赤湯温泉を深掘りレビュー! 好山荘の分析書で読み解く源泉の奥深さ(福島県福島市)

湯め活びより赤湯温泉考察編アイキャッチ画像

福島県・土湯峠の山あいに佇む、赤湯温泉の一軒宿「好山荘」。
赤茶色の内湯と乳白色の露天風呂、同じ宿に湧く二つの源泉が、まったく異なる表情を見せてくれました。
なぜ、これほど違う湯が同じ場所から湧いてくるのか。
長い年月、この湯を守り続けてきた人々の歩みにも思いを馳せながら、分析書や資料を手がかりに、その不思議をたどってみました。

赤湯温泉で興味深かったこと
  • 赤い湯と白い湯が生まれる不思議
    同じ宿に湧く2本の源泉。なぜこれほど色も香りも違うのか、気になりました。
  • 赤茶色なのに単純温泉という意外性
    あれほど濃い色をした赤湯が、なぜ単純温泉に分類されるのか。分析書を読み返しました。
  • 白湯の分析書に並ぶ珍しい成分
    アンモニウムやアルミニウムが目立つ陽イオン欄。その顔ぶれに思わず目が留まりました。
  • 自炊湯治を受け継ぐ山の宿の歩み
    昔ながらの自炊棟が残る一軒宿。湯治文化や震災を越えた歴史をたどってみました。
  • 白い硫黄泉の中に現れる赤い湯
    周辺には乳白色の硫黄泉が点在します。その中で赤湯が異なる表情を見せる理由が気になりました。
目次

赤湯温泉ってどんなところ? | 4コマ漫画で体験してみる

ゆめにゃん

猫は入れないからフィクションにゃ…

赤湯温泉の魅力を詰め込んだ4コマ漫画。山の秘湯、紅白の源泉、峠の味覚、吾妻連峰の絶景を紹介。

赤湯温泉レビューと注目ポイント考察

この記事は、筆者が実際に温泉を訪れた際に感じた「なぜ?」をきっかけに、温泉分析書や公開資料などを調べ、自分なりに考察した内容です。資料から確認できる事実と筆者個人の考察を分けて記載するよう努めていますが、専門家による学術的な見解や結論を示すものではありません。直接的な裏付けを確認できていない仮説や想像については、その旨を明記しています。一人の温泉好きが、分析書や資料を眺めながら考えた「温泉の自由研究」としてお楽しみください。

「赤湯」という名前に惹かれて他の赤湯を調べてみた

好山荘さんに向かう前から気になっていたのが、「赤湯」という名前です。温泉好きなら、まず山形県南陽市の赤湯温泉が頭に浮かぶかもしれません。同じ名前の温泉が福島の山奥にもあると知り、名前の由来には何か共通点があるのかなと興味がわきました。

実際に内湯の扉を開けてみると、湯船は見事な赤茶色。これはもう見たままの命名だろうと、湯に浸かりながら確信に近い予想を立てました。同じ「赤湯」でも、土地ごとに違う物語があるのではないかと想像も膨らみました。

調べてみると、るるぶ&more.の紹介記事には、内湯の「赤湯」が宿名の由来になったとありました。やはり、あの赤茶色のお湯が名前につながっているようです。

では、ほかの赤湯はどうでしょうか。

山形県南陽市の赤湯温泉には、赤湯温泉旅館協同組合が紹介する伝説があります。戦で傷ついた兵士たちが湯に浸かり、傷が癒えた際に流れた血で湯が赤く染まったことが、名前の由来と伝えられているそうです。同じ「赤」でも、こちらは伝説の中の赤でした。

さらに新潟県湯沢町には、苗場山の山中に佇む赤湯温泉山口館があります。新潟県公式観光サイトによれば、林道終点から徒歩約2〜2時間半という山の秘湯。こちらの名前の由来までは確認できませんでした。

