甲府盆地の東端、塩ノ山の麓に湯宿が点在する塩山温泉は、600年以上の歴史を伝える小さな温泉地です。
源泉温度23℃台の冷鉱泉に、pH10.0という高いアルカリ性。数値を追うだけでも、その個性がくっきりと浮かび上がります。
JR塩山駅から徒歩圏内の静かな町並みには、昔ながらの湯宿が今も残ります。
加温した浴槽と、冷たい源泉をそのまま張った浴槽。その温度差まで含めて味わうのが、塩山温泉ならではの一場面です。
- 塩山温泉・井筒屋別館の体験記
実際に日帰り入浴した当日の流れや浴室の様子を紹介します - 塩山温泉の泉質・pH・源泉温度
温泉分析書からpH10.0・源泉23.6℃の特徴を読み解きます - 冷鉱泉の源泉槽と加温槽を体験
非加温の源泉槽と約41℃の加温槽を交互に巡った記録です - 源泉掛け流しの湯ざわりと香り
無色澄明の湯色や滑らかな湯ざわり、淡い硫黄系の香りを紹介 - 塩山温泉の日帰り入浴と周辺情報
アクセスや駐車場、周辺の温泉など現地で役立つ情報をまとめます

塩山温泉ってどんなところ? | 4コマ漫画で体験してみる
ゆめにゃん猫は入れないからフィクションにゃ…


塩山温泉 体験記
初夏の日差しが路面を照らす5月下旬、半年ぶりに塩山温泉へ車を走らせました。
今回向かったのは、pH10.0・泉温23.6℃の塩山温泉第2井を使う井筒屋別館さんです。
小さな加温槽の隣には、その何倍もの広さを持つ非加温の源泉槽。
温泉分析書の数字を頭に入れてから湯船へ入り、香り、温度、湯ざわり、オーバーフローまで順番に確かめていきました。
前回の入浴から約半年。23℃台の冷鉱泉へもう一度浸かりたくなり、5月下旬の平日に塩山へ向かいました。住宅街に残る湯宿を訪ね、静かな館内から浴室へ。今回の目的は井筒屋別館さんでの立ち寄り入浴です。
- 半年ぶりに塩山へ向かう
前回訪れてから約半年が経ち、あの冷たい源泉の湯ざわりをもう一度確かめたくなりました。5月下旬の昼前に車を出し、甲府盆地の東側へ。山肌には濃い緑が広がり、塩山駅へ近づくにつれて果樹園と住宅が交互に車窓を流れていきました。 - 住宅街に残る湯宿へ
JR塩山駅の北口側へ回り、細い道路を進むと井筒屋別館の建物が見えてきました。大きな温泉街の入口や派手な看板はありません。民家の並びの中に湯宿が溶け込み、知らずに通ればそのまま通過してしまいそうな静かな一角です。 - 午後1:20に到着
宿の前に着いたのは13時20分頃。玄関で声をかけ、日帰り入浴をお願いしました。駐車場所を尋ねると、道路を挟んだ向かい側のスペースを案内していただきます。車を移動し、タオルと入浴道具を持って再び玄関へ向かいました。 - 静かな館内を浴室へ進む
帳場で受付を済ませると、この時間はほかの利用者がおらず浴室は空いているとのこと。廊下を進み、階段を下りていきます。木造の館内には自分の足音だけが響き、脱衣所へ入る直前、通路の壁に掲げられた温泉分析書の額が目に入りました。
浴室へ直行せず、まず足を止めたのが平成27年分析の温泉分析書です。泉温23.6℃、pH10.0、溶存物質0.167g/kg。さらに炭酸イオンや水酸化物イオン、硫化水素イオンまで並び、浴槽へ入る前から数字を追う時間が始まりました。
- 塩山温泉第2井を確認する
掲示されていた分析書には「塩山温泉第2井」の文字。平成27年9月11日の調査で、湧出地の泉温は23.6℃、測定時の気温は23.0℃です。湧出量の欄には「構造上測定不可・動力揚湯」と記されており、数値そのものは示されていませんでした。 - 目を止めたpH10.0
次に追ったのはpHです。湧出地では10.0、試験室でも9.95。知覚的試験には「無色澄明、苦味、微硫化水素臭」と並びます。透明な冷鉱泉という見た目だけでは読み取れない情報が、一枚の分析書の中に細かく記録されていました。 - 炭酸イオン44.2mgを読む
溶存物質は0.167g/kg。陰イオン欄を見ると、炭酸水素イオン1.5mg/kgに対して炭酸イオンは44.2mg/kgです。さらに水酸化物イオン1.7mg/kg、硫化水素イオン1.8mg/kgという数値も並び、高いpHとあわせて何度も見返しました。 - 泉質名がない温泉という個性
