秩父の山あいに佇む新木鉱泉は、文政10年創業の歴史を持つ一軒の鉱泉宿です。
源泉は「卵水」と呼ばれる単純硫黄冷鉱泉で、公式掲載の分析値はpH9.4、泉温14.8℃。
加温された浴槽だけでなく、約15℃の源泉そのものに浸かれる小さな浴槽もあります。
静かな宿の中で、冷鉱泉ならではの湯ざわりと硫黄の香りを追いかけました。
- 新木鉱泉の日帰り入浴体験
実際に訪れてわかった浴場の雰囲気や混雑状況、入浴の流れを紹介します。 - 卵水と呼ばれる泉質の特徴
単純硫黄冷鉱泉・pH9.4の泉質や、なめらかな湯ざわりを体験から紹介します。 - 約15℃の源泉風呂を体験
一人用の源泉浴槽で味わった冷たさや硫黄の香り、加温浴槽との違いを紹介します。 - 温泉分析書から見る新木鉱泉
現地の昭和38年分析表と現在の分析値から、泉温やpHなどを読み解きます。 - 新木鉱泉のアクセスと周辺情報
秩父での日帰り湯めぐりに役立つアクセスや、訪問時の周辺情報をまとめます。

新木鉱泉ってどんなところ? | 4コマ漫画で体験してみる
ゆめにゃん猫は入れないからフィクションにゃ…


新木鉱泉 体験記
訪問前夜、私が眺めていたのは新木鉱泉の温泉分析書でした。
そして翌日、現地で待っていたのは、昭和38年の日付が残る手書きの分析表。
加温された「卵水」に浸かったあとは、約15℃の一人用源泉浴槽へ向かいます。
数字を予習してから現地で確かめる、新木鉱泉での一湯を振り返ります。
新木鉱泉へ向かう前夜、公式サイトに掲載された温泉分析書を開きました。単純硫黄冷鉱泉、pH9.4、泉温14.8℃。画面に並ぶ数字を追ううち、翌日は加温浴槽だけでなく、冷たい源泉そのものを確かめたくなりました。
- 画面いっぱいの温泉分析書
前夜、パソコンに新木鉱泉の温泉分析書を表示しました。最初に目へ飛び込んできたのは「単純硫黄冷鉱泉」の文字です。pH9.4、炭酸水素イオン295.6mg/kg、硫化水素イオン6.1mg/kg。数字を上から順番に追い、翌日の浴槽を頭の中に描いていきました。 - 約15℃という源泉温度
泉温の欄には14.8℃。一般的な入浴温度からは大きく離れた、冷鉱泉ならではの数字です。さらに湧出量は毎分8.5L。大量に湧くタイプではありません。画面をスクロールしながら、「この源泉を現地ではどう使っているのだろう」と浴槽の構成が気になってきました。 - 0.599g/kgを読み込む夜
溶存物質は0.599g/kg。陽イオンではナトリウムイオンが大きな割合を占め、メタケイ酸45.5mg/kgなどの数字も並びます。一項目ずつ追っていると、気づけば分析書をかなり長い時間眺めていました。温泉へ行く前から、すでに調査は始まっています。 - 冷鉱泉の入り方を予習
約15℃の源泉をそのまま使う浴槽があることも事前に確認しました。加温浴槽に入ってから源泉浴槽へ移り、また加温浴槽へ戻る――。現地へ着いてもいないのに、頭の中ではすでに浴室を往復しています。翌日の予定を確認して、ようやく画面を閉じました。
8月下旬の日曜日、14時ちょうどに新木鉱泉へ到着しました。受付を済ませて浴場へ向かう途中、足を止めたのが壁に掛けられた古い分析表です。前夜に見た公式掲載の分析書とは、まったく異なる時代の資料が残されていました。
- 午後2時、鉱泉宿へ到着
晴れた空の下を車で走り、新木鉱泉へ着いたのは14時ちょうどでした。緑に囲まれた敷地では蝉の声が響き、建物へ入ると外の音も次第に遠ざかります。受付で日帰り入浴をお願いし、手続きを済ませてから浴場へ続く館内を進みました。 - 額の中に昭和38年
浴場のある建物へ入ったところで、大きな額縁が目に入りました。近づいてみると、中に納められていたのは手書きの鉱泉分析表です。採集日は昭和38年9月3日。経年した紙に墨文字で数値が並び、思わず脱衣所へ向かう足が止まりました。 - pH9.5とヒドロ炭酸
表を追うと、泉温15.5℃、pH9.5、湧水量毎分11.4L、ヒドロ炭酸344ppmなどの記載があります。前夜に確認した公式掲載の分析値では泉温14.8℃、pH9.4。分析年代や方法が異なるため単純比較はできませんが、泉温とpHには近い数字が並んでいました。 - 60年以上前の記録を読む
分析表の下部には、埼玉大学教授の署名と「右のとおり鉱泉であることを証します」という文言も残されています。紙の色、手書きの文字、古い単位表記までじっくり確認。入浴前なのに、ここですでにかなりの時間を使ってしまいました。