所在地「赤湯」の名前にまつわる話
福島県福島市赤茶色の内湯「赤湯」が宿名の由来
山形県南陽市戦で傷ついた兵士たちにまつわる伝説
新潟県湯沢町名前の由来は今回確認できず

名前は同じでも、湯の色から生まれた名前もあれば、伝説から生まれた名前もある。好山荘さんの赤湯は、目の前のお湯の色を素直に表した、なんとも親しみやすい名前に感じられました。

全国の「赤湯」を巡り、それぞれの名前に込められた物語を比べてみるのも面白そうだと思いました。

一軒の宿に紅白二つの源泉、「三番の湯」という名前の謎

好山荘さんで最初に心をつかまれたのは、ひとつの宿で泉質の異なる2本の源泉に入れることでした。そして館内に掲示された温泉分析書を読むと、内湯の源泉名は「赤湯の三番の湯」。三番ということは、一番や二番もあったのか。そんな小さな疑問が頭から離れなくなりました。

湯に浸かりながら、かつてはこの山あいのあちこちで湯が湧き、番号をふって使い分けていたのではないか……と妄想が膨らみました。

調べてみると、日本秘湯を守る会の宿紹介には、内湯は鉄分を含む赤湯、建物から少し歩いた先の露天は硫黄泉の白湯と紹介されています。現地で確認した分析書には、このような数字が記されていました。

項目赤湯(内湯)白湯(露天)
源泉名赤湯の三番の湯赤湯温泉 白湯
泉質単純温泉単純硫黄温泉(硫化水素型)
湧出量毎分70.4L毎分21.6L
湧出形態自然湧出自然湧出

性格の違う2本の源泉が、どちらも自然に湧き出している。数字を見比べるだけでも、なんだか贅沢に感じられました。

気になる「一番」「二番」については残念ながら、調べた範囲ではその手がかりを見つけられませんでした。

紅白の湯をひとつの宿で楽しめるだけでも十分に魅力的ですが、「三番の湯」という名前を知ると、その奥にまだ知らない歴史が隠れているような気がしてきます。

番号の由来が分からないままなのは少し悔しいですが、次に訪れたとき、宿の方へ聞いてみる楽しみがひとつ増えました。

湧出時は無色澄明なのに、湯船はなぜ赤茶色になるのか

入浴前に分析書の「知覚的試験」の欄を読んで、思わず二度見しました。湧出地では「無色澄明、微渋味、微弱硫化水素臭」、試験室でも採水24時間後に「無色澄明」と書かれています。ところが目の前の湯船は、底が見えないほどの赤茶色です。湯面にはうっすらと澱(おり)も浮かんでいました。

湯に浸かりながら、湯に溶けている鉄が空気に触れて酸化し、色が変わっているのだろうと思いました。鉄釘が錆びて赤くなるのと似た理屈です。

日本温泉協会による温泉の色の解説では、鉄を含む温泉は湧出時には無色透明に近く、時間がたつと赤色や赤褐色に変化することがあると紹介されています。好山荘さんの分析書を見直すと、鉄(Ⅱ)イオンが0.8mg/kg、マンガンイオンが0.2mg/kg含まれていました。

つまり、湯に溶けた二価の鉄(Fe²⁺)が酸素と出会い、水に溶けにくい三価の鉄の化合物へと変わることが、あの赤茶色の濁りにつながっているのではないでしょうか。

では、試験室で24時間たっても無色澄明だったのはなぜなのか。採水した容器の中では、浴槽ほど空気に触れなかったのかもしれません。保存条件によっても変化のしかたが違うのではないか、と想像しました。

赤湯の「赤」は、源泉が地上で空気と出会ってから生まれる色。湯口から湯船の奥へと色が深まっていく様子を眺めていると、湯が刻々と変化していく時間そのものを見ているような気分になりました。

「この色で単純温泉!?」泉質名の物差しを確かめてみた

赤湯の分析書で泉質名を見たとき、思わず心の中でツッコミを入れてしまいました。「この色で単純温泉か……」。これだけ濃い色の湯なら、成分もたっぷりで、もっと長い泉質名がつくはずだと思い込んでいたからです。