メタケイ酸イオンは40.8mg/kg。判定欄には、総硫黄の項によって温泉法上の温泉に該当する一方、療養泉には該当せず泉質名はないと記されています。「○○泉」という名称ではなく、個々の数値から特徴を読み取る源泉です。分析書を見終え、脱衣所へ入りました。
浴室へ入ると、最初に目へ飛び込んだのは二つの浴槽の大きさの違いでした。手前の加温槽は1~2人ほど。その奥には数倍の広さを持つ源泉槽が広がっています。まず体を洗い、小さな加温槽から入りました。
- 大小逆転した浴槽配置
一般的な浴場なら大きな主浴槽を加温し、小さな浴槽を源泉槽にする配置も珍しくありません。ところがここでは逆です。手前の加温槽はコンパクトで、奥の非加温源泉槽が浴室の大部分を占めています。扉を開けた瞬間、この大小関係へ目が向きました。 - 約41℃の加温槽へ入る
掛け湯を済ませ、まず手前の小浴槽へ。湯温は体感で41℃前後でした。肩まで沈み、湯口から流れ込む湯を眺めます。浴槽は1人なら余裕がありますが、2人入ればかなり近い距離になる大きさ。ここで数分、次の源泉槽へ移る準備をしました。 - 湯口で淡い硫黄系の香り
顔を湯口へ近づけると、ごく淡いタマゴを連想する匂いが鼻先を通りました。分析書にあった「微硫化水素臭」という記載を思い出します。強く浴室内へ広がるタイプではなく、湯口の近くで注意を向けたときに拾える程度でした。 - 無色澄明の滑る湯ざわり
湯色は無色澄明。腕を湯の中で動かすと、水そのものが滑っていくような独特の湯ざわりがあります。濃い濁りや湯の花で主張する源泉ではありません。透明な湯を眺めながら、先ほど読んだpH10.0や炭酸イオンの数字を頭の中に並べました。
加温槽を出たら、次はいよいよ奥の源泉槽です。23.6℃の源泉が加温されずに張られた広い浴槽へ足を入れ、数分後には再び加温槽へ。この二つを5往復し、温度差と湯ざわりを交互に追いました。
- 23℃台の源泉へ足を入れる
加温槽から立ち上がり、隣の大きな浴槽へ足を下ろします。足首を越え、膝、腰と沈むにつれて温度差がはっきりしました。分析書では23.6℃。底のタイルまで見通せる透明な源泉が浴槽いっぱいに張られています。 - 湯口から広がる細かな波紋
源泉槽では湯口から注ぐ流れが水面へ細かな波紋を描いていました。浴槽の縁を越えた源泉は洗い場へ流れ、タイルの上を薄く広がっていきます。加温槽ではなく、この大きな浴槽でオーバーフローを眺める配置が強く記憶に残りました。 - 広い浴槽で源泉に浸かる
手足を伸ばせるほどの広さがあるため、小さな水風呂へ短時間だけ入る感覚とは異なります。首元近くまで沈み、湯口の音を聞きながらしばらく動かずにいました。腕を水中で動かすと、加温槽と同じく滑るような湯ざわりが指先へ伝わりました。 - 加温と源泉を五往復する
数分浸かったら小さな加温槽へ戻り、再び源泉槽へ。この移動を5回繰り返しました。41℃前後と23℃台という明確な温度差。それでも移動距離はわずか数歩です。小さな加温槽と大きな源泉槽という構成だからこそ成立する、井筒屋別館で印象に残った入浴でした。
着替えを済ませた後、もう一度通路の温泉分析書へ戻りました。入浴前には単なる数字だったpH10.0や炭酸イオン44.2mg/kgを、今度は実際の湯ざわりと並べて読み直します。宿へお礼を伝えた後は、次の湯を目指して牧丘方面へ向かいました。
- 湯上がりに数字を読み直す
服を着て廊下へ出ると、再び分析書の前で足が止まりました。pH10.0、CO₃²⁻44.2mg/kg、OH⁻1.7mg/kg、HS⁻1.8mg/kg。入浴前に目で追った数字を、先ほどの滑る湯ざわりや湯口の淡い香りと順番に重ねていきました。 - 大きな源泉槽を振り返る
改めて浴室を振り返ると、加温槽を小さく、非加温の源泉槽を大きく取った配置がやはり目に残ります。23℃台の源泉を浴槽へ張りながら、隣には入浴しやすい温度へ加温した湯を用意する。その状態を日々維持している宿の管理へ、自然と頭が下がりました。 - 宿へお礼を伝えて退館する
