの香りにも、この土地の地質が何か関係しているのでしょうか。ただ、東山油田と同じ石油成分が温泉の香りの原因だと確認できたわけではありません。現時点では、東山背斜という共通の地質を知って、あのアブラ臭から油田を連想した、というところまでです。
浴槽の方がわずかに濁って見えたのも、時間の経過や空気との接触によって何らかの変化が起きたのかもしれません。分析書の「湧出地」と「試験室」の知覚的試験に違いがあれば、その変化を考える手がかりになりそうです。
3軒の分析書を並べて見えた違い|「重炭酸ソーダ泉」と現在の泉質名
蓬平温泉の3軒は、それぞれ自家源泉を持っています。湯めぐりの楽しみは、分析書を並べて違いを読めることです。和泉屋さんはアルカリ性単純硫黄冷鉱泉、福引屋さんはアルカリ性の単純硫黄泉で、どちらもpH9.3。よもやま舘さんも同じ系統だろう、と思っていました。
ところが、長岡観光ナビのよもやま舘の紹介には「重炭酸ソーダ泉」とあります。露天風呂に入ると肌に細かな泡がつき、とろみは和泉屋さんほど強くありません。私には、先ほどまで入っていた2軒とはずいぶん違う湯に感じられました。
公開情報を見比べると、ゆこゆこの施設情報では自家源泉の炭酸水素塩泉、pH8.7。Yahoo!トラベルの施設情報では「ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉」と表記されています。また、長岡観光ナビによると泉温は18~20℃です。
「重炭酸ソーダ泉」という表記も気になりました。環境省の新旧泉質名対照表を見ると、正式な旧泉質名では「重曹泉」と呼ばれた系統が、現在の「ナトリウム-炭酸水素塩泉」などに対応しています。よもやま舘さんで使われている「重炭酸ソーダ泉」も、炭酸水素塩を特徴とする湯を表した呼び方と考えると、現在の泉質表記とのつながりが見えてきます。
泉質名の読み方も調べ直しました。日本温泉協会の「温泉分析書の見方」によれば、陽イオン・陰イオンそれぞれでミリバル%が最大のものが主成分となり、20%以上の成分も泉質名に加わります。つまり「ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉」なら、陽イオンではナトリウムが中心で、陰イオンでは塩化物イオンと炭酸水素イオンが泉質名に表れるほどの割合を占めていることになります。また、こうした塩類泉に分類されるには、溶存物質量が1kgあたり1,000mg以上必要です。
一方、和泉屋さんと福引屋さんは「単純硫黄泉」の仲間です。泉質区分だけを比べても、よもやま舘さんは2軒とは成分構成の違う湯であることが分かります。とろみの強さと、湯に溶けている成分の量は単純には比例しない――そんなことを、一つの温泉地で実感できるのも面白いところです。
そして、塩化物イオンと炭酸水素イオンを特徴とする源泉が、単純硫黄泉のすぐ近くにあるのはなぜなのか。その興味は、次の「泡」の話につながっていきました。
よもやま舘の泡は炭酸ガス?分析書と天然ガスから考える
よもやま舘さんの露天風呂に入って数分、腕に細かな泡がついているのに気づきました。指でなでると、ぷつぷつと離れていきます。Yahoo!トラベルの施設ページの口コミにも、炭酸泉のように泡がつくという声がありました。泡といえば炭酸ガス。分析書の遊離二酸化炭素の欄に、それなりの数字があるのでは、と予想しました。
入浴後に資料を読み返すと、予想と少し食い違う点が出てきました。この源泉のpHは8.7とされています。日本温泉協会の温泉分析書の解説を手がかりに炭酸成分について調べると、アルカリ性では二酸化炭素そのものより、炭酸水素イオンなどの形で存在する割合が大きくなります。pH8.7という数字を見る限り、単純に「炭酸ガスが多いから泡がついた」と決めつけることはできなさそうです。
