明治の面影を残す共同浴場を中心に、円状の街並みが広がる山代温泉。
無色透明でさらりとした湯を浴槽に満たし、伝統工芸や加賀の食文化が日常に溶け込んでいます。
歴史ある温泉街の風情と湯巡りを手軽に味わえるのが、この土地ならではの趣です。
- 泉質と入浴体験の魅力
山代温泉の泉質や肌ざわりの特徴を説明します。 - 共同浴場を中心に円状に並ぶ湯の曲輪
江戸時代から続く温泉街の構成と、総湯・古総湯の二つの浴場を巡りながら感じる時代の重なりを紹介。 - 源泉卵と温玉ソフト:山代ならではの食体験
温泉街で食べ歩きできるグルメと、地元食材を活かした料理や器の組み合わせ方を知ることができます。 - 九谷焼と魯山人の足跡
九谷焼の体験ワークショップ、古総湯の意匠、魯山人が滞在した場所など、文化を体験できるスポットが充実。 - アクセスと基本情報
山代温泉へのアクセス、営業時間の確認方法、季節の特徴など、訪問前に知っておきたい情報をまとめました。
山代温泉ってどんなところ? | 4コマ漫画で体験してみる
ゆめにゃん猫は入れないからフィクションにゃ…


山代温泉 体験記
初秋の気配が漂い始める9月上旬、愛車を走らせて北陸の名湯・山代温泉へ向かいました。
普段はぬるぬるとした湯ざわりや、硫黄のはっきりした香りに惹かれがちです。
しかし今回は、無色透明のさらりとした温泉と、「湯の曲輪」と呼ばれる街並みを歩いてみたくなり、この地を訪れました。
共同浴場を中心に旅館や商店が輪を描くように並び、昔ながらの温泉街の面影を今に伝えています。
- 中央に佇む古総湯
車を停めて温泉街の中心へ向かうと、明治期の共同浴場を再現した古総湯が現れました。周囲には宿や商店が連なり、建物を中心に街が広がっている様子が分かります。紅殻格子や木造建築を眺めながら歩くと、一般的な温泉街とは少し異なる、山代温泉独特の景観が見えてきました。 - 二つの共同浴場を巡る時間
温泉街には、現在の共同浴場である総湯と、昔の姿を再現した古総湯があります。日常の入浴施設として利用される総湯と、歴史や文化を体験する古総湯。それぞれ異なる役割を持つ二つの浴場を巡ると、山代温泉に流れる新旧の時間を感じられました。 - 風情ある路地の散策
湯上がりには、木造建築が並ぶ周辺の路地を歩きました。昔ながらの商店に交じって、カフェや新しい店も見かけます。格子戸や看板を眺めながらゆっくり歩くだけでも、共同浴場を中心に育った街の雰囲気が伝わってきました。 - 加賀観光の拠点になる立地
山代温泉からは、山中温泉の鶴仙渓や那谷寺などにも車で足を延ばせます。今回は周辺にも立ち寄り、川沿いの景色や緑豊かな境内を歩きました。温泉街の散策と加賀の自然や文化を一つの旅程に組み込みやすいことも、山代温泉の魅力です。
個性の強い香りや濁りを前面に出す湯とは異なり、無色透明でさらりとした湯ざわりを楽しめました。
- 脱衣所で目にする温泉分析書
脱衣所では、掲示された温泉分析書に目を通しました。山代温泉には複数の源泉があり、ナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物泉やアルカリ性単純温泉などが利用されています。泉質名や源泉温度、pH値を眺めながら、これから入るお湯の個性を想像しました。 - さらりと触れる湯ざわり
手桶で湯をすくって身体にかけると、無色透明の湯がさらりと流れていきました。普段好んで入る硫黄の香りが強い湯や、とろみを感じる湯とは方向性が異なります。クセの少ない軽やかな湯ざわりで、温泉そのものの素直な印象を楽しめました。 - 湯面に広がる波紋