環境省の「鉱泉分析法指針」を改めて確認すると、ガス性のものを除いた溶存物質が1kgあたり1,000mg以上なら塩類泉に分類されます。また、鉄を冠した泉質名になる基準のひとつは、総鉄イオンが20mg/kg以上であることでした。

赤湯の分析書に記された数値と比べてみました。

項目赤湯の分析値泉質分類の基準
溶存物質(ガス性を除く)853.2mg/kg1,000mg/kg以上で塩類泉
鉄イオン鉄(Ⅱ)イオン0.8mg/kg総鉄イオン20mg/kg以上で鉄を冠する泉質の対象

溶存物質は、塩類泉の基準まであと150mg弱でした。泉質名は、決められた成分の量で線を引く物差しです。色の濃さや見た目の印象は、その物差しの外側にあります。

好山荘さんの公式案内では「鉄分豊富な赤湯」と紹介されています。実際に湯船に浸かってみると、あの赤茶色の湯を前に、鉄の存在を強く意識せずにはいられませんでした。

毎日この湯と向き合ってきた宿の実感と、一定のルールで成分を分類する分析書の数値。どちらも赤湯という湯の大切な一面なのだと思いました。

赤い湯を支える陰の主役は硫酸イオン?組成表から見えた素顔

色の印象から、赤湯の分析書は鉄が主役だろうと思いながら読み進めました。ところが陰イオンの欄で目に飛び込んできたのは、硫酸イオン386.2mg/kg、ミリバル%で90.05%という数字です。陽イオンはカルシウムが44.45%、マグネシウムが23.23%、ナトリウムが19.10%と続いていました。

主なイオンミリバル%
硫酸イオン(陰イオン)90.05%
カルシウムイオン(陽イオン)44.45%
マグネシウムイオン(陽イオン)23.23%
ナトリウムイオン(陽イオン)19.10%

この組成を見て、赤湯の素顔は「カルシウムとマグネシウムの硫酸塩の湯」なのではないかと考えました。環境省の鉱泉分析法指針では、塩類泉の名前に20ミリバル%以上の成分を多い順に並べます。仮に溶存物質が1,000mg/kg以上で、成分の割合が今のままなら「カルシウム・マグネシウム-硫酸塩温泉」となりそうです。

カルシウムと硫酸イオンの組み合わせから、石膏系という言葉も思い浮かびました。石膏は硫酸カルシウムを含む鉱物です。実際に浸かった赤湯には、しっかりとした重厚感もありました。

では、その硫酸イオンはどこから来たのでしょうか。『化学と教育』掲載の「日本の温泉成分の特徴と起源」を読むと、火山ガスや硫化鉄の酸化、硫酸塩鉱物の溶解など、いくつもの経路が紹介されていました。

火山に囲まれた土湯峠なら、火山ガスに由来する硫黄が硫酸イオンになったのかもしれません。あるいは、地中の硫化鉄が酸化して、鉄と硫酸イオンの両方を湯に届けているのかも……と想像が膨らみました。

赤い湯色の裏で、実は硫酸イオンが大きな存在感を放っていた。そう思うと、あの重厚な浴感まで、なんだか違った印象で思い出されました。

赤湯のメタけい酸と遊離炭酸、やわらかな肌ざわりの手がかり

赤湯に肩まで浸かってみて意外だったのは、見た目の濃さに反して肌あたりがやわらかいことでした。重厚感はあるのに、角がない。この不思議な肌ざわりはどこから来るのだろうと気になりました。

分析書のどこかにヒントがあるかもしれないと思い、湯上がりに非解離成分とガス成分の欄を探してみました。気になったのは、二酸化炭素と、肌ざわりとの関係が語られることもあるメタけい酸です。