脱衣所から浴室へ入ると、湯けむりの向こうに加温された主浴槽がありました。無色澄明の湯へ入り、まず確かめたのは湯ざわりと香り。数字だけだった「卵水」が、ここから実際の温度や手触りを伴った体験へ変わっていきます。
- 湯けむりの向こうの主浴槽
ガラス扉を開けると、浴室には白い湯けむりが漂っていました。日曜日の午後でしたが、訪問時の先客は2人ほど。洗い場で身体を洗ってから浴槽へ向かい、縁に手を添えてゆっくりと加温された湯へ入りました。 - 無色澄明の「卵水」
浴槽の中は無色澄明。照明を受けた水面に湯口からの波紋が広がります。手ですくって指を滑らせると、つるりとなめらかな湯ざわり。公式サイトで見ていた「卵水」という呼び名が、ここで初めて手のひらの感触と結びつきました。 - 湯口で追う硫黄の香り
顔を湯口へ近づけると、卵を連想する控えめな硫黄系の香りが鼻先へ届きました。浴槽全体で強く主張するというより、湯口付近で探すと拾いやすい程度です。無色の湯色、なめらかな手触り、淡い香りを順番に確かめました。 - 流れ方が変わる湯口
私の体感では浴槽は41℃前後。湯口を眺めていると、注がれる量は一定ではありませんでした。勢いよく流れる時間があれば、しばらくすると細い流れへ変化します。詳しい仕組みまでは確認していませんが、限られた源泉を日々扱う宿の管理を意識する場面でした。
主浴槽の隣で存在感を放っていたのが、樽のような形をした一人用の小さな浴槽です。中に入っているのは加温前の源泉。約15℃という数字を前夜から見続けてきましたが、実際に肩まで入ると、その数字が一気に現実味を帯びました。
- 樽型の小さな源泉浴槽
主浴槽の横には、樽を思わせる丸い一人用浴槽が置かれていました。まず手を入れると、指先から腕へ冷たさが走ります。源泉温度は公式掲載値で14.8℃。前夜に分析書で確認した数字が、そのまま手の感覚へ飛び込んできました。 - 肩まで入る約15℃の源泉
加温浴槽から出て、そのまま一人用の源泉浴槽へ。足、腰、肩と順番に沈めるたび、加温浴槽との温度差がはっきりします。そして私の訪問時は、加温された湯より硫黄系の香りを拾いやすく、鼻先でも源泉の個性を追えました。 - 蛇口を開けて源泉を注ぐ
私が利用した際は、手元の蛇口を開くと冷たい源泉が流れ込み、やがて浴槽の縁からオーバーフローしていきました。浴槽から出るときは蛇口を閉めます。なぜこの運用なのか詳しい理由は確認していません。そこは推測せず、最後にキュッと閉めて次の人へ譲りました。 - 温冷を5往復してしまう
源泉浴槽を出たら再び加温浴槽へ。その後また約15℃の源泉へ入り、再び加温浴槽へ戻ります。温度差が大きいため、一往復ごとの違いが明確です。「あと一回」と繰り返しているうち、数えてみれば5往復。新木鉱泉でかなりの時間を使っていました。
加温浴槽と源泉浴槽を何度も往復したあと、脱衣所へ戻りました。水分補給を済ませて館内を出る前に、もう一度向かったのは昭和38年の分析表です。入浴前に見た数字を、今度は直前の湯ざわりや香りと並べながら読み返しました。
- まずはしっかり水分補給
浴室を出て身体の水滴を拭き、服を着て館内へ戻りました。そのまま休憩スペースへ向かい、自動販売機でミネラルウォーターを購入。冷たい水を数回に分けて飲み、ベンチへ腰を下ろします。湯上がりは次へ急がず、水分補給を挟みました。 - もう一度、昭和38年へ
帰る前に、先ほどの分析表の前へ戻りました。pH9.5、泉温15.5℃、ヒドロ炭酸344ppm、総硫黄5.71ppm。入浴前には単なる数字だった項目を、先ほど確かめた湯ざわりや香りと並べながら、もう一度上から読み直しました。 - 古い資料を残す宿への感謝
昭和38年の分析表を現在も館内で見られること自体、温泉を追いかける側にはありがたい資料です。新しい分析値だけでは見えない過去の記録まで確認できました。浴槽を維持しながら、こうした資料も残している宿へ会釈をして玄関へ向かいました。 - 次の目的地は両神温泉
玄関を出ると、8月下旬の日差しがまだ駐車場へ降り注いでいました。車へ戻ってエンジンを始動し、ナビへ次の目的地を入力します。表示されたのは両神温泉。約15℃の卵水と昭和38年の分析表を後にして、そのまま秩父の山道を西へ進みました。



とろりとした卵水に浸かり、歴史ある冷鉱泉の息吹を肌で確かめる。
次の休みは、秩父・新木鉱泉で大地の恵みと時を巡る湯旅に出かけませんか?