湯船にゆっくり身体を沈めると、動きに合わせて湯面に小さな波紋が広がります。香りは強く主張するタイプではなく、湯けむりの漂う浴室で静かにお湯と向き合えました。派手な個性よりも、共同浴場の空間や温泉文化まで含めて味わう湯だと感じます。 - 熱めに感じた古総湯
古総湯の浴槽は、私にはやや熱めに感じられました。足先から慎重に入り、掛け湯を重ねてから身体を沈めます。短めに浸かって浴槽の外で休み、再び湯へ。湯上がりに外へ出ると、9月の風がさらりと肌を通り抜けました。
山代温泉では、源泉を利用して作られる温泉たまごをはじめ、街歩きと一緒に楽しめる味があります。
- とろりとした温泉たまご
温泉街で、源泉にじっくり浸けて作られた温泉たまごを購入しました。殻を割ると、やわらかな白身と黄身が現れます。スプーンですくって口へ運ぶと、とろりとした食感と卵のまろやかな味わいが広がりました。 - 意外な組み合わせの温玉ソフト
総湯の売店では、ソフトクリームに温泉たまごをのせた温玉ソフトが名物として販売されています。冷たいソフトクリームと卵を混ぜて味わう、山代温泉らしい個性的な一品です。 - 日本海に近い加賀の海の幸
夕食では、刺身を中心とした海の幸を味わいました。身を噛むと魚の甘みが広がり、海に近い加賀へ来たことを実感します。 - 九谷焼の器と食の風景
温泉街では、九谷焼の器を目にする機会もあります。色鮮やかな絵柄は、料理やお茶の時間を華やかに見せてくれました。工芸品が展示物としてだけでなく、旅館や店の日常に取り入れられていることも印象に残ります。
九谷焼や北大路魯山人ゆかりの場所を巡ることで、温泉だけではない山代の文化に触れられます。
- 古総湯を彩る美しい意匠
古総湯の浴室に入ると、九谷焼のタイルやステンドグラスが目に入りました。浴室には洗い場やシャワーがなく、明治期の入浴方法を再現した空間で、湯と建築の意匠を味わいます。温泉に入ること自体が、山代の歴史を体験する時間になりました。 - 魯山人寓居跡の静けさ
北大路魯山人が若い頃に滞在した、いろは草庵にも立ち寄りました。木造の部屋や庭を眺めていると、温泉街の旦那衆や陶芸家との交流を通じて、魯山人が感性を育てた時代が浮かんできます。書斎や仕事場を見学しながら、山代温泉が文化人を育んだ土地であることを知りました。
山代温泉の歴史や交通、共同浴場の特徴を知っておくと、現地で目にする風景をより深く楽しめます。
- ヤタガラスの開湯伝説
山代温泉には、約1300年前に高僧・行基が、傷ついた羽を泉に浸していた烏を見つけたという開湯伝説があります。その物語にちなんで、三本足のヤタガラスが温泉地の象徴として親しまれています。 - 九谷焼再興の地
山代温泉は九谷焼の発祥地ではなく、途絶えていた九谷焼が再興された土地として知られています。古九谷から受け継がれた色彩や技法が、工房や器、古総湯のタイルなどを通して今も街に息づいています。 - 加賀温泉駅からのアクセス
山代温泉は北陸自動車道の加賀ICから車で約15分、北陸新幹線の加賀温泉駅からはタクシーで約10分、路線バスで約15分が目安です。公共交通でも訪れやすく、加賀温泉郷を巡る拠点にできます。 - 季節と営業情報の確認
9月上旬はまだ暑さが残る時期でしたが、歩いていると時折やわらかな風を感じました。秋の紅葉や冬の海の幸など、季節を変えて訪れる楽しみもあります。共同浴場の営業時間、休業日、料金、入浴方法は変更される場合があるため、訪問前に公式情報を確認しておくと安心です。



古総湯の湯に身を沈め、九谷焼の彩りに目を奪われ、源泉たまごを頬張る。
次の休みは、山代温泉で「加賀の歴史と湯の文化」を巡る旅に出かけませんか?