分析書には、メタけい酸245.2mg/kg、遊離二酸化炭素88.1mg/kg、炭酸水素イオン52.0mg/kgと記されていました。

環境省が公開する温泉の定義によれば、温泉法では、メタけい酸50mg/kg以上、遊離二酸化炭素250mg/kg以上など、定められた条件のいずれかを満たせば「温泉」に該当します。

成分赤湯の分析値温泉法の基準
メタけい酸245.2mg/kg50mg/kg以上
遊離二酸化炭素88.1mg/kg250mg/kg以上
炭酸水素イオン52.0mg/kg単独の基準なし

メタけい酸は基準の約5倍。一方、遊離二酸化炭素は基準に届かない量でした。もっとも、赤湯は源泉温度が25℃以上あるため、温度だけでも温泉法の条件を満たしています。

メタけい酸の多さが、あのなめらかな肌あたりに何か関係しているのかもしれません。炭酸も少量ながら含まれていると知ると、湯口の近くでは何か違いを感じられるのだろうか、と想像が膨らみました。

次に訪れたときは、湯口のそばと湯船の奥で、肌ざわりに違いがあるのかじっくり確かめてみたいと思いました。

分析書上は白湯のほうが鉄が多い?pHがつくる見え方の違い

湯上がりに赤湯と白湯の分析書を並べて読み比べていたとき、思わず声が出そうになりました。鉄の数値が、赤湯より白湯のほうが多くなっていたのです。赤湯の鉄(Ⅱ)イオンが0.8mg/kgなのに対し、白湯は鉄(Ⅱ)イオン1.2mg/kgに鉄(Ⅲ)イオン0.2mg/kgで、合計1.4mg/kg。白い湯のほうが鉄を多く含んでいるという、なんとも意外な結果でした。

項目赤湯(内湯)白湯(露天)
鉄(Ⅱ)イオン0.8mg/kg1.2mg/kg
鉄(Ⅲ)イオン記載値未確認0.2mg/kg
pH6.7(中性)3.9(弱酸性)
湯の見た目赤茶色乳白色

ここで気になったのが、2本の源泉のpHの違いです。日本温泉協会の温泉分析書の解説によれば、赤湯のpH6.7は中性、白湯のpH3.9は弱酸性に分類されます。この差が、鉄の振る舞いを変えているのではないかと思いました。

調べてみると、鉄(Ⅱ)イオンの酸化に関する研究では、酸化の速さがpHに大きく左右され、酸性側では遅く、中性付近から速くなることが報告されていました。

この考え方で2本の源泉を見直すと、なんだか筋が通ります。赤湯では、鉄が空気に触れて変化し、赤茶色の濁りを生み出しているのかもしれません。白湯では、弱酸性という条件によって鉄が溶けた状態で残りやすく、赤い色として現れにくいのではないでしょうか。

さらに、日本温泉協会の温泉の色に関する解説によれば、硫黄泉の白濁には細かな硫黄化合物の粒子が関係するとされています。白湯では、そうした白い濁りも見た目に影響していそうです。

鉄の量だけでは、湯の色は決まらない。鉄がどんな状態で存在し、どのように変化するかによって、見え方も変わってくる。分析書の数字と湯船の景色のギャップは、2本の源泉の個性を教えてくれる、何よりの手がかりでした。

白湯のアンモニウムとアルミニウム、陽イオン欄に見えた火山の気配

白湯の分析書で、陽イオンの欄に並ぶ顔ぶれが気になりました。カルシウムが29.60%でトップなのは想定内でしたが、2番手がアンモニウムイオンの19.84%、3番手がアルミニウムイオンの18.53%。さらに水素イオンも4.86%含まれています。ふだんの分析書ではあまり見かけない並びです。