新木鉱泉 – アクセスと基本情報
| 温泉地名 | 新木鉱泉 |
|---|---|
| 所在地 | 埼玉県秩父市山田 |
| 入浴施設 | 秩父七湯 御代の湯 新木鉱泉旅館 |
| 主な泉質 | 単純硫黄冷鉱泉(低張性・アルカリ性・冷鉱泉) pH:9.4 ※公式サイト掲載の平成16年現地調査値。現地掲示の昭和38年分析表ではpH9.5。 |
| お湯の特徴 | 源泉温度14.8℃、pH9.4のアルカリ性を示す単純硫黄冷鉱泉。 加温された無色澄明の湯は、つるりとなめらかな湯ざわりが印象的です。 一人用の小さな源泉浴槽では、約15℃の冷鉱泉そのものにも浸かれます。 |
| 香り | 公式掲載の温泉分析書では、湧出地で「硫化水素臭」と記録されています。 訪問時は浴室全体で強く主張する香りではなく、湯口へ近づくと卵を連想する淡い硫黄系の香りを確認。 冷たい源泉浴槽では、その個性を追いやすく感じました。 |
| 雰囲気 | 秩父の緑に囲まれた新木鉱泉は、にぎやかな温泉街を歩くというより、歴史ある一軒の鉱泉宿で静かに湯と向き合う場所。 文政10年創業の建物には長い歳月を重ねた趣があり、札所四番・金昌寺の門前宿として歩んできた歴史も残されています。 |
| 楽しみ方 | まずは加温された「卵水」の湯ざわりや淡い硫黄系の香りを確かめ、約15℃の一人用源泉浴槽にも注目。 湯上がりには秩父名物のみそポテト、豚みそ丼、そばなどを味わい、札所四番・金昌寺や秩父神社へ。 春なら羊山公園、少し足を延ばして長瀞散策を組み合わせるのもおすすめです。 |
| ※源泉や施設によって記載と異なる場合があります。コンディションによって印象は変わる場合があります。 ※掲載している情報は訪問時のものです。最新の情報は公式サイト等で確認をお願いいたします。 | |
- 単純硫黄冷鉱泉の個性
-
新木鉱泉の泉質は、単純硫黄冷鉱泉(低張性・アルカリ性・冷鉱泉)。公式掲載の分析値ではpH9.4、源泉温度14.8℃で、アルカリ性と硫黄、さらに冷鉱泉という組み合わせが特徴です。
あわせて読みたい
塩山温泉の魅力|pH10前後の硫黄冷鉱泉と静かな古湯を訪ねて(山梨県甲州市) 新宿から列車に揺られて約90分、降り立った駅の先には昔ながらの湯宿が静かに待っています。pH10前後の個性豊かな冷鉱泉に浸かり、四季折々の果実や郷土の味を味わう贅… - 「卵水」と呼ばれる源泉
-
新木鉱泉の源泉は、古くから「卵水(たまごみず)」の名で親しまれています。卵の白身を思わせるような、なめらかな感触が名前の由来。約200年の歴史を持つ鉱泉宿を象徴する呼び名です。
あわせて読みたい
横川温泉の魅力|pH10超の硫黄冷鉱泉と静かな山里を訪ねて(茨城県常陸太田市) 阿武隈山系の緑に包まれた常陸太田の奥座敷、横川温泉。賑やかな歓楽街とは異なり、数軒の小さな湯宿が山里に静かに寄り添っています。澄んだお湯に身を沈めれば、pH10… - 約15℃の源泉をそのまま
-
源泉温度は14.8℃と低く、分類上は冷鉱泉です。浴用には加温されていますが、館内には冷たい源泉そのものを楽しめる一人用の小さな浴槽もあり、高温の温泉とは異なる楽しみ方があります。
あわせて読みたい
村杉温泉の魅力|ラドンの湯と五頭山麓の静かな温泉旅(新潟県阿賀野市) 五頭連峰の山懐にたたずむ、新潟県阿賀野市の村杉温泉。約700年の歴史を持つ小さな温泉街には、ラドンを含む無色澄明の湯が湧き、共同浴場や個性豊かな宿が点在していま… - 文政10年創業の鉱泉宿
-
新木鉱泉旅館の創業は江戸時代の文政10年(1827年)。秩父札所四番・金昌寺の門前宿として巡礼者を迎えてきた歴史があり、現在の温泉旅館にもその長い歩みが受け継がれています。
あわせて読みたい
七里川温泉レビュー|硫黄と囲炉裏とお猫様に癒やされる源泉かけ流しの宿(千葉県君津市) 2月上旬、雪予報の空を見上げながら、房総の山深くへ車を走らせました。たどり着いた七里川温泉は、冷鉱泉の源泉を加温して浴槽へ注ぐ、この地域では希少な硫黄香る一軒… - 秩父七湯に数えられる湯
-
新木鉱泉は、秩父地方に古くから伝わる「秩父七湯」のひとつに数えられます。にぎやかな温泉街ではなく、一軒の鉱泉宿を目的に訪ねる場所で、秩父札所巡りや市街地観光とも組み合わせやすい立地です。
あわせて読みたい
別府温泉レビュー| 趣ある共同浴場とご当地グルメを訪ねて、レトロな街を歩く旅(大分県別府市) 別府駅周辺に広がる別府温泉は、市街地のあちこちから湯けむりが立ち上る国内有数の源泉地帯です。唐破風造りの歴史ある建物から街角の共同浴場まで、多彩な浴場が日常…
温泉マニアあるある! – 新木鉱泉レビュー編



マニアの人はこうなっちゃう…かも!?