山代温泉 – アクセスと基本情報
| 温泉地名 | 山代温泉 |
|---|---|
| 所在地 | 石川県加賀市 |
| 入浴施設 | 複数あり |
| 主な泉質 | ナトリウム・カルシウムー硫酸塩・塩化物温泉(低張性・弱アルカリ性・高温泉) カルシウム・ナトリウム-硫酸塩泉 pH:7.8~8.8前後 |
| お湯の特徴 | 山代温泉のお湯は、無色透明でさらりとした肌ざわりが印象的です。 硫黄泉や強アルカリ泉のような個性的な湯とは異なり、クセが少なく穏やかな浴感を楽しめました。 浴場ごとに源泉や湯づかいが異なるため、入り比べながら違いを感じるのも魅力です。 |
| 香り | 香りは全体的に穏やかで、強い硫黄臭や金気臭などは感じませんでした。 湯けむりの中に、ごくわずかに温泉らしい鉱物感を思わせる印象を受けることもありますが、主張は控えめです。 香りよりも、街並みや湯の雰囲気をゆっくり味わえる温泉だと感じました。 |
| 雰囲気 | 共同浴場を中心に旅館や商店が並ぶ「湯の曲輪」の街並みが残り、散策するだけでも歴史ある温泉地らしい風情を感じられます。 古総湯や九谷焼、魯山人ゆかりの文化にも触れられ、温泉だけでなく街全体を歩いて楽しみたくなる落ち着いた雰囲気が魅力です。 |
| 楽しみ方 | まずは総湯や古総湯でそれぞれのお湯を楽しみ、湯上がりは温泉たまごや温玉ソフトを味わいながら温泉街を散策するのがおすすめです。 九谷焼の器や工芸に触れたり、山中温泉や那谷寺まで足を延ばしたりすると、加賀の魅力をより満喫できます。 |
| ※源泉や施設によって記載と異なる場合があります。コンディションによって印象は変わる場合があります。 ※掲載している情報は訪問時のものです。最新の情報は公式サイト等で確認をお願いいたします。 | |
- 湯の曲輪が造る伝統の街並み
-
浴場を中心として円状に旅館や商店が並ぶ、全国的にも珍しい伝統的な街の構造です。江戸時代の湯治場文化を象徴する配置であり、かつての情緒を残した景観は散策の拠点として高い知名度を誇ります。
あわせて読みたい
瀬波温泉レビュー|沈む夕日と高温泉を堪能し、村上グルメの深みに浸る旅(新潟県村上市) 瀬波温泉は、日本海を背景に130年近く湯を湧かせ続ける新潟の温泉地。ナトリウム塩化物泉という海辺ならではの泉質を引っさげ、95℃の源泉が毎分1800リットル湧き出す。… - 古総湯で味わう明治の温泉文化
-
明治時代の総湯を忠実に復元した木造の共同浴場です。ステンドグラスや九谷焼のタイルで彩られた意匠が美しく、体を洗うシャワー等が設けられていないため昔ながらの湯に浸かる文化を現代に伝えています。
あわせて読みたい
草津温泉レビュー|強酸性の名湯と「ちょいな三湯めぐり」体験記(群馬県草津町) 毎分3万リットルを超える日本一の湧出量を誇り、強酸性の強力な殺菌力を持つ源泉が万病を癒やす「天下の名湯」です。街のシンボル・湯畑を中心に、伝統の「湯もみ」や活… - 九谷焼再興の歴史を伝える拠点
-
一度途絶えた九谷焼の窯が江戸後期に再興された縁の土地です。街内には窯跡やゆかりの展示施設が点在しており、鮮やかな絵付けが施された伝統工芸の美を日常の器や鑑賞を通して身近に感じられます
あわせて読みたい
秋保温泉レビュー|日本三御湯の品格と現代の癒やし。温泉・グルメ・自然を欲張りに楽しむ(宮城県仙台市) 仙台の市街地から車を走らせること約30分。名取川のせせらぎが聞こえ始めると、そこには1500年の時を紡ぐ「仙台の奥座敷」が広がります。古くは皇室や伊達政宗公に愛さ… - 山代温泉名物の温泉たまご
-
豊かな源泉の熱を利用して作られる、温泉街を代表する銘菓・名物グルメです。トロッとした食感が人気を集めており、そのまま味わうだけでなくソフトクリーム等のスイーツと組み合わせたメニューも注目されています。
あわせて読みたい
和倉温泉レビュー|七尾湾の潮風と濃厚な塩の湯を巡る旅(石川県七尾市) 夏の強い日差しの中、七尾湾の青い海を横目に、石川県の和倉温泉へ車を走らせました。日頃はぬるりとしたアルカリ泉や硫黄の香りを追いかけていますが、海から湧いたと… - 加賀温泉郷の中核を担う名湯
-
山中・片山津・粟津と並び、石川県を代表する温泉地群の一つとして知られます。新幹線停車駅からのアクセスも良好で、歴史ある湯の街めぐりや北陸観光の拠点として幅広い層から親しまれています。
あわせて読みたい
氷見温泉郷レビュー|海越しにそびえる立山連峰と化石海水、富山湾の海の幸を味わう旅(富山県氷見市) 少し冷たい春風が残る3月中旬、能登半島の付け根に位置する氷見温泉郷を訪れました。湯船からは富山湾越しに立山連峰を望み、湯口からは化石海水を源とする塩化物泉が静…
温泉マニアあるある! – 山代温泉編



マニアの人はこうなっちゃう…かも!?