主な陽イオン含有量ミリバル%
カルシウムイオン(Ca²⁺)12.1mg/kg29.60%
アンモニウムイオン(NH₄⁺)7.3mg/kg19.84%
アルミニウムイオン(Al³⁺)3.4mg/kg18.53%
水素イオン(H⁺)0.1mg/kg4.86%

pH3.9の弱酸性という性格から、火山ガスに由来する酸が地下の岩石に働きかけ、アルミニウムを湯に取り込んでいるのではないかと想像しました。

調べてみると、産総研の「火山ガスと温泉」の解説では、薩摩硫黄島の硫酸酸性泉について、火山ガスと地下水から生じた酸性の流体が、火山岩の成分を溶かし出す仕組みが紹介されています。溶け込んだ成分として、アルミニウムやシリカも挙げられていました。

また、秋田県の玉川温泉を紹介する観光庁の解説資料にも、強酸性の温泉水が鉄やアルミニウムを溶かすと書かれています。白湯はそこまで強い酸性ではありませんが、地下で似たような反応が起きているのだろうかと興味がわきました。

一方、アンモニウムイオンがなぜこれほど多いのかは、調べた範囲では答えにたどり着けませんでした。実は赤湯にも12.7mg/kg含まれており、白湯の7.3mg/kgを上回っています。火山ガスに含まれる窒素成分と関係があるのか、それとも地中の有機物に由来するのか。こちらは、まだ謎のままです。

白湯の陽イオン欄は、火山の気配と小さな謎が同居する、読みごたえのある一角でした。答えが出ないまま残った疑問も、次の湯めぐりで似た組成の湯に出会ったとき、きっと思い出すのだろうと思います。

白湯の「白」はどこから?白色沈殿とチオ硫酸イオンの関係

露天の白湯は、白く濁った湯の中に細かな湯の花が舞い、硫黄の香りが漂う、いかにも山の硫黄泉らしい表情でした。ところが分析書の知覚的試験を読むと、湧出地では「無色澄明」。そのうえで、硫化水素臭、ガスの発泡、そして白色沈殿物ありと記録されています。透明なのに白い沈殿がある、というところに興味を持ちました。

赤湯と同じように、白湯の白も湧出後の変化によって生まれるのではないかと予想しました。湯に溶けた硫化水素が酸化され、細かな硫黄の粒子になって濁りをつくっているのではないか、という見立てです。

調べてみると、日本温泉協会の温泉の色に関する解説では、硫黄泉の白濁は、硫化水素が酸化する過程で生じた細かな硫黄化合物の粒子が、湯の中を浮遊することで起こると紹介されていました。

白湯の分析書を見直すと、次の成分が目に留まりました。

項目白湯の分析値
遊離硫化水素9.6mg/kg
チオ硫酸イオン0.4mg/kg
硫黄泉の基準総硫黄2mg/kg以上

環境省の鉱泉分析法指針では、硫化水素やチオ硫酸イオンなどに対応する総硫黄が2mg/kg以上で、硫黄泉に分類されます。白湯は遊離硫化水素だけでも、その基準を大きく上回る量です。

さらに、地熱地帯の硫黄成分に関する研究では、チオ硫酸イオンが硫化水素の酸化過程で生じる中間的な成分として紹介されています。白湯にも、硫黄成分が変化していく手がかりが含まれているのかもしれません。

湧出時には透明でも、すでに白い沈殿があり、湯船では乳白色に濁っている。赤湯の赤と同じく、白湯の白にも湯が変化していく物語がある。そう思うと、性格の違う2本の源泉が、ますます兄弟のように見えてきました。

源泉62℃の白湯から入り、赤湯で締めた入浴順の妙

今回は日帰りで、露天の白湯から入り、そのあと内湯の赤湯に入りました。白湯はぬる過ぎず熱過ぎず、のんびり浸かっていられる湯加減。ところが後で分析書を読んで驚きました。白湯の源泉温度は62.0℃で、赤湯の52.8℃より9.2℃も高くなっていました。