帳場へ戻り、入浴のお礼を伝えて玄関を出ました。時計は14時20分頃。滞在は約1時間です。外へ出ると午後の日差しが道路を照らし、建物の中との明暗差で一瞬目を細めました。道路向かいの駐車場へ戻り、次の目的地へ向かいました。 - はやぶさ温泉へ車を走らせる
途中のコンビニへ立ち寄り、ミネラルウォーターを購入して水分補給。カーナビを牧丘方面へ設定し、はやぶさ温泉へ車を走らせました。23℃台の塩山温泉から、今度は40℃を超える高アルカリ性の源泉へ。わずか10分ほどの移動で、まったく異なる温度帯の湯を巡ります。



冷たい源泉に沈み、古い湯宿の路地を抜け、ぶどう畑の向こうへ次の湯を追う。
次の休みは、塩山温泉で「甲州の湯の奥深さ」を五感でたどる旅に出かけませんか?
塩山温泉 – アクセスと基本情報
| 温泉地名 | 塩山温泉 |
|---|---|
| 所在地 | 山梨県甲州市 |
| 入浴施設 | 複数あり 今回は井筒屋別館さんを利用させていただきました |
| 主な泉質 | 温泉法第二条該当泉(総硫黄による規定泉・療養泉の泉質名なし) ※塩山温泉第2井・2015年分析。過去の分析では「単純硫黄冷鉱泉」とされた記録もあります。 pH:10.0前後(塩山温泉第2井:2015年分析pH10.0、2007年分析pH10.1) |
| お湯の特徴 | 塩山温泉第2井は源泉温度23.6℃、pH10.0の冷鉱泉。 無色澄明で、溶存物質は0.167g/kgと少なく、炭酸イオン44.2mg/kg、水酸化物イオン1.7mg/kgなどを含みます。 滑るような独特の湯ざわりも印象に残る、数値にも個性が表れた源泉です。 |
| 香り | 2015年の温泉分析書では「微硫化水素臭」と記録されています。 浴室全体に強い匂いが漂うタイプではなく、今回の入浴では湯口へ顔を近づけた際、ごく淡いタマゴを連想する硫黄系の香りを確認。 透明な湯色との対比も印象的でした。 |
| 雰囲気 | 塩ノ山の南麓、JR塩山駅から徒歩圏内の住宅地に湯宿が点在する小さな温泉郷です。 開湯600年以上と伝わり、向嶽寺の薬湯として湯治客を迎えてきた歴史があります。 巨大な温泉街ではなく、町の日常風景の中に昔ながらの湯宿が残るのが塩山らしさです。 |
| 楽しみ方 | 冷たい源泉と加温浴槽を備える施設では、温度の違いを確かめながら塩山の湯をじっくり観察。 入浴後は塩ノ山の遊歩道や向嶽寺周辺を歩き、甲州名物のほうとう、季節のぶどうや桃、晩秋の枯露柿へ。 勝沼方面まで足を延ばせば、ワイナリー巡りも組み合わせられます。 「温泉+歴史+果実+ワイン」で甲州市を巡るのがおすすめです。 |
| ※源泉や施設によって記載と異なる場合があります。コンディションによって印象は変わる場合があります。 ※掲載している情報は訪問時のものです。最新の情報は公式サイト等で確認をお願いいたします。 | |
- pH10前後の高アルカリ性
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塩山温泉を数値で語るなら、pH10前後という高アルカリ性は外せません。成分量そのものは少ない一方、炭酸イオンや水酸化物イオンなどを含み、透明な湯の中に独特の組成を持つ源泉です。
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塩山温泉には源泉温度23℃台という冷鉱泉があり、加温して浴用に利用されています。施設によっては非加温の源泉槽を設ける例もあり、源泉本来の温度と加温した湯を比べられる点も特徴です。
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塩山温泉第2井では硫化水素イオンなどの硫黄成分が確認されています。2015年分析では総硫黄を根拠に温泉法上の温泉に該当。強い白濁や硫黄臭とは異なる、透明な冷鉱泉という個性があります。
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マニアの人はこうなっちゃう…かも!?