では、あの泡は何だったのか。候補を考えていて気になったのが温泉付随ガスです。環境省のメタン濃度測定手法マニュアルによると、温泉の採取に伴って発生するガスには、メタン、二酸化炭素、窒素などがあります。
さらに調べると、新潟県は天然ガスの生産量が全国1位で、長岡周辺には国内最大級の南長岡ガス田もあります。そこで「温泉に伴う何らかのガスが、あの泡に関係しているのだろうか」と考えました。
一方、新潟県内の温泉水と付随ガスを調べた研究では、調査した温泉水に化石海水を起源とするものが確認されています。ただし、この研究に蓬平温泉は含まれていません。よもやま舘さんの湯に塩化物イオンが含まれているからといって、それだけで化石海水由来とは判断できないようです。
もちろん、浴槽内の吐出口などで空気が混ざり、その泡が肌についた可能性もあります。現時点では、あの細かな泡の正体までは分かりませんでした。
次に訪れたら、泡が湯の吐出口付近だけにつくのか、それとも浴槽のどこでも同じなのかを観察してみたいところです。そして分析書の遊離二酸化炭素などの数値も、改めてじっくり確認してみたいと思いました。
オーバーフローの少ない浴槽で考えた、蓬平温泉の湧出量と加温・循環の掲示
湯船に浸かりながら、私はいつも浴槽の縁を見ます。湯があふれて洗い場へ流れていく「オーバーフロー」があるかどうかも、湯使いを想像する手がかりの一つだからです。和泉屋さんの浴槽では、私が入ったときには縁から湯があふれる様子はほとんどなく、壁には湯の吸い込み口らしきものも見えました。循環式なのかな、と予想し、その理由が気になりました。
脱衣所の掲示を見直すと、加温や循環についての記載があります。環境省による温泉法施行規則の改正では、温泉を加温したり、循環・ろ過したりして公共の浴用に利用する場合、その旨と理由を掲示することが定められています。和泉屋さんの公式サイトにも、源泉温度16.5℃のアルカリ性単純硫黄冷鉱泉で、温泉方式は「循環ろ過方式」、大浴場などでは塩素消毒を行っていることが明記されています。
では、蓬平温泉にはどれほどの湯が湧いているのでしょうか。新潟県の「温泉利用状況報告書」を見ると、蓬平温泉には3本の源泉があり、湧出量は自噴が毎分27L、動力揚湯が毎分148L。合わせると毎分175Lとなっています。同じ資料には宿泊施設3軒、収容定員397人とも記載されています。
日本温泉協会の「温泉分析書の見方」には、かつて「毎分1Lの温泉で入浴客1人」といわれたこともあったと紹介されています。ただし、これは現在の浴槽運用を決める基準ではなく、宿泊客全員が同時に入浴するわけでもありません。温泉地全体の湧出量を宿の収容人数で単純に割って、循環の理由を説明することはできなさそうです。
それでも、数字を見て改めて気づいたことがありました。和泉屋さんの源泉は16.5℃の冷鉱泉です。そのままでは浴用の温度にならないため、実際に入浴できる湯にするには加温が必要になります。さらに和泉屋さんは公式サイトで、長湯を楽しめるよう湯温を低めにしていると案内しています。
オーバーフローの少なさだけで湯の新鮮さや投入量を判断することはできません。それでも、浴槽を眺め、掲示を読み、源泉温度や湧出量を調べていくと、「なぜこの宿ではこの湯使いなのだろう」と考える材料が少しずつ増えていきました。循環や加温という表示も、温泉の個性を知るための大切な情報の一つなのだと思います。
掲示の「塩素消毒」とpH9.3の関係|アルカリ性温泉ならではの衛生管理
和泉屋さんは公式サイトの温泉ページで、大浴場と客室露天風呂の湯をレジオネラ対策で塩素消毒していると明記しています。湯に浸かりながら塩素の匂いを探してみましたが、私にはほとんど気になりませんでした。そこでふと、pH9.3の湯では塩素の効き方も違うのかもしれないと思いました。