源泉はこれほど熱いのに、湯船ではなぜ穏やかに感じたのでしょうか。湯量が少なめで、屋外の湯船に注がれるうちに程よく冷めているのかなと思いました。

分析書の数値を比べてみました。

項目白湯(露天)赤湯(内湯)
源泉温度62.0℃52.8℃
湧出量毎分21.6L毎分70.4L
成分総計314.1mg/kg941.3mg/kg

白湯の湧出量は、赤湯の3分の1以下。日本秘湯を守る会の宿紹介では、白湯を48℃の硫黄泉と案内し、温泉情報には加水・加温ありと記されていました。外気による冷却に加えて、宿の方が湯加減を調整してくださっているのかもしれません。

成分総計で比べると、白湯は314.1mg/kg、赤湯は941.3mg/kg。数字の上では赤湯が約3倍です。穏やかな湯加減の白湯で硫黄の香りと乳白色の湯を楽しみ、最後に赤茶色の赤湯へ。意図したわけではありませんが、結果的に「控えめから、しっかりへ」という流れになっていました。

外の空気を感じながら白湯に浸かり、建物に戻って赤湯でじっくり温まる。入る順番ひとつで、2本の源泉の個性がより鮮明に感じられた気がします。次は逆の順番でも入り比べて、印象の違いを確かめてみたくなりました。

自炊棟が残る湯治宿、震災を越えて続く好山荘さんの歩み

館内を歩いていて気になったのが、昔ながらの湯治場の雰囲気でした。調べてみると、好山荘さんには今も自炊で泊まれる仕組みがあるようです。食事つきの旅館が当たり前になった今、自炊の湯治文化がどんな形で受け継がれているのか興味がわきました。

山の一軒宿で自炊ができるということは、食材を持ち込み、何日も湯に通う湯治客を長く迎えてきた歴史があるのだろうと想像しました。

日本秘湯を守る会の宿紹介には、湯治に対応し、自炊棟には調理に必要なものが用意されていると記されています。宿の歴史について調べると、1947年ごろに開業したと紹介されていました。

そして、さらに心を引かれたのが震災からの再建です。好山荘さんのクラウドファンディングには、2021年2月13日の福島県沖地震で建物が被害を受け、修繕中の2022年3月16日にも大きな地震に見舞われたことが記されています。国の補助制度や多くの方々の支援を受け、2022年7月に営業を再開したそうです。

70年以上前から続く山の宿が、幾度もの災害を越えて今も湯治の文化を受け継いでいる。自分で食事を整えながら湯と向き合う自炊湯治は、温泉を「食べて、浸かって、暮らす」場所として味わう、いちばん贅沢な楽しみ方なのかもしれません。

手作りの露天風呂に浸かりながら、この湯を守り続けてきた人たちの手のぬくもりを感じた気がしました。

硫黄泉が並ぶ土湯峠で、なぜ好山荘さんだけ赤い湯なのか

土湯峠には、白く濁った硫黄泉の宿がいくつもあります。その中で、好山荘さんの内湯は赤茶色の湯をたたえている。湯めぐりの地図を眺めながら、この「赤」はどうやって生まれたのだろうと、最後まで気になっていました。

まず周辺の宿を調べてみると、野地温泉ホテルの公式サイトでは乳白色の硫黄泉が紹介され、新野地温泉の紹介にも白濁した単純硫黄泉の野天風呂が登場します。一方、まっぷるの土湯峠温泉郷の記事では、鷲倉温泉には硫黄泉と酸性緑ばん泉という2種類の源泉があると紹介されていました。

緑ばんとは、硫酸鉄を指す古い呼び名です。ただし、鷲倉温泉の酸性緑ばん泉と好山荘さんの赤湯が、同じ成り立ちというわけではありません。それでも、同じ峠の周辺に硫黄や鉄、硫酸塩などに特徴のある温泉が集まっていることに興味をひかれました。

この湯を生み出す大地について調べると、気象庁の吾妻山の解説には、一切経山付近に新しい火口が分布し、大穴火口周辺では噴気活動が見られると記されています。また、福島地方気象台の資料によると、福島県には吾妻山や安達太良山を含む5つの活火山があります。