- pH10.0を見た瞬間にニヤつく
-
温泉分析書で「pH10.0」の数字を見つけた瞬間、まだ服すら脱いでいないのに口元が緩みます。同行者が「10だと何がすごいの?」と聞けば、「まあ、入ればわかるよ」と意味深なドヤ顔。浴室へ入る前から、すでに分析書だけで一回楽しんでいます。
- 23.6℃を見て「惜しい!」と言う
-
源泉温度23.6℃を確認すると、「おお、あと1.4℃で低温泉!」となぜか悔しがります。普通なら23℃も25℃も冷たいお湯ですが、こちらにとって25℃の境界線は重要事項。「冷鉱泉か……よし」と、分類を確認しただけで満足げにうなずきます。
- 泉質名なしで逆に興奮する
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分析書に「療養泉には該当せず泉質名はない」と書かれていても、落胆するどころか食いつきます。「待て待て、pH10.0でHS⁻もOH⁻もCO₃²⁻もあるぞ」と成分表へ急接近。立派な泉質名より、妙な数値を見つけたときのほうが滞在時間が延びます。
- 炭酸イオン44.2を二度見する
-
HCO₃⁻が1.5mg/kgなのに、CO₃²⁻は44.2mg/kg。「ほほう……そっちですか」と誰に話しかけるでもなく分析書を二度見します。さらにOH⁻1.7mg/kgを発見すると満足そうにうなずき、同行者から「いつまで数字見てんの?」と急かされます。
- 微硫化水素臭を探して鼻が湯口へ
-
分析書に「微硫化水素臭」とあれば、浴室へ入った瞬間から鼻のセンサーが起動します。浴室では分からなくても諦めず、湯口へそっと顔を近づけてクンクン。「……いる。淡いけどいるぞ」。硫黄を発見しただけなのに、希少生物でも見つけた顔になります。
- 加温槽が小さいだけで宿の思想を読む
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普通なら大きな浴槽を加温しそうなのに、井筒屋別館では小さな浴槽が加温槽、広いほうが23℃台の源泉槽。「なるほど……源泉を主役にしたか」と勝手に設計思想を読み始めます。宿の方はそんな説明を一言もしていないのに、浴槽配置だけで評論が始まります。
- オーバーフローを見て入浴が止まる
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浴槽から源泉があふれ、洗い場へ流れていく光景を発見すると、浸かるより先に目で追ってしまいます。湯口、水面、浴槽の縁、床へ流れる筋までじっくり観察。「おお、流れてる流れてる」。何をしに来たのかと聞かれれば、もちろん入浴です。たぶん。
- 冷たい源泉槽が広いほど喜ぶ
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23℃台の源泉槽へ入れば「冷たっ!」となるのに、浴槽が広いほど顔はニヤニヤ。手足を伸ばして水面の波紋を眺め、数分後には小さな加温槽へ。そしてまた源泉槽へ戻ります。気づけば浴室内を何往復もする、非常に落ち着きのない入浴になっています。
- 入浴後に分析書へ戻ってくる
-
普通なら着替えたら帳場へ向かいますが、ここで終わりません。「さっきの湯ざわり……CO₃²⁻はいくつだった?」と再び分析書の前へ。入浴前に一度読んだはずなのに、今度は体験と数字を照合します。温泉分析書が予習教材から復習教材へ変わる瞬間です。
- 「信玄の隠し湯」で遠征を始める
-
山梨の温泉で「武田信玄の隠し湯」と聞けば、塩山だけでは終われません。「下部もある、中川もある、増富もある……全部行けばいいのでは?」と地図を広げ始めます。気づけば甲斐から丹沢まで追跡する姿に、まわりからは“湯めぐり風林火山”とあだ名されてしまうのです。



管理人いじりですね…
そう呼ばれるのも悪くない!