湯上がりに調べると、厚生労働省のレジオネラ症防止対策では、アルカリ性に傾くほど、殺菌力の強い次亜塩素酸の割合が減り、塩素消毒に必要な時間が長くなると説明されています。pH9.5でも塩素系薬剤が効かないわけではなく、遊離残留塩素濃度を維持して接触時間を長くするなどの対応が挙げられていました。
また、三重県保健環境研究所の資料では、次亜塩素酸ナトリウムはpHの影響を受けやすい一方、モノクロラミンはその影響が比較的小さく、アルカリ性の温泉浴用水でも消毒効果を維持できることが紹介されています。
最初に感じた「pH9.3なら、塩素消毒のしかたにも何か違いがあるのかもしれない」という予想は、方向としては当たっていたようです。ただし、和泉屋さんが実際にどのような濃度や接触時間で管理しているのかまでは分かりません。
厚生労働省の衛生管理要領にも、温泉水で塩素系薬剤を使用する場合は、pHや温泉成分との相互作用を考慮する必要があるとされています。浴槽からは見えないところでも、泉質に合わせた衛生管理が必要なのだと知りました。
分析書のpHは、湯ざわりを考えるだけの数字ではありません。温泉を安全に提供する側にとっても、大切な数字なのだろうと思いました。
分析年月日から考える中越地震と泉質変化|蓬平温泉の湯は「濃く」なった?
分析書を読むとき、意外と見落としがちなのが分析年月日です。日本温泉協会の「温泉分析書の見方」には、分析書の内容は調査した時点の測定値であり、常にその値であることを示すものではないとあります。また、環境省の温泉法改正の資料によると、2007年の法改正によって温泉成分の定期的な分析が義務づけられ、10年ごとに再分析する仕組みになりました。
この日付が気になったのは、湯上がりに宿の情報を読んだからです。じゃらんの和泉屋さんの口コミへの宿側の返信には、中越大震災後、「温泉が濃くなり、つるつるすべすべ感が増した」という感想をもらうことが増えたとあります。また、楽天トラベルのよもやま舘さんの温泉紹介にも、「地震後に、より一層濃くなった」と記載されています。
最初は、震災後の改修で浴槽や配管などが変わり、湯の感じ方にも違いが出た可能性があるのではないか、と予想しました。けれど、別々の源泉を使う2軒が、ともに地震後の湯の変化について言及しているのが気になります。
気象庁の記録によると、新潟県中越地震は2004年10月23日に発生したM6.8の地震で、川口町では最大震度7を観測しました。日本地震学会の解説では、地震の揺れや地盤の変形によって地下水や温泉水の水圧、地盤の水の通りやすさが変化し、その結果として湧出量、水温、水質などが変わることがあると説明されています。
それなら、蓬平温泉でも地下の水の通り道に何らかの変化が起きた可能性はあるのでしょうか。浅い地下水との混ざり方が変わったのか、地下から上がってくる水の割合が変わったのか。そこまでは今回の資料だけでは分かりません。
手がかりになりそうなのが、震災前後の温泉分析書です。成分総計や各成分、pH、湧出量などを並べれば、本当に数値として変化があったのかを考える材料になりそうです。
10年ごとの再分析は、現在の温泉成分を利用者に知らせるための仕組みですが、古い分析書が残っていれば、結果として温泉の変化をたどる資料にもなります。震災前の分析書を見せてもらえる機会があれば、ぜひ現在のものと並べてみたいと思いました。
湯船に舞う湯の華と龍神伝説の「白い泉」|高龍神社と蓬平温泉の源泉
和泉屋さんの湯船でじっとしていると、湯の中を小さな白い粒がふわりと横切りました。湯の華でしょうか。循環ろ過の浴槽でも見られるのか、と少しうれしくなりました。長岡観光ナビの蓬平温泉特集にも、蓬平の単純硫黄泉には「時折ふわっと湯の華が咲く」と紹介されています。