火山ガスがもたらす硫黄成分、地下の岩石から溶け出すさまざまな成分、そして地表へ湧き出すまでの道のり。そうした条件の違いが、同じ峠に白い湯と赤い湯を並べているのかもしれないと想像しました。

好山荘さんの赤湯と白湯も、硫酸イオンが目立つという共通点を持ちながら、まったく違う表情を見せています。土湯峠全体が、火山の大地が生み出す温泉のバリエーションを見比べられる、大きな博物館のように思えてきました。

ゆめにゃん

赤い湯に大地を想い、白い湯に風を感じ、ブナの森に時を忘れる。
次の休みは、赤湯温泉で「紅白の湯が紡ぐ物語」に耳を澄ませてみませんか?

赤湯温泉の紅白二つの源泉

福島県の土湯峠に佇む好山荘では、赤茶色の内湯と乳白色の露天風呂を楽しめます。赤湯は単純温泉、白湯は単純硫黄温泉(硫化水素型)。同じ宿に湧きながら、色も香りも異なる二つの自家源泉が最大の魅力です。

赤褐色に染まる不思議な内湯

赤湯の源泉は湧出時には無色澄明。それが空気に触れることで赤茶色へと変化します。源泉温度52.8℃、pH6.7の単純温泉でありながら、浴槽には印象的な赤褐色が広がり、温泉の色と泉質名の奥深さを感じさせます。

乳白色の硫黄泉と森の露天

ブナの森に囲まれた露天風呂では、乳白色のにごり湯と硫黄の香りが楽しめます。白湯はpH3.9の弱酸性で、源泉温度は62.0℃。細かな湯の花が舞う湯船と、木々に包まれた静かな環境が、山奥の秘湯らしい風情をつくっています。

温泉分析書に隠れた湯の個性

赤湯は硫酸イオンやメタけい酸、白湯は硫化水素やアンモニウムイオンなど、分析書にも興味深い数値が並びます。赤と白という見た目の違いだけでなく、成分やpH、湧出量を比べることで、二つの源泉が持つ個性をさらに深く楽しめます。

自炊湯治の文化を守る一軒宿

標高約1,200mの山あいに佇む好山荘には、自炊設備を備えた湯治の宿泊スタイルが受け継がれています。地震による被害を乗り越え、営業を再開した歴史も印象的。温泉そのものの魅力に加え、長年にわたり湯を守り続けてきた人々の歩みも、この宿の大切な魅力です。

温泉マニアあるある! – 赤湯温泉考察編

ゆめにゃん

マニアの人はこうなっちゃう…かも!?

「三番の湯」の一番と二番が気になって仕方ない

赤湯の源泉名が「赤湯の三番の湯」だと知ったマニア。「三番ってことは、一番と二番もあるのか!?」と、さっそく謎解きを始めます。友達が「今のお湯が気持ちよければいいじゃん」と笑っても、「いや、三番があるなら一番を探したくなるでしょ」と譲りません。ついには存在するかも分からない源泉の相関図を描き始め、温泉旅行がいつの間にか探偵ごっこになっています。

853.2mg/kgに妙な惜しさを感じる

赤湯の溶存物質量853.2mg/kgを見て、「おお、1,000mg/kgまであと146.8mgか……」と計算を始めるマニア。友達が「それがどうしたの?」と聞くと、「泉質名の分類に関係する数字なんだよ」と熱弁。もちろん単純温泉には単純温泉の魅力があるのに、なぜか惜しそうな表情。温泉分析書を見ながら、勝手に数字の接戦を楽しんでいます。