- 「卵水」の名前だけで反応する
-
新木鉱泉の源泉は、なめらかな湯ざわりから「卵水」と呼ばれています。普通の人なら「かわいい名前だね」で終わるところ、マニアは「卵……硫黄……pH9.4……なるほど」と勝手に分析開始。まだ入浴していないのに、名前だけで湯ざわりを想像しています。
- 約15℃と聞いて目が輝く
-
源泉温度14.8℃と聞けば、「冷たいじゃん!」となるのが普通の反応。ところがマニアは「約15℃!? そのまま入れる浴槽ある!?」と逆方向に興奮します。加温浴槽より先に源泉浴槽の存在を確認し始めたら、すでに新木鉱泉の楽しみ方を理解しています。
- 一人用源泉浴槽を見逃さない
-
主浴槽の隣にある、樽のような形をした小さな源泉浴槽。マニアは入室早々「あれだな」と視線を固定します。約15℃の源泉へ入り、蛇口を開けば冷たい卵水が注がれる。「これこれ!」と一人で納得している姿は、そっと見守ってください。
- 硫黄の香りを湯口で捜索する
-
浴室全体で強い硫黄の香りがしなくても、そこで諦めないのがマニアです。湯口へ静かに接近し、鼻先で香りを確認。「……いるな」と謎の捜査官モードへ突入します。さらに冷たい源泉浴槽でも確認し、「こっちのほうが分かりやすい」と小声で報告します。
- 加温と源泉を往復しすぎる
-
加温された卵水を味わったら、約15℃の源泉浴槽へ。そして再び加温浴槽へ戻ります。「これで最後」と決めたはずなのに、なぜか身体は再び源泉浴槽へ。気づけば何往復もしており、入浴というより浴槽間の定期便みたいになっています。
- 湯口の流量まで観察している
-
加温浴槽でくつろいでいるはずなのに、視線の先はなぜか湯口。勢いよく注がれれば「おっ!」、細い流れになれば「変わったな……」と無言で観察します。毎分8.5Lという湧出量まで予習済みですが、仕組みは分からないので推測で断定しない。そこだけ妙に慎重です。
- 昭和38年の分析表で足が止まる
-
浴場へ向かう途中、昭和38年の手書き分析表を発見。「古い資料だね」で通過できるはずがありません。泉温15.5℃、pH9.5、湧水量11.4L/分……と読み進め、「ヒドロ炭酸344ppm」で完全停止。同行者はすでに脱衣所へ消えています。
- 「ヒドロ炭酸」で急にドヤ顔
-
昭和38年の分析表を見た同行者が「ヒドロ炭酸って何?」と聞いた瞬間がチャンス。「今でいう炭酸水素イオンだね」とドヤ顔で回答します。しかし昨日まで自分も知らなかった可能性については一切触れません。古い温泉分析書は、ときどき謎の専門家を誕生させます。
- 湯上がりに分析表をもう一度読む
-
入浴前に分析表を読んだのだから、普通ならそれで終了。しかし休憩スペースのベンチから昭和38年の分析表が見えれば話は別です。水分補給しながら「さっき入った源泉が15.5℃……」と再読開始。入浴後は数字と実体験が結びつくので、当然もう一度読むのです。
- 「透明」に0.2秒で訂正を入れる
-
温泉分析書を眺めているうちに「無色澄明」という表現が気になり始めます。そして全国の温泉で同行者が「無色透明だね」と言った瞬間――「澄明な!」と早口で訂正。まわりからは“湯めぐり澄明”とあだ名されます。



管理人いじりですね…
そう呼ばれるのも悪くない!