その白い粒を見て思い出したのが、同じ特集に登場する源泉伝説です。傷を負った南朝方の武将の家臣が龍神から霊泉の場所を教えられ、そこへ行くと「白い泉」が湧いていたと伝えられています。けれど、私が入った現在の湯は無色透明です。「白い泉」という表現は、昔の湯が白く濁って見えたことと何か関係があるのだろうか、と想像しました。
湯上がりに資料を確かめました。長岡市公式サイトの髙龍神社の紹介では、龍神に助けられたという伝説を明徳元年(1390年)とし、現在の場所に社殿が建立されたのは大正9年(1920年)としています。また、にいがた観光ナビの高龍神社の紹介によると、御祭神の高龗大神は水を司る龍神です。
泉の色について調べると、日本温泉協会の「温泉の色」には、硫黄泉では硫化水素が酸化する過程で生じた硫黄化合物の細かな粒子によって、白く濁って見えることがあると書かれていました。
もちろん、600年以上前の伝説に登場する「白い泉」が、実際に硫黄によって白濁していたのかは分かりません。当時と現在で源泉の状態や成分が同じだったとも限りません。それでも、硫黄泉には白く見えることがあると知ると、伝説の「白い泉」という描写が少し気になってきます。
湯船を舞っていた白い粒と、600年以上語り継がれてきた「白い泉」。直接つながるものではないとしても、温泉好きとしてはつい重ねて想像してしまいました。湯上がりに118段の石段を上り、龍神様に手を合わせる理由が一つ増えた気がします。
冷たい源泉と150年の歩み|蓬平温泉の湯治宿と雪国の食卓
分析書の泉温欄にある「16.5℃」という数字を見ながら、ふと思いました。現在のこの源泉は、そのままでは浴用の温度にならず、加温して使われています。山深い雪国で、昔の宿はどうやって湯と食を整えていたのだろう。料理にも、土地ならではの保存の知恵が詰まっているのではないかと想像しました。
福引屋さんの公式サイトによると、初代・諏訪雲八が明治2年(1869年)に湯治宿「蓬莱屋」として商いを始めました。長岡観光ナビの蓬平温泉特集では、和泉屋さんの話として、かつては毎年6mほど雪が積もり、3月末に除雪車が来るまで冬は休業していたことが紹介されています。昭和61年(1986年)に現在の場所へ移ったのも、通年営業できる頑丈な建物を造りたいという思いがあってのことだったそうです。
食についても、同じ特集に手がかりがありました。よもやま舘さんでは、春に採れた山菜を丁寧に下処理し、その日のうちに急速冷凍することで、一年を通して料理に使っているそうです。福引屋さんでは、山古志の鯉料理や、河井継之助の好物とされる長岡の「桜飯」が提供されたこともあるといいます。桜飯は、大根の味噌漬けを細かく刻んでご飯に炊き込んだもの。保存した食材を生かした一品です。
周辺の食材では、長岡市が紹介する山古志の「かぐらなんばん」も気になります。戦国時代ごろに日本へ渡来したといわれ、山古志では昔から自家用野菜として栽培されてきた、肉厚で辛みのある唐辛子です。
夕食に出た山菜の小鉢は、旬の春から離れた季節なのに、香りがしっかり残っていました。実際に一年を通して山菜を提供するための工夫を知ると、あの一皿の見え方も少し変わってきます。
現在の分析書に記された「16.5℃」という数字と、かつて6mもの雪に閉ざされたという土地の記憶。直接結びつけることはできませんが、湯を整え、食材を保存しながら客を迎えてきた雪国の温泉宿の歩みを想像するきっかけになりました。150年以上続く蓬平温泉の味わいは、湯そのものだけでなく、こうした土地で積み重ねられてきた暮らしの工夫にもあるのかもしれません。



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マニアの人はこうなっちゃう…かも!?