硫酸イオン90%で突然テンションが上がる

赤湯の分析書に硫酸イオン386.2mg/kg、陰イオンの当量比90.05%という数字を見つけたマニア。「ほぼ硫酸イオンの独壇場じゃないか」と大興奮。友達が「でも単純温泉なんでしょ?」と尋ねると、「そこがまた面白いところでね」と説明を始めます。いつしか成分表をスポーツの試合結果のように読み上げ、友達から「実況中継はもういいよ」と止められる始末。

メタケイ酸245.2mg/kgで計算機を取り出す

赤湯のメタケイ酸245.2mg/kgという数字を見て、「おお、これはなかなか!」と喜ぶマニア。友達が「メタケイ酸って何?」と尋ねると、「温泉分析書でよく見かける成分なんだけどさ……」と嬉々として説明開始。さらに白湯の分析書まで広げて比較を始め、「もう温泉に入らないの?」と催促されます。数字を眺める時間まで、立派な湯めぐりになっているようです。

アンモニウムイオンで意外な逆転劇を発見する

白湯のアンモニウムイオン7.3mg/kgを見て、「おっ、こんな成分もあるのか!」と興味津々のマニア。ところが赤湯の分析書を開くと、なんと12.7mg/kg。「えっ、赤湯のほうが多いの!?」と、突然始まる逆転劇に大興奮。友達が「温泉の成分でそんなに盛り上がれるんだ……」と感心している横で、本人はすでに次の比較項目を探しています。

源泉温度と湯船の印象が一致せず悩む

白湯の源泉温度62℃、赤湯は52.8℃。数字を確認したマニアは、「白湯のほうが約9℃も高いのか……」と驚きます。ところが白湯の露天風呂では、ゆったりと湯を楽しめることに再び感動。「源泉温度と浴槽の温度は別物なんだよなぁ」としみじみ語ると、友達から「分かったから早く入ろうよ」と催促されます。頭の中では、すでに温度比較表が完成しているようです。

湧出量を合計して勝手に感動する

赤湯70.4L/分、白湯21.6L/分。二つの源泉の湧出量を見比べたマニアは、「合わせて92L/分か」と、頼まれてもいないのに計算を始めます。友達が「それってすごいの?」と尋ねると、「数字だけで決められないけど、二つの源泉が別々に湧いているってロマンがあるでしょ」と熱弁。気づけば、頭の中で一分間に湧くお湯の量を想像しながら、ひとり満足そうにうなずいています。

白湯のチオ硫酸イオンに食いつく

白湯の分析書に「チオ硫酸イオン0.4mg/kg」という文字を見つけたマニア。「おお、こんなところにも硫黄に関係する成分が!」と目を輝かせます。友達が「0.4って、そんなに大きな数字じゃないよね?」と聞くと、「量だけじゃないんだよ、何が載っているかも面白いんだよね」と力説。ついには成分名を何度も読み返し、友達から「その名前、もう三回聞いたよ」と笑われてしまいます。

震災からの復活を知って急に静かになる

赤湯温泉・好山荘が地震による被害を乗り越え、営業を再開した歩みを知ったマニア。いつもなら成分表を片手に騒いでいるのに、このときばかりは「この湯を守ってくれたんだなぁ……」としみじみ。友達が「今日は静かだね」と声をかけると、「いや、こうして入れること自体がありがたいなと思ってさ」とぽつり。帰り際には、また訪れる理由が一つ増えたようです。

レドックスフロントを語り、鉄人となる

赤茶色の湯を前に、「これはレドックスフロント……なのか?」と、最近覚えた専門用語をつぶやくマニア。友達が聞き取れずキョトンとしてると、「まぁ簡単にいえば、鉄の酸化還元境界かもね、ってこと」と、ちっとも簡単ではない説明で追撃。まわりからは“鉄人”とあだ名されてしまうのです。

管理人

管理人いじりですね…
そう呼ばれるのも悪くない!

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この記事を書いた人

温泉巡り歴15年。
トロトロのお湯と硫黄の香りが大好物。
なのに他の泉質にもすぐハマってしまう。
休日は山奥の秘湯へ直行。
そして、猫が好き。

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