- 共同浴場を必ずハシゴする
-
山代温泉へ着くと、まず向かうのは旅館ではありません。総湯と古総湯、どちらから入るべきか真剣に悩み始めます。「今日は現代から歴史へ行くか、それとも明治気分から始めるか…」とルートを考える時間まで楽しそう。同行者が「どっちでも同じじゃない?」と笑うと、「違う違う、流れが大事なんだよ」と即座に反論。共同浴場を巡ることも、山代温泉ならではの醍醐味なのです。
- 湯の曲輪を何周も歩く
-
普通の観光客は古総湯を見学すると次の目的地へ向かいます。しかしマニアは共同浴場を中心に広がる街並みを、何度もぐるぐる歩きます。「この配置が本当に美しいんだよ」と言いながら同じ道を何周も散策。友人から「さっきもここ通ったよね?」と言われても、「いや、湯の曲輪は歩くたびに景色が変わるんだ」と満面の笑み。街全体を一つの温泉施設として楽しんでいます。
- 温泉分析書を見て「今日はどの源泉かな」と考える
-
脱衣所へ入ると、浴槽より先に温泉分析書へ一直線。「今日はナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物温泉か」「pHはこのくらいか」と確認してから入浴します。同行者が「そんなに違うの?」と聞くと、「数字を見るとお湯がもっと面白くなるんだよ」と嬉しそう。分析書も立派な旅の見どころです。
- さらりとした湯ざわりを全力で語る
-
硫黄泉や強アルカリ泉のような個性が強い湯ではありません。それでもマニアは、「このさらり感がいいんだよ」「クセがないから街歩きまで含めて楽しめる」と熱弁します。友人が「普通のお湯みたい」と言っても、「派手じゃないからこそ飽きないんだ」と力説。個性を”控えめ”ではなく”上品”と表現し始めます。
- 古総湯では建物ばかり見てしまう
-
浴槽へ入ったはずなのに、気になるのは九谷焼のタイルやステンドグラス。「この光の入り方いいなぁ」「明治の共同浴場ってこんな雰囲気だったのかな」と、湯より建築を眺める時間が長くなることもあります。同行者に「ちゃんと温まってる?」と聞かれると、「もちろん。でも建物もごちそうだから」と満足そう。入浴と文化財鑑賞を同時に楽しんでいます。
- オーバーフローより湯面の波紋を眺める
-
豪快にあふれる温泉も大好きですが、山代温泉では静かな湯面にも目が向きます。身体を沈めたときに広がる波紋や、ゆっくり揺れる湯けむりを眺めながら、「落ち着くなぁ」としみじみ。友人から「何見てるの?」と聞かれても、「この波紋がいいんだよ」と即答します。派手さだけが温泉の魅力ではないことを教えてくれる時間です。
- 九谷焼を見ると湯より器が気になる
-
喫茶店でも旅館でも、料理より先に器を持ち上げて眺め始めます。「この色合い、九谷焼かな?」と底の印を確認し、料理はそのあと。友人に「早く食べなよ」と急かされても、「器まで含めて山代温泉なんだよ」と笑顔です。温泉街を歩くうちに、いつの間にか器にも詳しくなっていきます。
- 「発祥じゃなくて再興ね」とつい訂正する
-
観光案内で九谷焼の話題になると、「山代は発祥じゃなくて再興の地なんだよ」と、つい補足したくなります。誰も間違えていなくても、「ここ大事だから」と優しく説明を始める姿は、まるで観光ボランティア。温泉だけでなく、その土地の歴史まで好きになっている証拠です。
- 温泉たまごの仕上がりを真剣に観察する
-
温泉たまごを手にすると、まず確認するのは黄身と白身のとろみ具合。「今日は絶妙だね」「源泉の力を感じるなぁ」と、まるで料理評論家のように語り始めます。友人が「普通においしいね」と言うと、「その”普通”が難しいんだよ」と嬉しそう。湯口だけでなく、源泉が生み出す食文化にもロマンを感じています。
- 曲輪ランナーと呼ばれます
-
山代温泉へ行くたびに、総湯へ行き、古総湯へ入り、温泉分析書を見て、湯の曲輪を歩き、九谷焼を眺め、また総湯の前へ戻ってきます。気づけば温泉街を誰よりも歩き回り、地元の人から「あの人、また湯の曲輪を巡ってるね」と微笑まれ、”曲輪ランナー”とあだ名されてしまうのです。



管理人いじりですね…
そう呼ばれるのも悪くない!