- 三軒とも同じ湯だと思って油断する
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蓬平温泉に宿は3軒。「同じ山あいの温泉地だし、まあ似たような湯でしょ」と軽い気持ちで入り始めます。ところが、とろみのある硫黄泉があれば、アブラ臭を感じる湯もあり、泡がつく湯まで登場。「待て待て、全然違うじゃん!」と、急に全軒制覇したくなります。
- pH9.3を見た瞬間に腕をなでる
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分析書に「pH9.3」の文字を発見すると、入浴前から期待値が上昇。湯船に入った瞬間、腕をスリスリして「おお……」と湯ざわりを確認します。同行者が景色を眺めている横で、一人だけ自分の前腕に夢中。「数値と体感を照合してるんだよ」と説明しても、たぶん理解されません。
- 湯口にだけ鼻を近づけ始める
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浴槽では香りが穏やかなのに、湯口へ近づくとふわっと硫黄の香り。「やっぱりここだ!」と嬉しそうに鼻を近づけます。同行者から見れば完全に不審な行動ですが、本人は真剣そのもの。浴槽、湯口、もう一度浴槽と移動しながら、香りの違いを確認してしまいます。
- アブラ臭を感じると語彙がおかしくなる
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福引屋の湯で独特の香りを感じると、「機械油っぽい……いや、粘土っぽさもある」と突然ソムリエ化。普通なら「ちょっと変わった匂いだね」で終わるところを、何度も鼻を近づけて表現を探します。いい言葉が見つかると、「これだ!」と湯船の中で一人うれしくなります。
- 白い粒を見つけると追跡を始める
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透明な湯の中を白い粒がふわり。「湯の華か!?」と発見した瞬間、視線は完全にロックオン。流れていく一粒を目で追いながら、循環ろ過でも残るんだなあと感心します。湯の華ひとつで数分楽しめるので、同行者から「さっきから何見てるの?」と聞かれがちです。
- オーバーフローがないと浴槽の壁を見る
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浴槽の縁から湯があふれていないと、今度は壁を観察。「おっ、これは吸い込み口かな?」と循環設備らしきものを探し始めます。そのあと脱衣所の掲示で「循環ろ過方式」を見つけると、「やっぱりな」とドヤ顔。誰とも勝負していないのに、なぜか勝った気分になります。
- 16.5℃を見て冬を想像する
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分析書で源泉温度16.5℃を確認すると、「これ、冬にそのまま入ったら……」と余計な想像を始めます。しかも蓬平は雪深い山里。昔の宿はどうやって湯を沸かしていたのか、燃料はどうしたのかと妄想が拡大し、気づけば温泉から雪国の暮らしにまで興味が飛んでいます。
- 龍神伝説まで泉質と結びつけたくなる
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「白い泉を龍神が教えた」という伝説を知ると、普通なら「へえ、面白い」で終了。ところがマニアは、湯船で見た白い湯の華を思い出してしまいます。「昔の湯も白く見えたことがあったのかな……」と想像し、湯上がりには高龍神社へ。「本日、お邪魔しております」と妙に律儀に参拝します。
- 地震前の分析書を探したくなる
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「中越地震のあと、湯が濃くなった」という話を知った瞬間、気になるのは震災前の分析書。「昔の分析書が残っていれば比較できるじゃん!」と興奮します。一瞬だけ古い資料を本気で探そうとしますが、「いや、今日は温泉旅行だった」と我に返る。それでも頭の片隅にはずっと残っています。
- 炭酸泉でもないのに泡を追い始める
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よもやま舘の湯で腕に細かな泡がつくと、「おおっ、泡だ!」と一気にテンションが上がります。炭酸泉なのかと思えば、調べるほど単純ではなさそう。湯の吐出口を見たり、腕につく場所を変えたり、pHや分析書まで確認し始めます。それでも正体が分からないと、「炭酸泉でもないのに泡がつくなんて……やっぱり温泉って奥が深いよな」となぜか満足。まわりからは”泡ジャンキー”とあだ名されてしまうのです。



管理人いじりですね…
そう呼ばれるのも悪くない!









